ケータイWEB制作相談室 第1回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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ケータイWEB制作講座


右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長(url. www.e-o-s.net/) モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』(url. www.rockbird.jp/)開発・提供。ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営
左)中谷健一 トリムタブJAPAN(有) 代表取締役(url. www.trimtab.jp/)モバイルマーケティングコンサルタント。トリムタブジャパンでは、ケータイWEBマーケティング担当者のためのお役立ち情報をPCのメールニュースレターにして配信中。「モバイルWEBマーケティング戦略ノート」(不定期刊、購読登録(無料))



第1回
クライアントからのよくあるリクエスト


企業がケータイWebの制作に本腰を入れる動きを見せている。Web制作の現場でもクライアントの担当者から声をかけられることが多いのではないだろうか。クライアントからの「よくある」リクエストと、その回答例・背景事情解説を紹介した。実践問答集としてご活用いただきたい。

「そろそろ、ケータイサイトをつくりたい」と言われたら

クライアントからのリクエスト1
そろそろケータイのサイトをつくろうかと思うのですが、
企画と費用の見積もりを出してみてもらえませんか?
こう返す!
ケータイの利用者の環境や状況はPCの場合とまったく異なります。
まずケータイでの戦略立案のミーティングをもちましょう。
費用は、内容によってはPCサイトの制作並みにかかると聞いてます。

解説
まず最初に、ケータイWebはPC-Webと特徴がまるで異なると理解してもらうことが重要だ(128ページコラム参照)。利用者の環境やニーズが異なれば、使われ方も違って当然。ケータイにはケータイの戦略・企画が必要なのだ。

筆者の経験上、このようなリクエストを挙げるクライアント担当者はケータイWebを低予算・低コミットメントで仕上げられると期待している可能性大(画面の小ささに比例して予算も手間も小さく済むはず、という先入観?)だ。期待に沿ってサイトをつくってもいいが、最低限、手間をかけないと成果は望めない。

06年5月に総務省が発表した調査によると、ケータイ端末からのインターネット利用者数はPCからの利用者数を超えた【1】。利用者との接点においては、すでにケータイWebがPC-Webを上回っているのだ。これはWeb制作にかかわるみなさんにもぜひ認識していただきたいデータである。むしろマーケット接点の大きさに比例した戦略・企画の立案が立てられてもよいはずではないか?

【1】携帯電話などの移動端末利用者が増加し、PCからのインターネット利用者を超えた(総務省発表・平成17年「通信利用動向調査」より)
【1】携帯電話などの移動端末利用者が増加し、PCからのインターネット利用者を超えた(総務省発表・平成17年「通信利用動向調査」より)

ケータイ戦略立案のミーティングでは、129ページを参考に「どんなサービスやコンテンツが提供可能か」、クライアントと一緒にブレーンストーミングする。既存PC-Webの内容にとらわれず、フラットなアイデアを出すためにも担当者には必ず参加しもらおう。今まで考えもしなかったコンテンツ案、PC-Webの企画を補完するサービスなど新しい可能性が見えてくるはずだ。それらをベースに獲得目標を設定し、具体的なコンテンツ企画に落としていけば両者納得のプロジェクトがスタートできる。

制作費については、必ずしも安くなるわけではない。過度な期待はあらかじめ牽制しておくのが吉である。

クライアントからのリクエスト2
今あるPCのWebサイトと連動したケータイサイトの企画を考えたいのですが、
相談に乗ってもらえませんか?
こう返す!
PCとケータイを連動させるのはとてもいいアイデアだと思います。
どんなことをお考えなのか、ぜひ聞かせてください。

解説
ケータイ企画に前向きなクライアントのリクエストは、こんな言葉からスタートするもの。前の例と同様、ケータイの戦略立案作業からスタートさせよう。

ケータイサイトは他メディアとの連動によってその真価を発揮するといっても過言ではない。PCとケータイとがそれぞれの長所・短所を補完し合うことで、付加価値と利用者満足度を高められる。

ただし、どのような「連動」を期待しているのかに注意したい。ケータイのシステム的な泣きどころは「キャリア依存・機種依存問題」といわれる表示不整合のトラブルである。PC-Webの「ブラウザ依存問題」と似ているが、記述言語の違い、端末機種による表示フォーマット・キャッシュサイズの差、ブラウザの規格違いなど複数の原因に由来するので厄介だ。ケアしないと正常にコンテンツ表示できる端末が極端に少なくなるという問題が生じる。

ケータイサイト構築専用のASPを利用したり、サーバに特別な機器を導入するという解決方法があるが、稼働しているPC-Webのシステム構成、セキュリティポリシー、連動内容によってはこれらが利用できないケースもあるのだ。

