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ウェブアクセシビリティ・レポート 第8回 OSの支援機能について

2024.4.26 FRI

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ウェブアクセシビリティ・レポート

文=KeiYu HelpLab石田優子
ユーザーの視点に立ったサイト構築、運営に関するユーザビリティ、アクセシビリティの向上などのコンサルティング、調査などを行っている。


第8回
OSの支援機能について


WindowsやMac OSには、高齢者や障害者がパソコンを使いやすくするための支援機能が搭載されており、Web閲覧に利用されるものもある。今回はWindows Vistaを中心にOSの支援機能について解説する。


Windows Vistaのコンピュータの簡単操作

従来のWindowsの「ユーザー補助」と
Vistaの「コンピュータの簡単操作」の違い

Windowsには、Windows 95から「ユーザー補助」という名前で支援機能が提供されている。Windows 95当初は標準インストールされておらず、カスタムインストールする必要があったが、Windows 2000やXPでは標準搭載されており、スタートメニューの[すべてのプログラム]→[アクセサリ]→[ユーザー補助]で実行し、支援ソフトを使っているユーザーの環境を疑似体験できる。

Windows Vistaでは従来の「ユーザー補助」から「コンピュータの簡単操作」へと名称が変わり、音声認識やナレータと呼ばれる音声読み上げ機能が追加されたほか、拡大鏡機能の改善といった変更が加えられている。Windows Vistaのコンピュータの簡単操作は、ユーザー補助機能のときと同様、スタートメニューの[すべてのプログラム]→[アクセサリ]→[コンピュータの簡単操作]から選択する。そのサブメニューには、[コンピュータの簡単操作センター][Windowsの音声認識][スクリーンキーボード][ナレータ][拡大鏡]がある。

[Windowsの音声認識]では、マイクを接続して発話することで、メニューやダイアログ、画面スクロールなどの操作、また音声による文字入力などが行える。音声認識で命令してブラウザを起動し、「番号を表示」と言うと、クリックできる場所が画面に数字で表示される【1】。そこで、選択する数字と「OK」を言うと、その指定したページに切り替えることも可能だ。

【1】(Windowsの音声認識)でアプリケーションの操作を音声のみで行える。図はブラウザに表示したサイトのクリック可能な場所を数字で表示した場合
【1】(Windowsの音声認識)でアプリケーションの操作を音声のみで行える。図はブラウザに表示したサイトのクリック可能な場所を数字で表示した場合


[スクリーンキーボード]【2】はWindows XPなどにも搭載されていたもので、画面上に表示された仮想キーボードの「クリックモード」「スキャンモード」「自動選択モード」といった入力モードを使ってデータを入力することができるのだが、キーやマウスを操作するためには何かしらの補助を必要とする肢体不自由の人などにとって便利な機能だといえる。

【2】画面上に表示される仮想のキーボード[スクリーンキーボード]。キーボードまたはマウスが使いにくい人のための補助機能だ
【2】画面上に表示される仮想のキーボード[スクリーンキーボード]。キーボードまたはマウスが使いにくい人のための補助機能だ


[ナレータ]は、メニューやダイアログなどを合成音声で読み上げるスクリーン・リーダーのようなものだが、残念ながら標準では英語の合成音声エンジンしか搭載されておらず、英語でしか読み上げない。Office 2003がインストールされていると、Office 2003の合成音声エンジンが認識されて日本語読み上げが可能になるが、視覚障害の人がWebの閲覧やアプリケーションの操作などを行うには、やはりサードパーティー製の専用のスクリーン・リーダーが必要となるようだ。

[拡大鏡]【3】は画面に表示されたある部分を拡大したり反転表示したりする、弱視の人などに向けた機能であるが、従来は画面を上下に分割し、上部に拡大画面が表示されて使いづらかった。

【3】画面の一部を拡大したり反転表示したりできる[拡大鏡]。Windows Vistaでは拡大ウインドウの位置やサイズを任意に設定することができ、機能が向上している
【3】画面の一部を拡大したり反転表示したりできる[拡大鏡]。Windows Vistaでは拡大ウインドウの位置やサイズを任意に設定することができ、機能が向上している


