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HTML5が与えるインパクト(前編) - Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

2024.4.18 THU

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Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策

Webデザイン 1-01
HTML5が与えるインパクト(前編)

HTML5の存在感がいよいよ増してきた。HTML5はWebブラウザを表示する言語という枠を超えて、Webアプリケーションという広大な環境への最適なプラットフォームとして急速に認知され、デジタルコンテンツを表現するツールとして無視できない存在へと大きく前進している。

制作・文/芳賀淳志(Suika Cube Inc.)



HTML5が高評価である理由

HTML5が多くの制作者や開発者に受け入れられた大きな理由は、オープンWebテクノロジーというWebブラウザに限定しない開発環境を提供するプラットフォームとして、現在のところ最も柔軟性が高く拡張性があり、なおかつ制作が容易という点にあるだろう。

特に既存のWebテクノロジーが高度で複雑化していくなか、Webデザイナーでもある程度の知識があれば大概の機能を盛り込める制作の容易さは、現場のストレスを大幅に減じたと同時に、専門化しつつあったデジタルコンテンツに対するクリエイターのアーティスティックなモチベーションを取り戻してくれたと言っていいかもしれない【01】。

これらHTML5のもつ利便性は成り立ちそのものに理由がある。

ここでは、そもそもHTML5とはなんなのか、という点を少々おさらいしてから、HTML5の動向を見ていくことにしよう。

01
【01】HTML5の新機能であるcanvasで制作されたArt of Touch。こういった絵が直感的に描けるWebアプリケーションが数多く公開されている


HTML5の誕生

HTML5はApple、Mozilla Foundation、Opera Softwareが2004年に立ち上げたワーキング・グループWHATWG(Web HypertextApplication Technology WorkingGroup)の策定が母体となっている。

同団体設立以前は、ブラウザシェアを圧倒するMicrosoft Internet Explorer(以下IE)が独自路線を走り、Web技術の標準化をすすめる団体であるW3CがHTML4からXMLベースのXHTMLへシフトする一方、クロスブラウザ問題などで制作現場が疲弊していき、恩恵にあずかるべきユーザーメリットは逆にまったく進歩しないという状況が続いていた。

当時のWebブラウザにおける非主流派企業によって設立されたWHATWGは、そのような問題を解決するために、将来にわたって互換性を確保し開発環境の効率化を図るべく、まず乱立するAPIに対しWeb標準を示すことでWebアプリケーションの再定義を行った。それとあわせて不要なタグや各ブラウザベンダーが独自に拡張したマークアップに対しても整理の手を入れ、Web全般における策定を抜本的に見なおす作業を行った。

W3Cは、こういったWHATWGの動きに呼応する形で2007年にHTML4の後継バージョンとして正式に仕様を決定した。つまりW3CとWHATWGの共同作業から誕生したのがHTML5ということになる【02】。

そもそもHTMLの策定自体は制作側の問題であり、その技術を効率的かつ連携して有機的に使用することで結果としてユーザーメリットが発生するものであった。単にユーザーメリットだけを考えれば、すでにJavaScriptによるアプリケーションの普及やAdobe社のFlashなどにより、インタラクティブなユーザー環境はある程度担保されていた。

たとえば、最大シェアであるIEを使用しIE専用にハックされたHTMLを読んでいる限りにおいては、一般的なネットユーザーが直接デメリットを痛感する場面は少なかった。

しかしWeb標準化が行われないまま求められる機能が高度化したためクロスブラウザ問題は更に複雑となり、制作現場は手間がかさみ、クライアントにとっては制作コストと経済的メリットが釣り合わず、ユーザーは一向にメリットを受け取れないという不毛な状況が続くことになる。

これらを解消するために生まれたのが、オープンWebテクノロジーのプラットフォームとして十分に機能する魅力的なHTML5である。

【02】Apple社のサイトのなかにあるHTML5のショーケース。HTML5によるインタラクティブで美しいページをいくつも体験できる
【02】Apple社のサイトのなかにあるHTML5のショーケース。HTML5によるインタラクティブで美しいページをいくつも体験できる


HTML5によるWeb業界の再編

当初はそれほど目立った動きのなかったHTML5周辺だが、2009年に大きな変化が訪れた。米Google社が一般的なプラグインモジュールを使用せずJavaScriptだけで動く魅力的なWebアプリケーションをデモンストレーションし、積極的にHTML5にコミットしていく発表を行ったのだ【03】。

