BALCOLONY.に学ぶ、美少女とデザイン。 |
アニメやマンガというジャンルでは、2次元美少女をモチーフにした商品のことを無視するわけにはいかない。 ここでは、デザイン事務所BALCOLONY.で数多く美少女コンテンツを手がける染谷洋平さんに、 こうしたデザインで求められる作法について伺った。 |
●取材・文 編集部 ●写真 谷本 夏[studio track72] |
90年代の終わりにオタクとデザインが結びついた理由から、
次のオタクとデザインの形を想像する。
90年代、「萌え」という言葉が出てきました。ここを起点に、萌えとエロの境界線が定まって、萌えはエロとは違って「性行為を主目的としないキャラクターへの慕情」であると定義されたと思います。ちょうどこのころは、技術的なものが集まるPC周辺(自作パソコン)とか、描くということでもPhotoshopとかPainterとか、CG技術が出てきています。オタク界隈ではこうしたデジタルによる先端表現は、当時エロゲーや同人に集まっていたんです。
そしてその流れの中で、90年代半ばに、ハイエンド系と呼ばれるイラストレーターが登場します。CGやDTP、フォトレタッチなど、デジタル技術を駆使してボーダーレスに自分の世界を表現するという。ハイエンド系の代表格は、ゲーム「ゼノサーガ」シリーズのキャラクターやメカデザインを手がけられたCHOCOさん。絵描き的な想像力でグラフィックデザインを手がけました。98年に登場したエロゲー誌『Puregirl』(ジャパン・ミックス)のロゴを手がけたのがこのCHOCOさんなんですが、このロゴはオタク文脈のクリエイターが、意識的にグラフィックデザイン表現を試みた、初期の例として見ることができると思います。 |
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先ほどの『Puregirl』は、1999年に版元がビブロスに代わって『Colorful PUREGIRL』として再出発します。アートディレクションは古賀学さんで、さらに洗練されたデザインになりました。美少女をメインに扱っている雑誌でここまでデザインを意識的に行ったものは当時なかったですね。それはつまり、美少女CGの周辺に当時のオタク表現の最先端が集まっていたことの現れだと思うんです。デジタル技術が今までなかったものを見せてくれるんじゃないかとか、パソコン1台あれば俺の人生が変わるんじゃないかとか、CGを覚えれば一花咲かせられるんじゃないかとか、そういうドリームもあった。 これはおそらく、今の「初音ミク」周辺に似た現象なんだと思います。テクノロジーの先端がある場所に、クリエイティブ表現の先端が集まっていくという状況ですね。何だか分からないけどここに表現の未来がありそうだ、とワクワクした人がジャンルの壁を超えてボーダレスに集まってくるという。 今、美少女オタクは2つに分けられると思います。二次元の女の子に恋している人と、二次元の女の子を取り巻くシーン自体に面白さを感じている人の2つです。扱っている美少女が同じ図像でも、それぞれ意味合いが違いますから、デザインする側も、対象がどちらを向いたコンテンツなのか見極める必要があります。 後者、シーン自体の面白さを求める人が集まる場所としては、2.5D、Maltine Recordsなどのネットレーベルやニコニコ動画などがあると思います。この周辺に集まる人は、単純にカッコいいものとか、二次元の女の子が好きなだけではなく、次の時代のワクワクするものが見られるんじゃないかという期待感で動いているんだと思いますね。だから、必然的に次の時代のオタクのデザインのかけらみたいなものもそこに現れている気がします。(談) |
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本記事は『MdN』2013年9月号(vol.233)からの転載です。
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