第1話 原動力はビンボーだった | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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今回の「ザ・対談』は、Flashアニメーションの二大巨頭が登場! 正月映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』の公開が決定した監督のFROGMAN(蛙男商会)さん。そしてDVD『ペレストロイカ』と『CATMAN』がリリースされたばかり青池良輔さん。お互いの新作インタビューと同時に、普段読めないようなユルくてタメになる談義をお送りいたしましょう!


FROGMANさん

[プロフィール]
ふろっぐまん●1971年生まれ。映像制作スタッフの後、個人製作のFlashアニメーションを「蛙男商会」名義で発表。テレビ、CM、映画と多岐に渡った、幅広い活動を見せている。ちなみにTOHOシネマズのプログラム開始前のアニメは隠れた名作。映画館で秋刀魚を焼くのは禁止なのだ〜

http://kaeruotoko.com



青池良輔さん

あおいけ・りょうすけ●1972年生まれ。大阪芸術大学映像学科コース卒業。自主映画制作の後、カナダのモントリオールで映画製作会社に勤務。その後、Webアニメーション『CATMAN』でデビュー。現在、アニメ、Webサイト、テレビCM、実写ドラマと、Flashによる多角コンテンツを手がける才人。カナダ在住

http://www.aoike.ca/



第1話 原動力はビンボーだった



屈託ない笑顔で再会! FROGMAN氏(左)と青池良輔さん(右)


屈託ない笑顔で再会! FROGMANさん(左)と青池良輔さん(右)


豪華な声優陣を迎えて



──今回、お二人とも新作が出ての対談ですが、ここ最近の近況みたいなものはお互いに意識されてますか?

FROGMAN●青池くんは最近、NHKで『星新一ショートショート』を手がけたり、あとWOWWOWで実写も撮っているんでしょ?

青池●ちょうど昨日、アフレコしました。

FROGMAN●星新一のショートショートは「青池くんで仕方ない」と思ったけど、実写を撮ったというのは、ちょっとジェラシーを感じてて(笑)。

青池●ハハハ。藤子不二雄さんのSF短編集なんですね。半分アニメで半分実写。アニメ・パートがまた変態声優で(笑)。テリー伊藤さんなんですよ。

FROGMAN●へー。

──声優には凝りますね。

青池●いや、結果的にそうなっているだけなんですけど。

──『CATMAN』のほうは声優に町田康さんが参加で。

青池●町田さんは僕が「是非!」と思って、お手紙を書かせてもらったんです。……発想もそこからって記事が出ているんですが、それは後付けなんですけど(笑)。

──声優さんが入る仕事ってメジャー感、出てきませんか?

FROGMAN●そうですね。僕のほうは今回、真木よう子さんが最初に決まって、もともと真木さんが『ジャガー』のファンだったという経緯もあります。あと、プロデューサーから「出したい人、います?」と聞かれて、僕『スネークマンショー』が大好きだったので、伊武雅刀さんか小林克也さんかな……と思ったら、伊武さんが快く引き受けてくださって。

青池●へー、いいですね。

FROGMAN●あと、シナリオの段階で坂東英二さんがたくさんいる世界を描いていたら、制作委員会の毎日放送の部長さんが「わし、友達やねん」って(笑)。坂東さんの喋りを小馬鹿にしたコントで、物真似できる人を想定していたんだけど、まさか本人がやるとは思わなかった(笑)。

青池●アハハハ。イイ話ですね。

カナダから一時帰国中の青池良輔さん──青池さんは、新作『ペレストロイカ』でも豪華な声優陣ですね。

青池●はい。大人計画の社長さんに「これはウチの者にやらせます」と言っていただいて。失礼ながらその頃、彼らのことをよく知らなかったんです。けど、たまたま家にあった『ヒゲのおいらん』というDVDで見て「おお!」と。とてもよい出会い方をしたと思っています。

──声優さんに指示を出すとき、難しかったりします?

FROGMAN●僕の場合はアニメの作り方として、ガイドで自分の声を入れるんですね。先に絵を作ってからやっていたので、ある程度、どういう気持ちの流れかっていうのは自分でつかめていた感じがある。でも僕の場合、芝居の付け方は「NGじゃなければOK」というスタンスなんですよ(笑)。

青池●まったく一緒ですよ(笑)。

FROGMAN●ガチガチに芝居を固めて「こうじゃなくちゃダメ」という作りはしていない。で、いつも一人で作っているだけに、別の方々と組んで自分の予想つかない芝居をしてくれることが楽しくて。

青池●僕は場合によっては字幕も入れるんですけど、やっぱり「NGじゃなければOK」なタイプです(笑)。

──当初『ペレストロイカ』は英語版だったんですよね。

青池●はい。外国人にやっていただいて、それに日本語字幕をつけて。

──わざとロシアなまりの英語を……って(笑)。

青池●それもノリですよ。なんとなく「そのほうが面白いじゃない」と。で、キャストを集めたら「英語、喋れないじゃん!」って(笑)