米Google社は自社ブラウザのChromeをいち早くHTML5対応とし、WHATWG陣営も次々とHTML5の新機能を実装していった。その結果、2010年末までにIEとその他のブラウザは比較できないほど機能的な差を広げた。その後、PCベースの技術として基板を固めつつあったHTML5は、スマートフォンやタブレット端末の登場により、さらに磐石な体制を築きあげることとなる。

AppleのiOSとGoogleのAndroidという二大モバイル・プラットフォームはHTML5対応のモダンブラウザを載せており、これまでのモバイル環境を一新する柔軟なWeb表現が可能となっている。特にiOSはFlashを代表とする各プラグインを非対応とすることで、HTML5への徹底した移行を宣言していると言っていいだろう。


IEのHTML5対応

Web業界がプラットフォームをWindows環境からGoogleやモバイル機器が牽引する環境へと切り替える中、最大派閥であるIEもついに動いた。2010年中にHTML5の実装を公表していたMicrosoftは2011年に入ってついにHTML5に対応した最新ブラウザIE9をリリースした。

今後I E を含む各ブラウザベンダーが積極的にHTML5への対応度を高め、JavaScriptを軸にしたWebアプリケーションの標準化を進めることによって、これまで長年の問題だったクロスブラウザ問題やそれに付随する多くの悩ましいトラブルが一気に解消し、合理的に整理された開発環境が実現することを期待したい。

【03】Google I/O 2009は近年のWeb業界においてエポックメイキングなイベントだった。米Microsoftの元社員であるバイス・プレジデントのビック・グンドトラ氏は初日の基調講演で「決してWebをあなどってはいけない」(Never underestimate the Web)と発言し、来るべき新しいWeb環境を世界に示した
【03】Google I/O 2009は近年のWeb業界においてエポックメイキングなイベントだった。米Microsoftの元社員であるバイス・プレジデントのビック・グンドトラ氏は初日の基調講演で「決してWebをあなどってはいけない」(Never underestimate the Web)と発言し、来るべき新しいWeb環境を世界に示した


Flashのモバイルからの撤退

2011年に入って、スマートフォンの普及もあり、一気に浸透度を高めたHTML5だが、ここに来てさらに大きなニュースが相次いでいる。業界全体を賑わせた話題としては、2011年11月10日に米Adobe社がモバイル端末向けFlashPlayerの開発を終了して、HTML5に注力すると発表したことが挙げられる。

ここで重要なのは"AndroidおよびBlackBerry PlayBook向けFlashPlayerの開発を終了"という部分だ。これは言い換えれば、モバイルプラットフォームでのWebコンテンツ作成および配信にはHTML5が最良の方法だ、と米Adobe社自身が認めたことになる。

この発表によりFlash技術のモバイル機器への展開はAIRによるネイティブアプリケーション作成に絞られることになった。今後モバイル機器によるブラウジング及びインタラクティブな動作を基盤としたWebアプリケーションはHTML5一択となり、開発環境がより合理化されることだろう。現在利用されているJavaScriptによるさまざまなWeb上の機能はモバイルプラットフォームにおいては最適かもしれない。だが、PCベースのブラウジングにおいては必ずしもそうとは言えない。クライアントベースではまだまだFlashへの依存度は高いだろうが、制作コストの軽減や世界中のベンダーによる開発速度の優位性により、PCでも脱Flashが早まりHTML5への移行が進んでいく可能性は高いと思われる【04】。

【04】Flashの早期排除を願うOccupy Flash。全世界のデスクトップPCへのインストール率95%を誇るFlash Playerだけに、オープンWebテクノロジーへのスムーズな移行が阻害されるおそれがあるという。Microsoftが積極的にIE6からのアップデートを促さなかったために多くの障害が現在でも残っていることを考えると、単なる杞憂では済ませられないかもしれない
【04】Flashの早期排除を願うOccupy Flash。全世界のデスクトップPCへのインストール率95%を誇るFlash Playerだけに、オープンWebテクノロジーへのスムーズな移行が阻害されるおそれがあるという。Microsoftが積極的にIE6からのアップデートを促さなかったために多くの障害が現在でも残っていることを考えると、単なる杞憂では済ませられないかもしれない

(後編に続く)


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【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。

※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。

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