エキスパート編 第4回 お金を生むバイラル | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

バイラルクリエイター養成講座


エキスパート編 第4回 お金を生むバイラル

バイラルが売上に関係するかしないかといえば、関係する。ムーブメントが起こるまえの余波とクチコミが重なると、予想できない広がりと加速度をもって一気に広がる。オモシロムービーをつくることがバイラルではない。世の中の流れを利用してうまく乗ることが、バイラル成功の秘訣かもしれない。

解説:バイラルエンジン


[プロフィール]

バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。

ECの売上予測

あるECサイトの立ち上げを、私は担当したことがある。立ち上げにあたって、独自に一から構築するやり方やASPサービスを利用するやり方などさまざまな選択肢があるが、専用ソフトをカスタマイズして独自に運用する方法がクライアントニーズにもっとも近くコストパフォーマンスも良いという結論が出た。ここまではよかった。

やっかいなのは、初年度X億円という果てしない売上目標があって、「それを達成させるためにどうにかしろ」というミッションが課せられたことだった。サイト制作だけではまず無理だ、と思った。SEO対策も当然準備はしていたが、SEO対策をすることで売上目標にどこまで貢献できるか、事前予測は難しかった。

誘導シミュレーション

誘導プランのシミュレーションが必要だ。毎月何人買えば目標に到達するか。そのために、何人集めねばならないか試算した。まず、年間売上目標を12ヵ月で分割して、平均月売上目標を出した。そして、1人当たりの平均客単価を想定して、1ヵ月あたり何人が購入すれば目標額へ達するかシミュレーションしてみた。

当時ある調べでは、米国のECサイトのコンバージョンレイトは平均4%と言われていた。そこで、コンバージョンレイト4%を参考に、来訪者数100人のうち4人が買う計算で必要最低ユニークユーザー数を出してみた。そのユニークユーザー数を集めるために、どのくらいの人々を誘導しなければならないかあわせてインプレッション数を試算してネット広告規模を予測してみた。いくつかのパターンで試算してみて、どんなに甘く計算してみても、ある程度大きな規模の広告誘導が必要であることが明らかとなった。

サイトを作るだけではダメだ。誘導しなければ必ず失敗する。そう確信した。このことをすぐさまクライアントへ伝え、年間目標への到達がこのままでは厳しいことを伝えた。ところが、予算のほとんどが初期制作に費やさなくてはならなかったため、広告誘導媒体の追加は無いままサイト公開に至ることとなった。
購入見込客数を出すには、ユニーク数×コンバージョンレイトで試算できる。ユニーク数とコンバージョンレイトは、サイト公開前であれば想定値となるが、サイト公開後であればそこに実数値を当てはめていけばいい。また、購入客数×平均客単価で売上予測が見えてくる
購入見込客数を出すには、ユニーク数×コンバージョンレイトで試算できる。ユニーク数とコンバージョンレイトは、サイト公開前であれば想定値となるが、サイト公開後であればそこに実数値を当てはめていけばいい。また、購入客数×平均客単価で売上予測が見えてくる

ブームがモノを売る

案の定、目標売上にはまったく手が届かない滑り出しとなっていた。売れない。それ以前に、人が来ないのだから無理もない。もはや目標到達は夢の夢。絶望的と思われていた数ヵ月後、奇跡が起きた。ヨガブームである。ヨガマットが売れて、バランスボールが飛ぶように売れたのだ。予想打にしない出来事だった。そのほか、いくつかの現象が重なって、初年度の目標額を上回る好結果となった。

SEOなんて関係ない。欲しいと思ったものを手に入れるために、どうにかしてでもそれを見つけて買っていくのだ。なんてことだ! 到底事前には予測できない結果だった。

確かに自分だって、強烈に欲しいものがあれば、それがどこにあるかわかりにくい店であってもどうにか見つけ出して買ってしまうことがある。それだけに、これまでのWebマーケティングがばかばかしくなってしまった。

ムーブメントは、マーケティングでは想像し得ないパワーがある。SEOやユーザビリティといった従来のWebマーケティングの概念を吹き飛ばしてしまうこともある

ムーブメントは、マーケティングでは想像し得ないパワーがある。SEOやユーザビリティといった従来のWebマーケティングの概念を吹き飛ばしてしまうこともある

バイラル成功の秘訣

サイトをつくるだけではダメ。誘導しなくてはダメ。そんな今まで信じてきた概念が、頭の中で大きく崩れた瞬間だった。同時に、クチコミのパワーを知った瞬間であり、ムーブメントのすごさを知った瞬間である。

あとで振り返ってみて、ムーブメントが起きるまえにはなんとなくだが予兆があること。どこかで熱く盛り上がっている気配があること。たとえば、書店にヨガ関連本が並びだすとか。ヨガ教室が増えだすとか。テレビ番組にも登場し始めるとか。知り合いがやたらと「ヨガだよ、ヨガ」と言い出すとか。ある過程を経て爆発する。

すると、その後は計算できない広がりと加速度をもって一気に広がるわけだ。これこそ、バイラル現象だ! と感じた瞬間である。自社だけの試みで、仕掛けを考えるのは違う。世の中の流れを利用してうまく乗ることが、バイラル成功の秘訣かもしれない。
ムーブメントには予兆がある。そこにクチコミが重なるとバイラル現象が起こる。火がついた後は、計算できない広がりと加速度をもって人から人へと感染するように広がりを見せる
ムーブメントには予兆がある。そこにクチコミが重なるとバイラル現象が起こる。火がついた後は、計算できない広がりと加速度をもって人から人へと感染するように広がりを見せる

次回につづく
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