「ケータイサイトの話題性に期待している」と言われたら

クライアントからのリクエスト3
ケータイのサイトをつくって、公式サイトにしたいのです。
でもたいへんだっていいますね。なんとかなりませんか?
こう返す!
公式化を目指す理由を聞かせてもらっていいですか?
実は、最近、公式サイト化のデメリットも多いと聞いています。

解説
キャリアの公式メニューに登録されるサイトは「公式サイト」と呼ばれる。それに対して、メニューに載らないサイトは「勝手サイト」「一般サイト」と呼ばれている。数年前まで、ケータイサイトのひとつのステイタスとして「公式化」を目指す人たちが多かったし、審査をパスするのにノウハウと時間と手間がかかったのも事実である【2】。

【2】公式サイト化の流れ。直接キャリアに申し込むのはとてもハードルが高い
【2】公式サイト化の流れ。直接キャリアに申し込むのはとてもハードルが高い

「公式化すれば、集客が容易になる」
「コンテンツ課金型の新しいビジネス展開が可能になる」


といったメリットがあったのだ。しかし現在では公式サイトが増えすぎて、集客メリットはあまり期待できなくなってきた。またコンテンツ課金型ビジネスはトップピークを過ぎてしまっている。一方で公式サイトはコンテンツを勝手に変えられない(承認が必要)、広告掲載やサイト間リンクに規制があり、サイトをダイナミックなビジネスチャネルとして活用するのに足かせとなる。
「公式化で信用を獲得できる」程度の理由ならば、むしろ勝手サイトとして運用するほうがビジネスメリットは大きい。

クライアントからのリクエスト4
ケータイECが盛り上がっているらしいと聞きますが
本当に売れてるんですか?
こう返す!
業界全体で約1兆円の売り上げ規模に。
アパレルやアクセサリー、書籍・CDなどの商品の売り上げが大きいようです。

解説
本当に売れているのである。もっとも「商品選びはカタログで、決済はケータイで」というカタログ通販会社の売り上げも含まれるが。一方で最近、ケータイ完結型ECがF1層を中心に売り上げを伸ばしているのも事実【3】。FOMAやWINなどの3G端末の増加と連動して伸びているという。決済方法の多様化やケータイでのショッピングの習慣化、販売商品が広がってきたことなども一役買っていると思われる。

【3】「衣料・アクセサリー」市場では、携帯サイト上で商品の選択・注文までを行うサイトが好評で、前年比約79%、150億円増と急成長している(経済産業省「情報経済アウトルック」より、2004年モバイルBtoC-ECのセグメント別構成比)
【3】「衣料・アクセサリー」市場では、携帯サイト上で商品の選択・注文までを行うサイトが好評で、前年比約79%、150億円増と急成長している(経済産業省「情報経済アウトルック」より、2004年モバイルBtoC-ECのセグメント別構成比)

クライアントからのリクエスト5
ケータイECをうちでもやってみたい。
サイトをつくる費用や手間はどれくらいかかります?
こう返す!
ASPを利用すればさまざまな機能を付けて月々~20万円程度で始められます。
ただ、ネットに店舗をもつのですから、結果を出そうとすれば、それなりに手間がかかります。

解説
PC-Webから「ケータイ」/「モバイル」+「通販」/「コマース」+「ASP」といったキーワードで検索してみよう。さまざまなASPのリスティング広告を見つけることができる。ただし、サービス内容を詳細に見ていくと、次ページにある「活用の優位性」を高めたり、「注意ポイント」をクリアするものばかりではない。検討はしっかりと。......と書く筆者自身、満足・納得のいくASPを見つけられなかった経験から「使い勝手のよい」ケータイECのASPシステムを開発中。06年夏にはリスティング広告にも登場予定である。ぜひ、見ていただきたい。

クライアントからのリクエスト6

ケータイで店舗集客したい。
どうやって実現させたらいい?
こう返す!
携帯のメールアドレスを登録していただき、メールを配信して集客します。
まず、来店のお客様に登録していただくシステムづくりから始めましょう。

解説
検索サイト活用がまだ緒についたばかりのケータイWebは、サイトから直接店舗に集客するにはまだ力不足だ。しかし来店してくれたお客様にケータイのメールアドレスを登録してもらえさえすれば、確実なコミュニケーションラインとなる。レシートやショッピング袋、チラシ、店舗カード......をケータイサイト登録促進ツールとして活用し(懸賞やクーポンを掲げると効果的)、お店の会計時には店員が口頭で登録を促す。

キャンペーンメールでの集客が可能になる。それ以上にメールで定期的に顧客とコミュニケーションし(このコンテンツも非常に重要なのだが稿をあらためたい)、ロイヤルティを高めることが重要だ。一般的に顧客は、実はとても浮気な消費行動を取っている。ロイヤルティの高いリピート顧客を増やすという取り組みは一見地味だが、継続させると驚くほどの効果となるのである。



