第7回 WebマスターとWeb制作会社の関係 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第7回
WebマスターとWeb制作会社の関係


企業のWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわる。その中で、企業側のネット担当者をWebマスターという。ここではWeb マスターの立場からWebディレクションに焦点を当てて、Webプロジェクトをスムーズに進めるための方法論を解説していこう。


Webマスター×Web制作会社

企業のWebマスターがWebの運用や構築を相談する際、その相手としていちばんに思い浮かべるのがWeb制作会社ではないだろうか。今回は、企業のWebマスターとWeb制作会社がどのようにかかわり、お互いがどのような思いをもって業務に取り組んでいるか。どうすれば、プロジェクトがうまく進められるのか。そのあたりを掘り下げて解説していこう。

Web制作会社の探し方

「Webサイト構築、運営のことについて相談したいが、どこの会社に相談していいかわからない」、「現在、取引のある業者さんに紹介してもらったWeb制作会社にお願いしてしまっても大丈夫だろうか」、「首都圏であれば問題ないが、地方にWeb制作会社はあるのか」など、Webマスターの悩みは尽きないだろう。

実際に地方(高松)で業務を行っている筆者がどのようにWeb制作会社を見つけているかを紹介しよう 【1】。

【1】Web制作会社の探し方
【1】Web制作会社の探し方


1.検索エンジンで検索する
これは、インターネットのコンテンツを制作してもらう企業を探すのだから、もちろん検索エンジンにもヒットするだろうという観点から、だれもが最初に考えることだと思う。ここで見るべきポイントは、デザイン力や編集力である。プロがつくる「自分たちの会社のWebサイト」を見ることから始めよう。

2.mixiなどのコミュニティで探す
Web制作関連のコミュニティが細かく立ち上がっているので、自分がやりたいことをピンポイントで探すことができる。必要であれば、どういったスキルをもったWeb制作会社を探しているか、どの地域で探しているか、などを掲示板に書き込んで募集してみるのもいいだろう。単純にWebサイトだけでは見えない、生の声が集まるかもしれない。

3.地元のWeb関連セミナーに参加する
Web関連のセミナーにはWeb制作会社の関係者が出席している場合が多い。そこで、受講者として集まっているWeb制作会社の人たちと交流し、つながりをもつのだ。もし可能であれば、自分たちでセミナーを開催するのもいい方法かもしれない。言うなれば、Web制作会社の関係者と会うこと自体はタダである。自分が興味のあるWeb制作会社を見つけたら、あつかましくメールや電話でコンタクトをとって会ってみることが大切である。

Web制作会社を選ぶときのポイント

パートナーとなるWeb制作会社を選定するときのポイントを挙げてみよう【2】。Webサイト構築、運営どちらで依頼を行うにしても、ポイントは以下になるだろう。

【2】Web制作会社を選ぶときのポイント
【2】Web制作会社を選ぶときのポイント


1.実績
Web制作会社に何を求めるかで、何についての実績を見るかが変わってくる。目安として見るべきは、企画力、デザイン力、開発力あたりだろう。特に、強みを聞いて「何でもできる」という制作会社は注意深く選定したほうがいい。もちろん、何でも満足のいく結果を残してくれるという制作会社もあるが、特に規模が小さく、コストもそれほど高くない制作会社が「何でもできる」という場合は注意が必要だろう。

2.コスト
誤解を恐れずに言うと、Web制作会社の価格は不明確である。筆者はWeb制作においてコスト管理の経験もあるので、だいたいの相場はわかるが、それらの経験がない人には皆目検討もつかないだろう。現場では、価格が明確でないために混乱が起きることもある。複数社に見積もりをお願いする場合は、同じ条件で依頼を出して比較するべきだ。その際、しっかりとしたRFP(提案依頼書)【3】をまとめておくことは言うまでもない。

【3】@IT情報マネジメント用語辞典にRFPについて詳細が掲載されているので参考にしてほしい(www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/rfp.html)
【3】@IT情報マネジメント用語辞典にRFPについて詳細が掲載されているので参考にしてほしいwww.atmarkit.co.jp/aig/04biz/rfp.html


3.担当者のスキル
デザイナーやプログラマーといった制作者よりも、窓口となるWebディレクターのスキルが重要である。ここが単なる御用聞きでは、いくら現場のデザイナーやプログラマーが優秀でもいいプロジェクトにはなり得ない。依頼する案件に限らず、さまざまなことが相談できるWebディレクターとパートナー契約を結べることがもっとも望ましい。

Web制作会社との付き合い方
運営面でWeb制作会社と契約を行う場合、長い付き合いをすることになる。お互いに気持ちよく業務に取りかかれる環境をつくり、信頼関係を築くことがいいものをつくる近道となるだろう【4】。

【4】Web制作会社とうまく付き合うための注意点
【4】Web制作会社とうまく付き合うための注意点


1.Webディレクターとは密なコミュニケーションを!
当たり前のことだが、Web制作会社の窓口となるWebディレクターとはふだんからコミュニケーションを密に取り合って、たとえば仕事面以外のことでも相談し合える関係を築いておくとベストだ。広く薄いWeb制作会社との関係よりも、限定的でも深い関係のほうがいざというときに役立つだろう。