Windows Vistaでは任意の位置とサイズで拡大ウインドウを表示することができるように機能が向上している。

以上で説明した機能、およびその他の機能も含めて目的別にまとめて設定できるようにしたのが[コンピュータの簡単操作センター]【4】だ。Windows XPの[ユーザー補助の設定ウィザード]に該当するメニューだが、ウィザード形式ではいったん設定すると、設定変更が難しくて混乱するという問題があったのが解消されている。

【4】[コンピュータの簡単操作センター]。目的に合わせてそれぞれ使いやすいように設定できる
【4】[コンピュータの簡単操作センター]。目的に合わせてそれぞれ使いやすいように設定できる


コンピュータの簡単操作センターの機能
コンピュータの簡単操作センターは[コンピュータを画面なしで使用します][コンピュータを見やすくします][マウスやキーボードを使用します][マウスを使いやすくします][キーボードを使いやすくします][サウンドの代わりにテキストまたは画像を使用します][タスクに集中しやすくします]の7つのカテゴリに分かれており、それぞれのカテゴリを選択して必要な項目を設定する。

[マウスを使いやすくします]【5】では、マウスポインタの色とサイズを変えたり、マウスの代わりにテンキーでマウスを動かしたりすることなどができる。マウスポインタの色変更や拡大は、従来から搭載されている機能で、ディスプレイが見づらくなったシニア層などにも使いやすいが、まだ機能の存在を知らないユーザーも多い。

【5】マウスポインタの色やサイズを変更するなど、マウスを使いやすく設定することもできる
【5】マウスポインタの色やサイズを変更するなど、マウスを使いやすく設定することもできる


[キーボードを使いやすくします]では複数のキーを一度に押すことができない人のために、ひとつずつキーを押すことで複数キーを同時に押したと見なすような機能がある。また、[サウンドの代わりにテキストまたは画像を使用します]は、聴覚障害の人などのために、エラー音に代わって画面の点滅などで注意を促す。その他、発達障害の人などのための機能も少し用意されているが、まだ十分ではない。


Mac OS Xの支援機能

[ユニバーサルアクセス]と[スピーチ]
Windowsだけでなく、Mac OSにも支援機能がある。Mac OS 9.xまでは画面拡大・反転機能の「クロースビュー」と、マウス・キー操作の補助機能「イージーアクセス」があったが、Mac OS Xからは[システム環境設定]の[ユニバーサルアクセス]に統合された。さらに、Mac OS X 10.4 (Tiger)からはVoiceOverというスクリーン・リーダーが[ユニバーサルアクセス]に標準搭載されており【6】、ブラウザでWebサイトを読み上げることができるが、残念ながら英語音声のみの対応だ。

【6】Mac OS X 10.4の[ユニバーサルアクセス]ダイアログでは、VoiceOverが画面拡大のズーム機能や、反転・グレースケール表示の機能と同じタブに組み込まれている
【6】Mac OS X 10.4の[ユニバーサルアクセス]ダイアログでは、VoiceOverが画面拡大のズーム機能や、反転・グレースケール表示の機能と同じタブに組み込まれている


また、システム環境設定には、[スピーチ]【7】という音声認識機能が、ユニバーサルアクセスとは別に用意されている。スピーチは、任意のキーを押したり、マイクに「Computer」のようなキーワードを話しかけることで起動し、音声認識でコマンドを実行したりアプリケーションを制御したりできる。また、VoiceOverとは別のテキストのみ読み上げる機能も搭載されている。スピーチも英語音声のみに対応している。音声認識でコマンドを実行し、テキストを音声読み上げさせるような操作は、英語圏では障害の有無を問わずに普及し始めており、一部の人は日常的に使用している。多くの人が使えるパソコンのユニバーサルデザイン的な機能として日本語化が期待されるところだ。

【7】音声認識のオン/オフや、リスンキーとキーワードの変更、テキスト読み上げ機能などを設定する[スピーチ]
【7】音声認識のオン/オフや、リスンキーとキーワードの変更、テキスト読み上げ機能などを設定する[スピーチ]


本記事は『Web STRATEGY』2007年3-4 vol.8からの転載です

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