第4回　Phase4　実在をヒントにWebのセンスを磨く方法 - 思考するWebディレクション

Phase 4

実在をヒントにWebのセンスを磨く方法

ナビゲーションはWebサイト特有の難しいものではない。よいナビゲーションでユーザーを誘導していくためには、マニュアル通りの方法論を身につけるだけでなく、ケースバイケースの考え方を取り入れることが必要だ。では、コンバージョンに有効なナビゲーションを配置するセンスは、どのように磨いていけばいけばいいだろうか。実は、結構身近なところにヒントが隠れている。では、実事例に基づいて紹介していこう。

ふたつの店（ショップ）がある。ひとつは実際の店舗【4】、もうひとつはWebショップ【5】だ。どちらも同じような商品をほぼ同一価格で販売している店舗だが、このリアル店鋪とWebショップには決定的な違いがある。それは、人の動きが見えるか、見えないかである。ナビゲーションは人の動きを司るものであるにもかかわらず、Webサイトにおいては自分以外の人の流れが見えないため、その成否が判断できない。一方、リアル店舗は人の流れが目に見えるので、流行っている店も売れている商品も手に取るようにわかる。「人の動き」をヒントにナビゲーションを研究できるようになると、コンバージョンの核となる要因をそのままWebサイトにも生かせるようになってくる。逆に、Webサイトの見栄えなどにとらわれていると、ユーザーの動きを忘れ、デザインや技術に傾倒した的外れなサイトになりかねない。

では、実際にリアル店舗から考えを取り入れるWebマーケティングの方法について話をしよう。【6】の写真を見てほしい。これが何の店かわかるだろうか?　パッと見たときに、それが何の店であるか分からないと、店自体のよし悪し以前にどう利用していいのかも分からない。つまり、「店構え」が重要なのだ。細かなデザインやレイアウトも大切だが、まず初見でそれが何であるかという情報を与えないことには、人（ユーザー）はそこから先には進めない。この店は見たところ、何となく惣菜関係のお店であることは分かる。だが、それはこの店の表面に配置されているテキストから、勝手に想像したイメージでしかない。Webの世界には「8秒ルール」という言葉がある。ユーザーに対して8秒間で必要な情報を与えなければ、アクセスしてきたターゲットユーザーが顧客になることはありえないというものだ。

では、また右下の【7】の写真を見てみよう。「これは何の店か?」という問いに対して、100人中100人が「そば／うどん屋」と答えるだろう。一目瞭然でのれんに書いてあるからだ。この店はWebの世界における「8秒ルール」はクリアしている。しかし、実際読者が空腹だったとして、率先してこのお店に入る気が起きるだろうか。実はこの店、そば／うどん屋という情報は明確だがそのほかの情報が欠落しているため、ユーザーが今ひとつ最初の一歩を踏み出せない惜しい店構えになっている。

そこで、リニューアルについてのアイデアを考えてみよう。ちょっとした誘導方法の改善次第では、ユーザーに一歩を踏み込ませるナビゲーションにつながる。ユーザーの心境が明確であればあるほど、一歩踏み込ませるのために必要な情報が見えてくるだろう。それは商品の情報かもしれないし、オーナーの人柄、またほかのお客さんの口コミや体験談かもしれない。リアル店舗からヒントを得ることで、Webサイトのリニューアルで陥りがちな見た目や技術的なパフォーマンスの改善だけではなく、サイト構成を支えるコンテンツとナビゲーションこそが重要であることに気づいてほしい。

【4】【5】どちらも同じような商品をほぼ同一価格で販売している店舗だが、
このふたつには決定的な違いがある。「人の動き」だ

【6】初見でその店（Webサイト）が何であるかを判別できないと、人（ユーザー）は行動を起こせない

【7】「8秒ルール」をクリアしても、実際のアクションを起こさせるための工夫がナビゲーションには必要

［INDEX］
>>>　Phase1　コンバージョンを高めるWebサイト構成
>>>　Phase2　ふたつのナビゲーションタイプを使い分ける
>>>　Phase3　事例から学ぶナビゲーションの効果
>>>　Phase4　実在をヒントにWebのセンスを磨く方法