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書体の選び方、文字の組み方

書籍の装丁、広告のキャッチコピー、雑誌の組み版など、メッセージを伝達する手段として、デザインにおいて文字が担う役割はあまりにも大きいことは、言うまでもないでしょう。書体や文字には歴史や伝統がある一方で、現代に見合うように変化していますから、今のトレンドを押さえることも欠かせません。この特集では、そんな奥深い文字の世界の基本を、ぎゅっとまとめてみました。


書体の選び方、文字の組み方  書体を知る
明朝体の特徴と書体選びのポイント

私たちがふだん使っているフォントには、「明朝体」や「ゴシック体」のようにデザイン的な違いにより分類された複数の種類がある。この文字のデザインを分類するベースになるものが「書体」。まずは、漢字用書体としてもっとも古い歴史を持つ「明朝体」について紹介しよう。
文: 西村希美


[ 情報伝達の要となった明朝体 ]

 明朝体の原型は中国・宋時代(10~13世紀)の楷書体といわれる。楷書体自体は3世紀ごろにはすでにその原型があり、ルーツをたどると秦時代までさかのぼる。

 では、その楷書体がなぜ明朝体までに進化を遂げたのか。これは書と印刷の歴史に大きくリンクする。すなわち、中国で印刷が行われるようになったのが宋時代。それまでの書物の生産は写本(筆で文字を写し取る方法)しかなく、印刷が可能になるとより効率的な作業が求められた。筆で書く楷書体では曲線が多く、印刷用の木版(版画)をつくるにも手間がかかるため、徐々に文字の形が簡略化されたのだ。

 こうして楷書体の筆法を残しつつ簡略化された文字が「明朝体」で、縦線は太く、横線は力を抜いて筆を走らせるので細く、といった具合に筆の使い方が色濃く残っている。

楷書体における表現が詰まった「永字八法」
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書道で使われる8種類の技法は、漢字の「永」に集約されているといわれる「永字八法」(中国古代の書家・智永によって唱えられたとされる)。明朝体のエレメントを理解するうえでも役立つだろう

書体の表情を左右する「ふところ」
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ふところ(懐)とは文字を構成する画の内側に空いたスペースのこと。文字中にある空白部分はすべて「ふところ」と呼ぶ。日本語は正方形の仮想スペース内に1文字ずつデザインされ、このデザインされた正方形の大きさを字面という。字面いっぱいまでふところを大きく取るとおおらかで優しい印象、ふところを狭くすると緊張感が表現され、引き締まった印象となる


[ ルーツ探しが書体選びの第一歩 ]

 中国とは違う日本独特の文字といえば、「かな」だろう。かなは連綿と文字同士を続けて書かれており、1字ずつ独立した文字はなかった(カタカナは独立した字として存在した)。仮名の活字が登場したのは明治初めで、ここでようやく現在に似た文字組み版による印刷が行われるようになったわけだ。

 明朝体のデザインは、漢字とひらがな、カタカナを縦組みで組んだときに、運筆の流れが自然に見えるように設計されてきた。一方で最近では、横組みにも合うように仮名部分の字面を小さめに取ったモダンなデザインも登場している。日本語書体の中でも、もっとも古い歴史を持つ明朝体は、その時代に合わせてデザインもさまざまな進化を遂げてきた。その過程を知れば、より書体選びも楽しくなるのではないだろうか。

伝統的な明朝体の使いどころ
秀英明朝 L
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リュウミン L-KL
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伝統的な明朝体は、文字そのものが持つ重厚さや安定感が見る人に「伝統」や「信頼」、「安心感」を与える。秀英明朝の場合、漢字の力強さの一方でひらがなは柔らかく女性的。タイトルや大見出しにも活きる。リュウミンは汎用性が高く、均整のとれたデザイン。OpenTypeフォント化によってウエイトバリエーションも充実し、見出しから本文、キャプションまでに活用できる

モダンな明朝体の使いどころ
ヒラギノ明朝 W2
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黎ミン L
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ふところを広く取るとモダンで、軽やかな印象となる。その代表格がヒラギノ明朝と黎ミン。かなは少し小さめの字面で、縦組みと横組み両方で可読性の高い組み版を実現する。ヒラギノ明朝は全8ウエイトからなるファミリーで、ウロコや はらい、とめに強さを持たせてあるのが特徴。黎ミンは全34ウエイトあり、曲線やはねのカーブが抑えめで明快なデザイン


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本記事は『MdN』2012年9月号(vol.221)からの転載です。
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