第6回 Webマスターの仕事と取り巻く人々 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第6回
Webマスターの仕事と取り巻く人々


企業がWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわる。その中で、企業側のネット運営者をWebマスターという。ここではWebマスターの立場からWebディレクションに焦点を当てて、周辺人物とのかかわり方や仕事の進め方のコツについて解説していこう。


Webマスターという仕事

これまでWebディレクターが頭に入れておくべき、基本的なワークフローを説明してきた。これからは、制作側とはある意味逆の立場にいる企業側のWeb担当者、Webマスターの立場から、周辺人物とのかかわり方や考え方を中心にどのようにディレクションを進めていけばいいかを説明していこう。

ここでいうWebマスターとは、企業のWeb部門のトップのことを指す。一昔前に比べて企業のWebに対する重要度は上がってきたものの、まだある部署がWeb部隊を兼務している企業が数多くある(むしろ、そちらのほうが多いかもしれない)。あえて、Webマスターを企業Web部門のトップと位置づけたのは、これからますますWebの重要性が認識され、Web部門のトップが非常に重要な役割を果たすと考えているからである。

企業のWebマスターは、かかわる人物は多いが孤独である。そして、多種多様な人物とかかわるため、必要とされる対応もさまざまで非常にたいへんな業務である。インターネットが一般的になるころから職務を行っている担当者はまだいいが、これまでまったく異なる業務に就き、これからWeb担当者、Webマスターになるという人にとっては、外国で業務をしろ、と言われるのと変わらないかもしれない。

Webマスターとその仲間たち

企業のWebマスターを取り巻く関係者は多く、多種多様である。ざっと挙げただけでも以下のような関係者がいるだろう。

・エンドユーザー(顧客)
・広告代理店
・Web制作会社
・社内の各事業部
・システムベンダー
・その他の取引先企業


ただでさえ、実績管理や社内の体制などで多忙の身であるのに、外部にも関係者が複数いて、すべてを把握しておかなければならない【1】。関係者すべてに対してWebマスター一人では対応しきれないというのが現実である。特に社内的には、横断部署であり複数の事業部と密接にかかわる部門であるために、その対応は外部業者には計り知れない難しさがある。各関係者については後述する記事を参考にしてほしい。

【1】Webマスター関係者相関図
【1】Webマスター関係者相関図


Webマスターのおもな業務

Webマスターの仕事は多種多様である。目標設定から始まり、具体策の立案、組織づくり、施策の実行、安定した運用など非常に多くのことを考えなければならない。

それらをわかりやすく大きなカテゴリで分けると、「売り上げアップの施策」「安定した運用業務」に絞られるだろう。企業によってはWebサイトがそのまま売り上げに直結しない場合もあるが、閲覧者数の増大やブランドの構築など、ミッションは設定されているべきである。大ざっぱに言うと「攻め」と「守り」ということだ【2】。

【2】Webマスターの業務俯瞰図
【2】Webマスターの業務俯瞰図


「攻め」の業務

Webを用いて何をなし得たいのか、そこから戦略を練らなければならない。Webは売り上げを向上する、アクセスを伸ばす、イメージを変える、などさまざまなことができる。目標を設定し、それに向かってやるべきことを考える必要がある。極端な話、自社企業におけるWebの役割を考えた場合、あまり重要ではなく、単に情報を発信しておけばいい、という決断もあり得る。必要であれば、他企業との交渉や人材の確保なども行わなければならない場合もあるだろう。

Webの業務に目を向けてみると、Webサイトの構築、プロモーションの検討と実行(アフィリエイト広告、リスティング広告、SEO対策、クロスメディア戦略など)、アクセスログ分析などが挙げられる。特に数年前からは大幅に進化し、Webサイトがアプリケーション化している。できることが増えていく一方で考えなければいけないことが山のようにある。しっかりとWebの特性を知り、現実的にできることを考えていく必要がある。

「守り」の業務

Webビジネスは当然立ち上げて終了ではない。それを維持するために運用を行わなければならない。Webサイト(サイト、システムなど)の運用保守、バックヤードの運用などだ。安定したサービスを提供して当たり前なのが運用の世界。もし、サイトにセキュリティ上の問題があったり、サービスに不備があったりするとビジネス自体が揺らぐことにもなりかねない。体制 を構築する際は運用部隊を独自に立ててそれぞれの役割を明確にしておくことが必要である。

