オフィス潜入リポート「こんなオフィスで働きたい!」
第10回 コクヨ株式会社(KOKUYO Co.,Ltd.) 前編
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フリーアドレスなのはもちろん、エコに対する取り組みもとっくに定着ずみ、おまけにオフィスにしてショールームでもある。そんなコクヨの実験オフィスが「エコライブオフィス品川」。単なる省エネ化やコスト削減ではなく、もっとクリエイティブで、もっと生産的なエコを体現するこの次世代空間。オフィスに関することは十八番であるコクヨならではのユニーク空間を、コクヨファニチャー株式会社 MD本部ブランドコミュニケーション部 広報担当の河村美紀さんに案内していただきました。
●コクヨ株式会社
1905年に和帳の表紙をつくる会社として創業。以後、文具やオフィス家具、事務機器をはじめ、人々が働く場所に必要なあらゆる商品を、製造・販売する会社へ。現在のブランドメッセージは、オフィスに創造性、効率性、快適性を提供していく姿勢を表現した「ひらめき・はかどり・ここちよさ」。代表的な商品には、1975年から2011年の36年間で、累計約24億冊を出荷した「キャンパスノート」などがある。
外光がたくさん入ってくる共有スペース、通称「スタジオ」。ミーティング、イベント、セミナー、研修などに使用される |
折りたたむことができる屏風のようなホワイトボード。たたんでおけば邪魔にならないし、パーティションのように使うことも |
座布団、毛布、手袋にサングラス。これらはすべて、青空のもとに設けられた執務スペース「ガーデン」で用いられるもの。自然との共生にはこうした工夫も楽しみのうち。同じく、ノートPCで使用できるバッテリーもここで充電中。といってもコンセントからではなく、空から注ぐ太陽光こそがそのエネルギーの源(太陽電池) |
「ガーデン」にはさまざまなデスクとイスを用意。場所が変わるだけでなく、イスの高さが変わればそれだけで気分は変わる。すると発想だってガラッと変わる |
囲われ感のある家具に座れば、集中度はグンとアップ
オフィスから自然に直通。というわけで楽しく家庭菜園。レタス、パセリ、白菜、大根などの栽培を通じて社内コミュニケーションも活性化。社員の間には、ガーデンに足繁く通う、といった楽しみが生まれるとか |
「エコピヨ」とは個々の社員がエコに対して取り組んだことを数値化するシステム。たとえばエレベーターを使わず階段の上り下りをしたり、ガーデンで働いたり、イベントに参加したときなどに、個々に与えられたカードを「エコピヨ」にかざすとポイントがたまる。こうして努力を「見える化」することで、エコへの取り組みを後押ししている |
通路に貼られた「エコ妖怪コレクション」。エコの精神をおろそかにすると社員の背後にそっと登場して制裁を加えるとか。絵とメッセージは社員の手によるもの |
スイッチをオンにすると冷風が浴びられるクールダウンピット。階段を汗して上った人へのご褒美に。もちろん利用は夏場だけ |
執務エリアのひとつ「オフィス」。写真のスペースはフリーアドレス制。ここ品川勤務の社員だけでなく霞ヶ関勤務の社員もテンポラリーに利用する。さまざまな種類のデスク、イスが用意され、気分にあわせて仕事場をセレクトできる |
フリーアドレスのオフィスには欠かせない個人用のロッカー。資料や荷物をここに収納しておけば、特定のデスクをもので占有せずにすむ。ナンバーを合わせてトビラをあける仕組みだが、トビラを閉じるとナンバーは自動で0000になりセキュリティーも万全 |
書類を印刷する際は、PCから「印刷」を実行するだけでなく、プリンタに付けられたカードリーダーに個々の社員に与えられたカードをタッチ。そうすることで印刷したきり忘れてしまうといった無駄をゼロに |
本格的にエコに取り組む、ショールーム兼オフィス
──「エコライブオフィス品川」のはじまりについて教えてください。
河村:まず、2008年にはじまったエコライブオフィス品川の源流として、コクヨには「ライブオフィス」があります。これは社員がクリエイティブなワークスタイルを実践する先進的なオフィスで、自ら利用しながら使い勝手を確かめ、さらに改良を加えながら生産性を高めている様子をお客様にご覧いただくという、実験的なスタイルを特徴としていました。そういった場があったところに、本格的なエコへの取り組みを打ち出したのが、2008年時点のエコライブオフィス品川です。
──エコに対する取り組みについて具体的に教えていただけますか。
河村:多岐に渡っていますので、かいつまんでお話しします。
まず、ここには屋外の執務スペース「ガーデン」があります。文字通り、四季を感じられる庭のような場所です。この場所を通じて社員のエコに対する意識は確実に育まれます。気候のいいシーズンを中心として、多くの社員がこのガーデンで気分転換をはかりながら仕事をしています。
消費電力をセーブできるLED照明を張り巡らせた天井には、人感センサーが組み込まれており、社員の在/不在を検知することで、消費電力を自動的に抑制しています。空調は家庭用エアコンとは違って、一回運転させたら頻繁に止めることはできませんが、センサーが不在を感知したら、天井裏にはられている送風ファンはストップします。
ほかに大きなものとしてはエコ支援活動システム「エコピヨ」です。ここに在所する人たちは、みんなこのシステムに登録しており、エコにつながる行動をとると、個々のセキュリティカードを通じてポイントが貯まる仕組みです。たとえば室内ではなくガーデンで打合せをする、エレベーターを使わず階段で移動する、といった際に、その場に設置されたカードリーダーにカードをかざすとポイントは加算されます。
それ以外だと、ビルに設置したソーラー発電機からの給電です。2010年からオフィスの一部電力はこれでまかなっています。
──このオフィスになって社員の何が一番変化しましたか。
河村:たくさんありますが、一番大きなことはエコに対する意識でしょう。実際のところ意識の改革がなされなくては、エコに対する取り組みは成功しません。2008年の時点と比べるとCO2排出量は1年でマイナス44パーセント、さらに翌年にはマイナス46パーセントを達成し、当初の目標をクリアしています。
エコについてひとつ付け加えると、エコには「楽しみながら」という仕掛けがないと続きません。トップからのお仕着せだと限界があります。コクヨではそれをいろんな形で楽しみながら採り入れていけたからこそ、当たり前の習慣として定着させられたのだと思います。
(取材・文:立古和智 写真:飯田昌之)
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