FROGMAN●ハハハ。

青池●でも、全然面白いから「それでいい!」と。

 映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』より 映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』より


 映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』より 映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』より

映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』
原作:うすた京介(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督・脚本・キャラクターデザイン:FROGMAN(蛙男商会)
CAST:藤原啓治 金丸淳一  真木よう子 板東英二 伊武雅刀
音楽:manzo 主題歌:Franz Ferdinand(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
宣伝/配給:DLE  配給協力:東宝

2009年1月1日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行公開
2009年1月10日より、TOHOシネマズ系で全国順次公開

コミック累計700万部を記録する大ヒット・ギャグ漫画、OVAに続き強力タッグによって長編アニメ化! 主題歌にフランツ・フェルディナント! FROGMAN本人も声優として出演! しかし、なんといっても坂東英二さんには負けます……流石!

(C)2009『ピューと吹く!ジャガー』FLASH MOVIE製作委員会 http://www.pyu-to.com


原動力は、お互いハングリー



──ちなみに『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』は、まだ(11月8日取材時点)完成されてないという噂ですが……

FROGMAN●そうですね。まだ作ってます(笑)

青池●ワハハハハハハ。

FROGMAN●いくらでも作り込めるから、着地点が難しいんですよ。よく僕は万里の長城を例えにするんですが、1千キロ作ろうと思ったときに普通のアニメなら5mの壁を繋げながら作る感覚。でもFlashの場合は、1mのところから1千キロ作ってみようと。

青池●ああ、なるほど。

FROGMAN●時間があれば2mにしよう、もっと時間があれば3mにしよう……と、段々積み上げていく。特にFlashの場合、シンボルと言って後で上書き可能なパーツが全部分解できるので、ちょっと気になるところは加筆修正ができる。だから、終わりがないというか……。

──では、手離れしたときは「完成した!」というより「まだ足りない!」と?

FROGMAN●ええ。「もうちょいできたな」という感慨もあります。けれど、やっている最中は……飽きるんですよ(笑)。

青池●一緒ですね。僕の場合、一番燃えるのって作り方を考えているときなんです。毎回作り方を変えるので、今回はこのテクニックを使って、効率化されて、ものすごく楽しいものになるはずだ……と作り始めたら「ああ、もう終わってほしい……」と(笑)。

FROGMAN●1ヶ月も同じことやっていると嫌になるもんね。

青池●ええ……。もう、絵とか描きたくないですもん。

──お互い、エンターテインメント業界でFlashを使って作った作品が流通する最前線にいるわけですが、数年前ならそこは高いハードルでしたよね?

FROGMAN●そうですね。

青池●ええ。

──そこはクリアして、シビアに制限がある世界でもあります。そのあたり、クリエイターとして我慢しなければならない局面もあります?

青池●でもね、もちろん蛙さんも実写畑で制作されてきた方だし、僕も映像制作会社にいたので、作品は作らなくてならない。放送は投げられないという感覚がある中で「自分の好きなことやっていいよ」という楽しさがありますよね。

貧乏が育んだ、とFROGMANさん FROGMAN●そう。

──遊び場を自分で広げていった感じはありません?

FROGMAN●僕はもう最初から金を稼ぐなら「このFlashなら可能性がある」と。最初から仕事にしようと思っていた部分があったので。

──つまりビンボーが生んだ……

FROGMAN●はい(笑)。

青池●ワハハハハ。

FROGMAN●Flashありきで遊んでいて、それが仕事になっちゃったという感じではないんですよね。

青池●僕も第1作を作っているときはサラリーマンだったし、その頃は他に作っている人もみんな副業を持っていた。そういうノリが強かったのですが、その後仕事がなくなっちゃって……奥さんと2人で「どーしよーねぇ」って(笑)。

FROGMAN●呑気だね(笑)

青池●「もう頑張って作るしかないんじゃないの?」と。やっぱり、そのビンボーなときが重要でした。

FROGMAN●原動力がね、お互いハングリーなんですよ。

──そもそも実写を撮りたいというのは共通認識で。

青池●もちろん。今でも『ゴッドファーザー』ぐらいは撮りたいですよ(笑)。

FROGMAN●僕も撮りたいのは山ほどあって、お声もかけていただいている。蛙男商会の名義でやるなら、コメディあたりで『鷹の爪』なんかから遠ざからないもので攻めていったほうがいいかな……なんて。もちろん『おくりびと』みたいなものも撮りたいと思いますよ(笑)。

青池●僕、何年か前に「実写やろうよ!」と声かけられたんです。けど「Vシネマのスタッフ集めておくから」って(笑)。

FROGMAN●ハハハ。

青池●歌舞伎町あたりで一発撮ろうよって……僕ってそんなイメージなのかな?

FROGMAN●『CATMAN』でそういうイメージになったのかね。

青池●……わかんないけど、その方が実現可能な範囲で言うと(笑)。



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