上級編 第3回　ブロガー記者会見

ついに日本にもやって来た、ブロガー記者会見。マスコミ報道記者同様に、影響力のあるブロガーたちを招待して新商品発表会を開催するもの。アメリカでは政府記者会見にもブロガーを招待するなどすでに始まっているが、日本でもこうした試みがいよいよ開始された。今後こうした企業活動が増えるほどに、PR（Public Relations）から、CGMR（CGM Relations）の時代へ突入したといえそうだ。

解説：バイラルエンジン

毎日、ブログをチェックするクライアントや広告関係者が増えている。なにしろ、自分の担当商品の生の声が、リアルタイムでそこにあるからだ。商品の話題といっても、日常生活シーンからまるで専門家のような批評までさまざまだ。

生の声による評判も気になるが、量的側面も気になるところだ。CGMマーケティング戦略においては、商品やサービスにまつわるキーワードがブログやSNSでどれだけたくさん登場するか、ブログ出現数に注目している。市場シェアが大きいブランドはブログ出現数も高く、そこにはなんらかの相関関係があると推察されているからだ。

逆にいうと、ブログで圧倒的に話題になれば、市場シェアもひっくり返せるのではないかといった憶測も浮かぶ。こうしたCGMマーケティング理論はさまざまな研究が始まっているが、企業の新たなCGMを活用した挑戦も続々と始まっている。

CGM効果に着目して、アルファブロガー（多くの読者をもつ影響力のあるブロガー）を狙ったCGMプロモーションが盛んに始まっている。手法としては、アルファブロガーに商品サンプルを提供して、商品にまつわる使用感をブログ記事に掲載してもらう形式や、ブロガー向けの記者会見などがある。

ブロガー記者会見は、日本ではまだまだ始まったばかりで、ブロガーたちを記者同様に招待して新商品発表会を開催するものだ。推奨されるか、批判されるか記事内容は、記者同様にブロガー自身の判断にまかされる。

アメリカでは、マスメディアの報道陣だけでなく、ブロガーも招いて政府の定例記者会見が行われている。ホワイトハウスは、「記者会見にはあらゆるタイプの記者を認めるべき。既存のメディア、新しいメディアを問わずさまざまな意見の持ち主を受け入れる」と述べている。

日本においても、こうした動きが企業事例として飛び出した。それが、「新型スカイライン ブロガー向け発表会」だ。

日産自動車は、2006年11月20日銀座の本社ギャラリーにブロガーを招いて新型スカイライン発表会を開催した。ジャーナリスト向けの発表会に引き続き、約100名のブロガーを招いて発表会を開催した。ブロガー記者会見は、日産初の試みということだ。

招待の対象となったブロガーの抽出は、いたってシンプル。ブログ検索のテクノラティでキーワード「スカイライン」を入力してヒットしたブログの上位100名のブロガーに担当者から直接案内状がメールで送付された。

また、発表会の内容は、マスコミ向けの記者会見そのもの。開発担当者らが万全の体制で登場して、あらゆるブロガーの質問に答えていったという。このため、ファンには満足度の高いイベントだったようだ。スカイライン公式ブログには、70本以上のトラックバックがついている（2006年12月10日現在）。

従来のマスコミ向けのPR（Public Relations）から、CGMR（CGM Relations）の時代へ突入したといえそうだ。ちなみに、CGMRは、従来のマスメディアを対象としたPR活動に対して、CGM（消費者メディア）に働きかける新たな広報戦略。ブロガー・リレーションシップともいう。これから注目度がアップしていくだろう。