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サイト構築&運用 5-01
CMSを導入するメリット(前編)
近年、簡単かつ効率よくWebサイトを構築できる手段として、大きな注目を集めているCMS。ここでは、CMSを導入することのメリットと、主なCMSの特徴などについて簡単に紹介していこう。
制作・文/星野邦敏(株式会社コミュニティコム)
CMSとは何か
CMSとは、コンテンツマネジメントシステム(Content Management System)の略で、Webサイトの文章や画像などのコンテンツを入力する管理画面を持ち、その管理画面からコンテンツの追加編集をすることで、Webサイトを運営する仕組みのことだ。CMSは、管理画面から入力したコンテンツを、サイトとして表示させるので、データベースを持ち、そのデータをプログラムで出力表示される仕組みが一般的だ。
このような仕組みは、2003年や2004年頃から徐々に導入が始まり、最近ではサーバーが高機能で安価となり、CMSの種類も増えて、それぞれのニーズに応じて導入できるほど豊富になってきたことから、CMSを導入してWebサイトを更新管理する流れは、一般的になってきている。
CMS導入の動向を毎月調べている海外のサイトによると【01】、現在の世界のトップ100万サイトにおけるCMS導入のシェアは、約3割(非導入=71.1%より)である。CMS導入のシェアが約3割と言うと少ないように感じるかもしれないが、これは既存サイトを含めた数字であり、既存サイトからのリニューアルや、新規サイトの構築などだけで集計したら、導入比率はもっと高いだろう。既存サイトを含めたCMS導入のシェア率の推移で見ても、この1年で5%もシェアが伸びており、現在も増加傾向だ。今後、Webサイトの制作にCMSを導入する事例は増えていくことだろう。
【01】Historical trends in the usage of content management systems(http://w3techs.com/technologies/history_overview/content_management/all)
CMSを導入するメリット
それでは、なぜWebサイトの制作にあたってCMSの導入が増えているのか、要因を探ってみよう。従来のWebサイトは、HTMLとCSSだけで作られることが一般的であった。しかしながら、それらのサイトは、特に運営について以下のようなデメリットがある。
(1)サイトの更新者がHTML等のWeb制作知識を理解している必要がある。
(2)複数人での更新の場合、最新版のファイルをその都度確認する必要がある。
(3)サイトデザインをリニューアルする際に、過去のコンテンツの移行に時間がかかる場合が多い。
(4)追加機能の実装を柔軟に行いづらい。
(5)更新の都度、制作業者に依頼するか、
社内の制作者に頼まなければならない。
これらは、Webサイトを運営する時には常について回る問題だった。だが、CMSを使ってWebサイトを運営すれば、これらのデメリットを解消することが可能になる。言い換えるのなら、サイト更新者はWeb制作についての専門知識がなくても更新することができ、複数人で運営することも簡単になる。また、クライアントの要望や流行などに合わせて、デザインや機能を柔軟に変更することが可能になる。
さらに、CMSを導入すれば、サイトの更新にあたって、その都度に業者に依頼する必要がなくなるため、サイト更新の工数を減らすことが可能となる。そのため、サイト発注者はWeb制作の価格を比較的安価に、かつ高機能なWebサイトを発注しやすくなり、サイト制作業者としてもCMSの設置、制作、管理に集中できるという、受注者と制作者の両者にメリットがある。
これらのことをまとめるとCMS導入のメリットは次の通りになる。
(1)Web制作者とサイト更新者の分業が可能となる。制作者はWeb制作に集中でき、サイト更新者はコンテンツ(文章や画像など)の更新に集中できる。
(2)複数人でコンテンツの更新ができ、かつ、それぞれの更新者の権限を分けることができる。コンテンツ入力者とサイト公開承認者といったワークフローの構築も可能。
(3)コンテンツはデータベースに入るので、サイトデザインとは切り離されており、Webサイトのリニューアルも比較的簡単に行うことができる。
(4)多くのCMSには、コアファイルとは別に、プラグインやモジュールの仕組みが用意されているので、追加機能を実装しやすい。
(5)サイト更新者が自由にページを追加編集できるため、更新の都度、Web制作業者が依頼する必要がなくなり、更新の際の工数を大幅に減らすことができる。
CMSを導入するデメリット
一方で、CMS導入にはデメリットもある。多くのCMSは、PHP・Ruby・Perl・Python などといったプログラムと、MySQL・PostgreSQL・SQLiteなどといったデータベースで成り立っているため、各CMSの仕様に応じて、それらが動くサーバー環境が必要となる。また、データベースから読み込む形式の動的生成をするCMSにおいては、サーバー負荷がかかりやすくなるため、アクセス数の多いサイトでは出力表示の高速化についても検討する必要があるだろう。さらに、当然ながら、各CMSの導入には、そのCMSの特徴やカスタマイズ方法について理解しておく必要がある。そして、その場合、技術や知識を身に付けるための時間とコストがかかってしまう。これらが、主なデメリットとして挙げられる。デメリットの解消
CMSによるWebサイト制作は、HTMLやCSSだけでWebサイトを作る場合と大きく異なり、当然それによるデメリットもある。しかし、最近のサーバー環境では、共有レンタルサーバーでもプログラムやデータベースは動く環境にあり、またサーバー負荷はキャシュなどの仕組みで対策できるため、CMS導入における環境は整ってきている。知識や技術を身に付けるためのコストについては、多くのCMSでは専門の書籍が出版されており、導入事例の多いCMSではユーザーコミュニティや開発元のセミナーなどがあるので、これらに積極的に参加すれば、それほど大きなものにはならない。これらの方法によって、デメリットは解消することができるだろう。主なCMSの特徴(1)
Webサイトの新規制作だけでなく、リニューアル案件においても、CMS導入は現在増加傾向にある。CMSには様々なものがあり、用途と特徴に合わせていろいろ探してみるといいだろう。数多くのCMSの中から、導入事例の多いCMSや特徴のあるCMSを、いくつか紹介していくので、ぜひ参考にして欲しい。
WordPress
現在、世界で最もCMS導入シェアが高いのが、「WordPress」【02】だ。2011年時点で、そのシェアは、CMS全体の過半数以上を占めており、CMS導入数の市場規模だけを見たら圧倒的な存在である。日本国内においても利用者が大変多く、また日本語の情報も豊富なので、初めてでも非常に扱いやすいCMSと言える。最近では、中小企業のコーポレートサイトや個人ブログでの導入事例だけでなく、日本の大企業のコーポレートサイトやニュースサイトでの導入事例も増えてきている。更に、Webの制作現場においても、WordPressの使用を指定する案件も増えてきている。
WordPressはPHPとMySQLで構成されている。また、GPLライセンスのオープンソースCMSで、ラインセンス費用がかからない。
日本でのWordPressの勉強会やカンファレンスも多い。数十人規模の会合であれば、各地域で毎月1回くらいの頻度で開催されている。更に、年に数回は数百人規模の大きなイベントも開かれている。
最近でいうと、2011年11月27日に、「WordCamp Tokyo 2011」が東京の楽天タワー2号館で行われ、800人以上の来場、懇親会も300人以上の参加という規模であった。1つのCMSについてのイベントで、これほど人が集まり、開催回数の多いCMSは他にはあまり例を見ない特徴だろう。
なお、WordPressについては、この後のページでも、より詳しく解説する。
【02】WordPress日本語サイト(http://ja.wordpress.org/)
(中編に続く)
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【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。
※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。