ウェブアクセシビリティ・レポート 第16回 携帯電話のアクセシビリティ

ウェブアクセシビリティ・レポート

文=KeiYu HelpLab石田優子
ユーザーの視点に立ったサイト構築、運営に関するユーザビリティ、アクセシビリティの向上などのコンサルティング、調査などを行っている。


第16回
携帯電話のアクセシビリティ


携帯電話は多くの人の日常生活に欠かせない機器として普及してきており、携帯電話からインターネットにアクセスする人も増えている。今回はさまざま障害のある人にとっての携帯電話のメリットと利用上の問題点について取り上げる。

記事協力
(株)ナレッジクリエーション 新城直氏
SQ(重度四肢麻痺者メーリングリスト) 全国頸髓損傷者連絡会


携帯電話のもたらすメリット

携帯電話からインターネットが閲覧できることの便利さ以前に、携帯電話が普及したこと自体がさまざまな障害のある人にメリットをもたらした。以前は聴覚障害の人が外出先でだれかに連絡する必要ができた際、携帯電話の普及以前は、FAX設置場所でのやりとりなど、非常に不便が多かったが、携帯メールを使用できるようになったため、即座にやりとり可能となり、遠距離連絡手段として欠かせない機器となった。

また、遠距離でなくとも、携帯メールに文章を入力して、手話や読話ができない人に見せることで、目の前の人とのコミュニケーションを図りやすくもなった。

車いすの人などは、店の中に入れない状態で中に連絡する必要がある場合、家族や知人や支援者に連絡する場合、外出先で不測の事態が起きた場合の連絡用などに活用している。また視覚障害の人も、音声通話だけでなく、携帯メールの音声読み上げ、携帯用のサイトで駅の経路や時刻を調べたり、周辺情報を調べたりするのにも利用している。

パソコンよりも操作が簡単で持ち運び可能な携帯電話は、さまざまな障害の人にとって欠かせないものとなりつつある。


携帯電話のハードウェアとしてのアクセシビリティ

視覚障害の人や高齢の人に使いやすいように、表示文字やボタンを大きく、操作をシンプルにし、メールやWebサイトの音声読み上げ機能をつけるなどした携帯電話がいくつかのメーカーから発売されているが、現在シェアがもっとも高いのがNTTドコモの「らくらくホン」シリーズだ【1】。

【1】音声読み上げだけでなく音声入力にも対応したらくらくホンプレミアム
















【1】音声読み上げだけでなく音声入力にも対応したらくらくホンプレミアム


最新の機種では、メール、携帯サイトを音声読み上げするだけでなく、入力変換した漢字がどの文字かを音声で読み上げて正しいかどうか確認できるほか、自分の声を音声入力して音声メールとして電話の相手に送信できたり、GPS機能が搭載されたりしている。

中途から視覚障害になった人などはパソコンの操作を覚えるのが難しいため、携帯電話でインターネットやメールを利用することも増えている。

これらのように、視覚障害、高齢者にも使いやすく携帯電話の機能は発達してきているが、四肢麻痺の人などにとっては、携帯電話はいまだ使いにくい点が多い。指での操作が困難な人の場合、車いすの口元に近い位置に携帯電話を固定してマウススティックでボタンを押して操作したり、車いすに取り外しのできるテーブルを付けて、テーブル上に携帯電話を置いて、不自由な中で動く指で操作したり、スイッチという支援機器と携帯電話を組み合わせて使うなど、それぞれの人が使いやすいように独自に工夫を凝らしている。

しかし、これらの操作でメールを書いたり、ネットを閲覧したりするのは時間がかかるため、まだまだ携帯電話からインターネットを利用している人は少ない状態だ。


音声読み上げでアクセスしやすいサイトとしにくいサイト

音声読み上げ可能な携帯電話でインターネット利用している視覚障害の人たちにお聞きしたところ、NHK番組表【2】、携帯版の楽天【3】やYahoo!サイト、通常のフリーサービスのブログなどが挙げられた。このうちNHK番組表は音声読み上げを意識して作成されたものだが、その他のサイトでも携帯電話からすばやくアクセスしやすい文字中心のサイトは音声読み上げでも利用しやすい傾向にある【4】。ブログの場合は携帯電話向けに閲覧・投稿から簡単に閲覧・投稿できるようにしている点が結果的に音声読み上げのしやすさにもつながっている。

【2】音声読み上げ版のNHK番組表
【2】音声読み上げ版のNHK番組表

【3】携帯版楽天市場の画面と操作イメージ
【3】携帯版楽天市場の画面と操作イメージ

【4】パソコンからも携帯電話からのアクセスできる「えきから時刻表 乗り換え案内」
【4】パソコンからも携帯電話からのアクセスできる「えきから時刻表 乗り換え案内」


また、COOPの各サイトには音声読み上げユーザー用の「よみあげくん」【5】というページをサイトに用意している場合が多く、会員コードとパスワード入力してログインしたあとは音声読み上げだけで宅配の注文ができ、店頭まで行って品物を選ばなくても自宅に届くというので利用者が多い。

【5】COOP東京の「よみあげくん」もパソコンからも携帯電話からもアクセスできる
【5】COOP東京の「よみあげくん」もパソコンからも携帯電話からもアクセスできる


この「よみあげくん」での注文が携帯電話からできるサイトとパソコンからでないとできないサイトがあるが、COOP東京の場合は携帯電話からでも利用できる。逆にアクセスに困るのが代替テキストなしの画像やFlashでつくられたサイトで、ほとんど何も読み上げられず操作できない場合もある。最近、携帯電話でクーポンを配布するサービスが増えているが、クーポンが画像のため、届いたものの利用に困る場合もあるという。


音声読み上げとスマートフォンでのWeb閲覧

Windows Mobileを採用しているスマートフォン用の視覚障害者向け音声読み上げソフトとして、クリエートシステム開発(株)のDTalker Mobile Ver3.0がある。W-ZERO3と同ソフトの組み合わせで利用している山中氏にスマートフォンでの利用についてお聞きした。

山中氏が使用しているのはWS003SHというモデルで、凹凸のないタッチスクリーンだが、DTalker Mobile に付属の凸点の付いた升目のシールをスクリーンに貼ることでボタンの区別が可能だ。PCでデータを一括管理し、その日必要な情報だけをW-ZERO3にコピーして持ち歩きできる点が便利という。スマートフォンではパソコン向けのサイトも閲覧できるが、携帯電話の場合と同様に、Flashだけのサイトは音声読み上げではまったく利用できない。

また、フレームを使っているサイト、冒頭に広告やカレンダーが延々とあるサイト、別ウインドウが開いて、そのウインドウに戻るリンクがないサイトも使いづらいという。

これらは通常のパソコンでの音声読み上げともほぼ共通の問題だが、外出時などに利用し、ブロードバンドのパソコンからのアクセスよりも通信速度が遅いスマートフォンからのWeb閲覧では、情報に迅速にたどり着くことが重要なだけに、音声読み上げユーザーだけでなく、スマートフォンユーザー全体に向けての問題ともいえる。

携帯電話、スマートフォンからインターネットを利用するユーザーは、障害の有無にかかわらず増えつつあるが、携帯サイトはパソコン向けサイトに比較して、全体的にアクセシビリティへの取り組みが行き届いていない面が多い。携帯電話およびスマートフォンなどの携帯端末からのWeb閲覧・操作についてもサイト制作者としては今後より意識していく必要があるだろう。


本記事は『Web STRATEGY』2008年7-8 vol.16からの転載です

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