ケータイCOLUMN
ケータイコンテンツの特徴と、活用の優位性


特徴1 24時間365日、リアルタイムでアクセスできる
活用の優位性
● ニーズが生じたとき即座に使ってもらえる
知りたいときに閲覧 (例:ワイン情報、サイズ対応表)
行きたいときに申し込み(例:来店予約システム)
気づいたときに購入 (例:定番・定期購入品の通販)
● 利用者のすき間時間を有効活用させることができる
いつでもショッピング (例:通販、商品予約)
手軽にリフレッシュ (例:ゲーム、小説・コミック)
空き時間に学習・学び (例:事例集、音声講座、ミニテスト)
● 時刻や時間経過を意識したサービス・コンテンツを提供できる
時間限定コンテンツ (例:メールで時間限定ページに誘導)
時刻指定コンテンツ (例:配信時刻指定できるメルマガ)

特徴2 どこにでも持ち運び自由なデバイス
活用の優位性
● 閲覧場所の限定なしで手軽に高度なサービスを提供できる
道を歩いている人に (例:GPS位置情報連動サービス)
寝転んで見ている人に (例:即購入しやすい商品通販)
● 来店・イベント時を利用してサイトプロモーションができる
イベント参加者特典 (例:イベント時登録者プレゼント)
来店者に口頭で案内 (例:店舗お会計時にサイトを案内)
● 他メディアと連動したサービス・コンテンツを提供できる
PCとの連動 (例:PCで登録した内容をケータイで確認)
紙メディアとの連動 (例:バーコードによる連動)
TVとの連動 (例:CMにまつわるクイズ)
電話との連動 (例:サイト上の電話番号から即アクセス)
店舗備品との連動 (例:レシートや買い物袋にバーコード)

特徴3 メール中心に利用されている
活用の優位性
● PCの場合と比較して、メール開封率が非常に高い
● メールサービスがそのままサイトのブックマークとして機能する

リンク付きメルマガ配信 (例:「今週の注目話題はこちら」)
1to1メール (例:「お探し商品入荷」メール)
● 「読んで楽しい」メールコンテンツがサイトの継続利用につながる
読ませるメールマガジン (例:担当者の個性を前面に)
連載メールマガジン (例:「次回へ続く」)
印象に残るメール (例:絵文字、HTMLメール)
● 長期間のコミュニケーションによりロイヤルティ獲得を期待できる
ブランディング (例:企業ブランドアップ)
顧客の囲い込み (例:利用者がサイトのファンになる)
口コミへの波及 (例:ケータイのコミュニティ醸成

特徴4 PCと別の利用者(マーケット)が存在する
活用の優位性
● 端末の所有率はすでにPCをはるかに上回っている
● 子ども・主婦・ガテン系・高齢者などの層にアプローチできる

若年層向けサービス    (例:学習塾のeラーニング)
主婦向けサービス     (例:輸入レア食材通販)

ケータイサイトの弱み、活用の注意点
注意点
● 通信速度は、まだローバンド画像表示に注意が必要
(例:画像サイズの縮小、警告)
※06年夏以降、3.5G端末と呼ばれる
ブロードバンド対応端末が登場予定
● パケット従量料金制の利用者がまだ多い
リッチコンテンツは注意  (例:警告の表示など)
むやみなリッチ化を避ける (例:利用者プロフから判断)
● 複数ウインドウ表示が難しい
情報比較には不向き    (例:価格比較など)
● 集客の決め手がない
公式サイトも集客に苦慮  (例:「iメニュー」)
検索サイト利用が少ない  (例:「Google」「Yahoo! JAPAN」利用はこれから)
● ブラウザ表示上の不具合が発生しやすい
運用ルールで防止     (例:古い機種での利用をサポートしない)
システムで防止      (例:対応機器やソフトで対応)
● メール配信時間と配信方法に工夫が必要
リアルタイム配信     (例:「○~△時にだけ配信を確約)
迷惑メール対策      (例:未着メールに再送しない)

ケータイ業界の今後の動き
● 2006年夏ブロードバンドケータイ登場
3.5世代端末と呼ばれるケータイが発売予定。通信速度が速くなり、動画などのリッチコンテンツがより簡単に楽しめるようになる。Webのレスポンス向上によってケータイでも検索サービスが積極利用されるようになるだろう。
● 2006年11月まで
「Vodafone」が「ソフトバンクモバイル」に
PCのブロードバンド化の立役者になった「ソフトバンク」がケータイキャリアのブランド名となって登場。アップル社と提携してiPod携帯が登場するとの報道もされたが、どのような端末やサービスを提供するのかに衆目が集まる。
● 2006年11月
ナンバーポータビリティ制スタート
ケータイ電話会社を変更するとき、電話番号を引き継ぎ利用できるサービス、番号ポータビリティ(MNP)がスタート。キャリアのシェアがどれだけ変わるのか、注目が集まる。



本記事は『Web STRATEGY』2006年7-8 vol.4からの転載です

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