上級編 第2回　CGCM

バイラルは、バズやクチコミと同義で使用されることが多いが、バイラルの醍醐味は単なるノイズアップにあるわけではない。クチコミやCGMによる人から人への情報感染を利用して、ブランド認知から商品販売までワンストップで結びつける新たな広告パワーをもっているのがバイラルである。世界中を騒がせたCGCMを例に、バイラルマーケティング戦略に迫ってみよう。

解説：バイラルエンジン

CGCM（シー・ジー・シー・エム）とは、コンピュータグラフィックスによるCMのことではない。Consumer Generated Commercial Messageの略で「消費者作成CM」のこと。テレビで流すことを前提に制作されたCMではなく、個人が趣味の延長で作成したCMで、主に動画ポータルサイトで流されたり、メールで転送されたり、ブログやSNSなどCGMで広がっていく。

これまでのCMといえば、CMプランナーやCMディレクターなどテレビCM制作の専門家の領域だったが、家庭用ビデオカメラの普及やYouTubeなど個人が作成した動画の公開が手軽にできる生活者メディアの登場によってCGCMが生まれた。つまり、CM作品の出来栄えの良し悪しはともかくとして、みんなCMを自分でもつくってみたかったわけだ。

世界的に有名なCGCMのひとつに、「コーラ×メントス」がある。コーラにメントスを流し込んで噴水のように勢いよくコーラを噴射するものだ。YouTubeで「cola, mentos」で検索をすると1800以上（2006年12月現在）の映像が現れる。いずれもペットボトルのコーラにメントスを注ぎ込み、勢いよくコーラを噴射させるというもの。この過激な噴水ショーをマネしてみようと、世界中の若者たちの遊び心に火がつき、コーラ×メントスのCGCMブームが巻き起こっている。

コーラ×メントスのCGCMの中でも、大掛かりな噴水ショーを披露する"Extreme Diet Coke and Mentos Experiment"は圧巻だ。

仕掛けたのはEepyBird.comの2人。このCGCMのアクセスは600万以上のヒットを記録。TVweek.comのベストバイラルビデオ賞を受賞して脚光を浴びた。これらの現象に目をつけたメントスは、メントス噴水コンテストを開催。

これは、優秀作品を選ぼうとする単なるCMコンテストではない。遊び心を刺激して、興味をもった若者がマネしてみようとすれば確実に商品が売れるマーケティング戦略が裏側に見える。バズを狙うだけではなく、商品を売ることを見据えたマーケティングの醍醐味がここにある。

そもそもムービーコンテストをすることが目的であるならば、ビデオテープを郵送で送ってもらえばよいかもしれない。しかし、YouTubeをプラットホームにしたことによって、コーラにメントスを入れる映像が世界中へと飛び火し、さらなる一人歩きを始める。コンテストがあったことさえ知らない人も、CGCMをきっかけにマネしようとするほど、商品が売れる仕組みである。

一方、EepyBird.comの2人は、この人気振りに便乗して1枚15ドルで「噴水Tシャツ」を販売したり、噴水ショーを披露するツアーまで開催したりするほどだ。また、Googleと広告収入の配分契約も取り交わしたと報じられ、さらなる話題を呼んでいる。

ハインツ日本は、TOKYO MXとコラボしてCGCMキャンペーンを開催。CGCMのお題は「逆さケチャップ」。TOKYO MX の番組内で告知して、リスナーから寄せられたCGCMをテレビ番組「BlogTV」の CM 枠で放送する。CM 枠を CGCM に開放する初の事例となる。

ハインツ・逆さケチャップの Fun Movieの応募方法は、YouTube、Revver、Google Video、FlipClip などの動画投稿サイトに作品をアップロードし、番組のメールアドレスに「アップロードした動画の URL」などを送信するか、携帯電話で撮影した動画をメールに添付し、番組のメールアドレスに送信する。また動画を収めた miniDV を郵送で応募することもできる。

BlogTV は、ブログ界の話題や知名度の高いブロガーを紹介する番組で、動画投稿サイトの YouTube などを活用したインターネット視聴もできる。CGCMを含んだ形で番組を投稿サイトにアップロードすることで、CM 効果を高めている。CGCM の募集と選考は、BlogTV のスポンサーである株式会社デジタルガレージと、その 子会社で CGM を活用したマーケティング事業を手がける株式会社 CGM マーケティングが行う。