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スポットインタビュー End to Endのユーザーエクスペリエンス実現を目指して Microsoft ダグラス・K・オルソン

5月後半、米Microsoft社のプロダクトユニットジェネラルマネージャであるダグラス・K・オルソン(Douglas K. Olson)氏が来日した。氏が開発を担当するプロダクトは、ExpressionシリーズやWPF、Silverlightといった、同社が最近マーケットに参入を果たしたクリエイティブ関連の製品だ。同社のこうした動向や製品の詳細についてダグラス氏に話をうかがった。

米Microsoft社のプロダクトユニットジェネラルマネージャであるダグラス・K・オルソン氏
米Microsoft社のプロダクトユニットジェネラルマネージャであるダグラス・K・オルソン氏


Microsoftがデザイン市場に進む理由


クリエイティブ系ソフトウエアの業界で長くキャリアを重ねてきたダグラス・K・オルソン氏。現在は米Microsoft社で、ExpressionやWindows Presentation Foundation(以下、WPF)、Silverlight(旧名WPF/E)の一連のクリエイティブ向けツールの開発に関する責任をもつ立場にある。驚くべきことに、ダグラス氏は旧Macromedia社の創設メンバーのひとりであり、またAdobe Systems社では、PhotoshopやIllustratorの開発に参加してきたという、いわば業界の王道を歩んできた人物だ。ライバルである企業からのキーマンの移籍といったことからも、Microsoft社のデザイン、クリエイティブ市場に向ける情熱や真剣さがうかがえるだろう。

これまでMicrosoft社は、いわゆる開発者向けのソフトウエアについては信用と実績を得てきたわけだが、ここへきて、こうしたクリエイティブな市場へ進出してきたわけはなぜだろうか。ダグラス氏にうかがった。


──Microsoftがクリエイティブ分野へ進出する理由は?

ダグラス●Microsoftという会社がなぜいまデザイナー向けツールを出すのか、理由はおもに3つあります。

まずひとつは、新しいプラットフォーム──つまりWindows Vistaを誰よりもわれわれはよく理解している。そのプラットフォーム向けのツールを作っていきたいと思っています。そのツールはデベロッパーはもちろんデザイナーにも対応したものであること。新しいプラットフォーム、新しいツールを提供することで、より豊かで、よりよいユーザーエクスペリエンスを作り出していく。それとともに、製品を使う人たちによってよりよいユーザーエクスペリエンスを生み出していってほしい。そういう思いから一連の技術を開発しています。

次に、過去何年もの間にデザイナーとデベロッパーが協業できることが望ましいという現場を目の当たりにしてきました。デザイナーにはデザイナーの考え方や使用言語があり、デベロッパーにはデベロッパーの考え方や使用言語があり、彼らが協業することは難しかった。そこで彼らが共通で利用できるツールを開発することで、デベロッパーとデザイナーのワークフローを改善していきたいというのがふたつめの理由です。

最後の理由は、このマーケットは1社が独占している状況であり、そうした状況ではなかなか革新的なことは起こりにくい。こういうマーケットプレイスにイノベーションを吹き込んでいきたいと考えています。このマーケットではMicrosoftはまだまだ新参者であり、しっかり取り組んでいかなければならないと考えていますし、信頼を獲得するには、まずカスタマーの声をきちんと受け止めること、競合製品を使っているユーザーの声もきちんと聞いていくべきだと思っています。

また長い期間をおいて製品を投入していくのではなく、過酷ですが、1年単位というような速いサイクルで製品を投入しないといけないと考えています。それを何度も繰り返すことで、このマーケットのポジションを獲得していくことができると信じています。


デザイン分野への進出の理由を語るダグラス氏
デザイン分野への進出の理由を語るダグラス氏

──具体的にはどのような方法で進めているのですか?

ダグラス●ユーザーエクスペリエンスの象徴的なものは、現在発売されている「Windows Vista」になるでしょう。XPからVistaへと変わる中でもっとも劇的に変化したのはユーザーエクスペリエンスの部分です。

「Microsoft Office 2007」も、使い勝手のよさが大きく高まりました。このことでOfficeのもつ力が仕事でより発揮してもらえると思います。

Web上でもリッチなユーザーエクスペリエンスを作り出すことに努めています。「Photosynth」は、写真のもつパワーを最大限に引き出していますし、地図検索サービス「Virtual Earth」もよりリッチな体験をユーザーができるようにしています。

「WPF」はそうしたユーザーエクスペリエンスのプラットフォームだし、「Silverlight」はXAMLを使ってよりリッチなコンテンツをWebベースで展開できる技術です。

「Visual Studio」はデベロッパー向けのツールであり、デザイナー向けツールは「Expression Studio」になります。

Windows Vistaのフリップ3Dの画面。このように従来にはなかったユーザーエクスペリエンスをOSレベルで提供している
Windows Vistaのフリップ3Dの画面。このように従来にはなかったユーザーエクスペリエンスをOSレベルで提供している


「Photosynth」


「Virtual Earth」
「Virtual Earth」
http://virtualearth.msn.com/


──デザイナーとデベロッパーの協業とは?

ダグラス●これまでにも多くの企業のWebサイトにおいて、「使いにくい」とか「直観的でない」、「わかりにくい」、「かっこ悪い」、「誰がこんなのデザインしたんだろう?」といったことが起きていると思いますが、これは開発者とデザイナーとが、別々の言語、別々の考え方で進めているために起きてしまっていることです。

デベロッパーとデザイナーの協業というのは、それぞれ考え方もちがうし、使う言語も違うということでこれまでとても難しいことでした。しかし、それを改善すべく、デザイナーに向けて「Expression Studio」ができました。

デベロッパーは、いろいろなコンポーネントを集めてきて、ファイルストラクチャーを構築していくことが業務上で重要なことだと理解しています。そのデベロッパーが使っているツールと同じプロジェクトファイルフォーマットを使って、デザイナーがビジュアルを描いていくこともまた重要なことだと考えています。

デザイナーは彼らデザイナーが理解できる言語を使ってデザインを行っています。Expression Studioでは、ビジュアル、プレゼンテーションを司る部分をXAMLを使って作っていくわけですが、それならデベロッパーにも理解できる。デベロッパーは、逆にそれらのビジュアルの部分を取り除いたロジックの部分を見て仕事をしていけばいいわけです。Visual StudioやExpression Studioを使えば、同じプロジェクトファイルをデザイナーもデベロッパーも使うので、ズレのないものをつくることができるのです。



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