アートディレクターに聞くフォトディレクション 山﨑泰弘 [STANDARD] Yasuhiro Yamazaki |
やまざき・やすひろ
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。広告制作会社、Sony Musicを経て2011年に独立し、デザイン事務所「STANDARD」を設立。CDジャケット、広告、CI / VI、Webデザインなどを手がける。 url.standarz.com/ |
「撮影はスタッフみんなの個性が反応しあって
ビジュアルができあがるのがおもしろい」
山﨑泰弘さんは、多くのCDジャケットを手がけるアートディレクター。山﨑さんのサイトをぜひご覧いただきたいのだが、どのジャケットも1枚の写真がその音楽を物語っているような印象的なフォトグラフィが用いられている。山﨑さんに、フォトディレクションについて話を聞いた。
山﨑さんは、写真撮影に関して強いポリシーがあるという。「合成はせず、一発撮りをするということを大切にしています。もちろん状況にもよるんですが。ただ、いまって合成技術が進んでいるぶん、現場の集中力、シャッターを押すときの緊張感っていうのが、なんとなく減っているような気がして。やっぱり一発で撮るってことはそれなりの緊張感があると思うんですよ。それは作品にも絶対出てくるので、そこはできるだけこだわっているんです」。 ❚ラフはイメージが限定されないものを 左ページに掲載した、シンガーソングライター、さかいゆうさんの「君と僕の挽歌」のジャケット写真も一発撮りだ。「亡くなってしまった 天国の親友との、すごくパーソナルな歌。それをビジュアルで伝えようと思ったら、“空”というイメージが自然と出てきた。 |
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何案か出した中に、ピアノがあって、そこに青空と雲が映り込んでいるというものがあって。それがいいとみんなが言ってくれたんです。だったら合成はしたくないので、ロケをやりましょうと」。 撮影のための事前のラフは、基本、手描きだという。最近は、ラフも資料写真などを基に合成してイメージをつくり込む人も多いが、そこにも意図があるようだ。「合成でイメージをバチバチにつくり込むと、現場での遊びがまったくなくなる。ロケーションっていろんなハプニングが いっぱいありますし。また、実際その場所に物を置いたり人物が立ったとき、別のイメージが膨らむこともある。それを大切にしたいから、僕はなるべく手描きで提案して、クライアントにもスタッフにも、ある部分はふわっとイメージが伝わるようにしています」。 逆に言えば、「ふわっとイメージを伝える」というのは、フォトグラファーをはじめスタッフを信頼してないとできないことだ。「それはスタイリストさんや美術さんに対してもそうだし。なぜその人を選んだのかというのは、その人のもっている作家性、テイストがいいなと思って頼んでるので。ディレクションって事細かにいえばいうほど、スタッフの個性が薄まっていくんですね。なので、ときには何もいわないのもディレクションだと思ってます」。 ❚撮影はスタッフみんなでつくり上げる 細かにいいすぎると、アートディレクターのイメージだけですべてがつくられてしまう。そういう表現には、限界があるとも言えるのではないだろうか。「そもそも、ものづくりに携わる人って言われすぎるとモチベーションが保てなくなる。なにより、撮影ってスタッフみんなでつくり上げ ているところがあるじゃないですか。みんなの個性が反応し合って、ひとつのビジュアルができるっていうのが、やっぱりおもしろいんです」。 |
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(文:編集部) |
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本記事は『MdN』2013年8月号(vol.232)からの転載です。
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