2.納期、コスト面でふだんから無理を言わない
ふだんから、納期、コスト面で無理を言い続けていると、どうしてもそのぶんを見越して多めに見積もりを出してしまうものである。そうなると相手を探るような行動になってしまい、いい信頼関係は築けない。ふだんは無理なく、本当に無理を言わなければならない追い込まれたときにそれをお願いできる関係を築いておきたいものである。

3.Webディレクターにも決定権を与える
人間というのは任せられると頑張るものである。制作会社とお互いに信頼感が生まれてきたと思ったら、ある程度の決定権をもってもらうようにするといいだろう。極端な話、目的と納期、コストだけを伝えて、あとはすべて任せてしまうのである。経験上、意外とこちらのほうが成果が上がる。またそうすることで、Webマスター自身の実務面での負担が減るというメリットもある。


Webマスターの本音

ここでWebマスターの気持ちを想像してみてほしいのだが、どの職種でも自分と別の立場にいる人間の気持ちは、実際にその立場に立ってみないとわからないことが多い。それはWebマスターについても例外ではなく、Webマスターになってみないと気づかない部分がある。ここでは、筆者自身がWebマスターになって気づいた「Webマスターの苦悩」を紹介する【5】。

【5】Webマスターの本音
【5】Webマスターの本音


登場人物が多い

Webサイト構築、運営を会社のプロジェクトとして行う場合、そこにかかわる登場人物は多岐にわたり、非常に多い。ざっと挙げただけでも次のような人たちがかかわってくる。

・社内の各部署
・上司(決裁者)
・Web制作会社
・システムベンダー
・広告代理店 など

登場人物が多く、仕切りがたいへんなのにもかかわらず、自分ひとりしか対応できる人がいない……という状況もけっして珍しいことではない。

周りが理解してくれない

「何やらインターネットを使うとバラ色の売り上げが見込めるらしい。安いコストで稼げるらしい」ということが社内でまことしやかに語られる。

世間では、IT関係会社が元気でこれからはネットの時代だと伝えられているが、現実はそんなに簡単なものではない。中途半端な知識をもつ人ほど、インターネットに対してまちがった認識をしており、期待だけが独り歩きするという状態が多々ある。周りに理解されないという状況に日々苦悩しているWebマスターは多い。

責任者としての権限が少ない

やらなければいけない業務や抱えている仕事の範囲が広い割に、権限をもたせてもらえないWebマスターも多い。ささいなことでも上司の決済が必要であったり、必要な予算がもらえなかったりとさまざまだ。

これからインターネットを使ってビジネスを行うのであれば、担当部門にはある程度の責任をもたせてもいいのではないかと思う。作業的に細かいものが売り上げに対するインパクトを与える場合もあるので、よりスピード感をもった意思決定の流れを構築する必要がある。


Web制作会社の本音

Webマスターの気持ちに対して、Web制作会社(特に窓口となるWebディレクター)の気持ちも想像してみてほしい。Web制作会社の強みはさまざまな企業のWeb制作物を手がけている点である。過去の事例やノウハウを背景に、Web制作会社がどのようなことを考えているのかを筆者なりに推測してみよう【6】。

【6】Web制作会社の本音
【6】Web制作会社の本音


エンドユーザー(顧客)

最近、Web制作会社に勤めるWebディレクターから「企業のWeb担当者が賢い」という話をよく聞くようになった。この現象は、時がたてばたつほど顕著になっていくのではないだろうか。ビジネスの場でWebが使われ始めたころは、企業のWeb担当者もわからないことが多かったが、今や、企業のWeb担当になって10年という担当者も少なくない。こういった担当者が増えてきている現状を見て、非常に危機感をもつWeb制作関係者は多いと思われる。

自分たちの強みは何か

Web業界に限ったことではないだろうが、非常に競争が激しく、人材が不足気味の中、自分たちの価値をどこに見いだすか、という点で苦悩している会社が多い。わかりやすく言うと、自分たちの強みはデザイン力なのか、システム面なのか、企画力なのか、価格なのか、ということである。企業側のWeb担当者スキルが上がる中で、単純にWeb制作ができるだけでは価格競争に陥ることになるのはまちがいない。何か光る「売り」がないと今後はやっていけなくなるという危機感につねにさらされている。

日々の業務に追われている

Web制作会社としての戦略を立案しなければならないことは理解しているが、現実的に日々の業務が多すぎて、毎日それらをこなすことで精いっぱいになりがちである。「安い単価の案件を請ける→案件の数をこなさなくてはいけない→忙しくて戦略的なことを考えられない」といった負のループに陥っているのである。


大切なのは信頼関係の構築

WebマスターとWeb制作会社の関係を解説してみたが、お互いの信頼関係がプロジェクトを左右を決めるといっても過言ではないことがわかっていただけると思う。お互いに向かうべき目標をしっかりと共有し、それを成し得るためにお互いが何をすべきか、役割分担を決めながら進められるパートナーを選定するべきだろう。そのためには、Webマスターとして、しっかりとした考えをもち、自分たちがやるべきこと、パートナーにやってもらいたいことを共有できる環境づくりが不可欠である。


本記事は『Web STRATEGY』2007年1-2 vol.7からの転載です
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