第2話 ブラウザがインターフェイスでなくてもいい | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第2話 ブラウザがインターフェイスでなくてもいい

2024.4.25 THU

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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

数々のインタラクティブアワードを受賞し、インタラクティブな領域のみならず様々なプロジェクトでその方法論を提示するクリエイティブユニットprojector。その(株)projectorの代表である田中耕一郎氏に話を伺った。

第2話 ブラウザがインターフェイスでなくてもいい


——BLUE DRAGONのプロモーションもそういう志向に近いですね。

田中●BLUE DRAGONに関しては、僕ではなくprojectorにはもう一人河村大馬というディレクターがいるのですが、彼が手掛けた仕事です。二人とも基本的には同じで、インタラクティブにコミュニケーションするための根本的なやり口をどこかで志向している。それは『ブラウザーがインターフェイスでなくてもいい』と根本的に思っているところで、むしろ外側に出たいと思っているんですね。例えばデジタルなツールを使わなくても、インタラクションって発生するかもしれない。そういうところも含めて何かをやりたいということはあります。

だから、二人で興味をもってリサーチしているものも、Webサイトというよりはメディアアートだったり、映像表現だったりします。映像表現の場合には映像の原理が新しいようなものだったり、メディアアートだったら根本的なやり口がどれだけ鮮やかか、そこがオリジナリティを左右するところだと思うんです。そういうものに目を向けていて、それを広告の中にどう組み込めるかを考えている感じです。

——商品企画もそういった流れでやられているんですか?

田中●商品企画については、今ユニクロのTシャツの企画をやっていますが、Tシャツというメデイアを使って世界のクリエイターをネットワークしていく仕組みを作りたいと思いました。そこで、「inspired:テーマ」という切り口を設定したんです。インターネットがこれだけ普及していくなかで、各地域にコミュニティがあって、その中で磁場を持っているような人やメディアがいる。その方たちに、例えば「FOOTBALL」等のテーマを投げかけて、そのテーマに一番適したアーティストを選んでもらうという形で、毎回アーティストではなくてキュレーターを僕らが選んで、キュレーターがアーティストを選んでいくという形でやっていくシリーズを企画しています。

Tシャツは8月中旬から発売する予定です。一回目はバルセロナのデザインスタジオのVASAVAで、彼らが選んだ16組のアーティストが「FOOTBALL」というテーマで発表します。二回目はシアトルのアートホテルのACE HOTLEが、「TRAVEL」というテーマでやります。三回目は香港のIDNに「GAME」というテーマでアジアの領域で適したアーティストを選んでもらって発表します。

毎回、月間でテーマとキュレーターを変えていく形で発表していきます。毎月1キュレーターで10組以上のアーティストが参加する形です。半年以上展開される予定なので、50枚以上のTシャツが出来ていくことになります。そのプロジェクトと連動したWebサイトも立ち上げて、そのアーティストのインタビューや作品のコンセプトも見られるようにしていきます。プロダクトだけでなく、プロダクトとコミュニケーションが隣合わせになっている。そういう考え方を提案してやっています。

——その方法論は仕事をして行く中で見つけた方法論ですか?

田中●そうですね。出会いが良かったと思うのですが、僕はWebを軸にやっていますが、おつきあいしているクリエイターの方々は様々なジャンルの方です。「MIND THE BANNER」の時の話をすれば、ミーカンパニー、ザ・デザイナーズ・リパブリックといったジャンル横断型のクリエイター、映像作家のカイル・クーパー、メディアアーティストのエキソニモといったクリエイターに同じテーマを投げかけたら、まったく違った切り口の作品が返ってきたんですね。

彼らのようなクリエイターと仕事をしていくなかで「方法論は無限にある」「根本的なやり口から考えていい」ということをなんとなく実感するようになりました。それはWebの持っている個性というか、Webの持ってる可能性だと思う。そこを使わない手はないと思いはじめたところがありました。

それから中村勇吾さんとお仕事させていただいたりとか、TRUNKというインタラクティブムービーを作った時には映画監督の青山真治さんに作っていただいたりとか。ジャンルは違うけど、それぞれのメディアでエッジな仕事をしている方々というのは、メディアのテクスチャーというか「なんでそのメディアなのか?」ということがわかって、よく掴んで表現している。そういうものに凄く影響を受けました。

だから、Webというより、コミューケーションとしてのメディアに興味があります。メッセージの発信者であるクライアントと、受信者であるユーザー、それから制作者の想いをつなぐために一番ハマる仕組みや方法論を発見したいと思っています。それは映像という方法論でもいいし、インタラクティブな方法論でもいいし、グラフィカルな方法論でもいいし、やり口はいろいろある。

——インタラクティブということもやり口の中の一つということなんですね。

田中●そうですね。ただ、そのような志向はしているのですが、一方で得意不得意というのがあって、経験値も含めてインタラクティブな切り口というのは得意なんですね。同じくらい強いアイデアを、映像という切り口とインタラクティブな切り口の両方で思いついた時に、どちらを選択するかというと、やはりインタラクティブな切り口を選択することが多い。その方が定着しやすいし、よりいいものが作れる確率が高いと思う。でも、映像的な方法論が効くと確信できる時は、映像を使いましょうと提案していますね。

——インタラクティブに対する思い入れとかがあるのでしょうか?

田中●あまりないですね。

——フラットに考えた時に、単純に特性がおもしろいということなのでしょうか?

田中●普段いろいろなメディアに接している中で、自分がユーザーとして接した時にハッと新鮮に思うことがあるのですが、それを僕は作りたいんですね。自分がハッとするというのは、作り手側から見てもインタラクティブの領域にまだまだ回路が開いていないところが多いと思う。開いてないから、開くと自分が体験する時にもハッとするし。多分、他の人もハッとしてくれるのでないかな思っています。


次回に続く

(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)


[プロフィール]
たなか・こういちろう●(株)projector代表/クリエイティブディレクター

projectorは、田中耕一郎、河村大馬によるクリエイティブユニット。
広告、Web 、映像、インスタレーション、プロダクト、イベント、事業など様々なプロジェクトを手掛けている。
カンヌ金、ONESHOW金/銀/メリット/ファイナリスト、TIAAグランプリ/金4など受賞多数。
www.projector.jp

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