また、お客さまの声やアクセスログ分析を行いサービスの向上、運用の効率化に努めることも忘れてはならない。

その他の業務

Webマスターはつねに先を見て新しい方向性を打ち出していかなければならない。ふだんの業務に加えて、日々行っていなければならないのが、業界の動向、Web新技術の研究などである。筆者の場合、本を読む、Blogをチェックする、人(特に異業種の人)に会う、新しいサービスをチェックするということを行い、新しい知識を吸収するようにしている【3】。

【3】オススメの本とBlog
【3】オススメの本とBlog


Webマスターを取り巻く人々

先に挙げたWebマスターを取り巻く各人物について説明しよう。プロジェクトを円滑に回すための方法論は次回以降に詳しく説明するが、それぞれの役割をおもに把握してほしい。

エンドユーザー(顧客)

まちがいなく、Webマスターがいちばん向いていなければならない方向である。エンドユーザー(顧客)のことを考えずにビジネスの展開はあり得ず、Webサイトの構築もあり得ない。実は今回挙げる登場人物の中でいちばんシビアであり、正直な意見をくれるのがこの立場の人たちである。彼らの意見は、直接話すことはなくとも、アクセスログやアンケートなどから読み取れることが多い。彼らが最大のヒントを与えてくれると考えて、現状を真摯に受け止め、それを次回以降の施策に生かせる体制づくりができるかが重要である。そして、現場一人ひとりがエンドユーザー(顧客)のことを考えて動ける環境づくりをしていかなければいけない。

広告代理店

Webマスターの場合、かかわる広告代理店というと大きくふたつに分けられる。電通や博報堂などといった、いわゆる広告代理店と、サイバーエージェントやオプトなどネット広告を専門に扱うネット系広告代理店である。

それぞれを使い分ける必要があるが、どちらかというとネット系代理店には運用部分で動いてもらい、リアル系広告代理店には攻めの戦略の部分で動いてもらう、という形ですみ分けるのが効率的かもしれない。というのは、ネットのみでのプロモーション活動は、アフィリエイト広告やリスティング広告など日々の地道な活動が不可欠であり、キャンペーンや販促活動を行おうと考えると、やはりこれまでの広告代理店にお願いするのが無難だからである。

Web制作会社

WebマスターはWeb制作会社とも密接にかかわってくる。Webサイトの構築、運用がおもな業務になる。同時にプロモーションを引き受ける会社も多いが、その制作会社の力量を見極めて発注するようにしよう。Web制作会社にも当然のことながら規模の大小があり、コスト的にもばらつきが見られる。会社のスキルはもちろんのこと、結局は担当者の力量に頼る部分が大きい。制作会社の規模や実績にとらわれず、実際に現場に出る担当者と顔を合わせて、信頼できる担当者のいる制作会社へ発注するようにしたい。

社内の各事業部

Webマスターを取り巻く関係者でいちばん厄介なのが社内である。社内に手を焼いているWebマスターは多いだろう。根本的な解決は、Webマスターに権限を大きくもたせることであるが、実際はそこまでWebへの関心度もない。

特に「Webは社内でも横断的役割をなし、これから伸びるといわれているメディア・チャネルである」という社内の認識と、「実際はそんなに甘い世界ではなく、Webの世界で勝ち残るのは相当難しいことである」というWeb担当者の認識にギャップがあるのも問題だ。そういった意味では、Webマスターのひとつの仕事として、社内啓蒙というのがあるのかもしれない。いかに社内にWebの現実を知ってもらうかということだ。

システムベンダー

Webを語るうえで欠かせないのがシステムである。新しく配属されたWeb担当者の多くがシステムに大きな壁を感じるのではないだろうか。

しかし、そんなに悲観的になる必要はない。システムを知りすぎていては顧客を見られなくなる。逆に知らずに好きなことを言えばいいのである。技術的な問題はシステムベンダーなどのパートナー企業に聞けばよい。 こちらも、Web制作会社と同じで結局は担当者がどこまで一緒に汗をかいてくれるかである。会社のネームバリューにとらわれることなく、優れた担当者を探すことをお勧めしたい。

また、システム的な難しい話はよくわからず、どうやってパートナー企業を探せばいいかわからない、という場合もあるだろう。そういった場合は先に信頼できるWeb制作会社を探し、その中でやってもらう、そこに紹介してもらうなどの方法を取ることで窓口が一元化でき、作業効率も上がる。


すべてに言えることであるが、外部業者と付き合うときは、ある程度行いたいことを自分たちでまとめ、目標設定をしっかりとした状態で発注するようにしなければ、結局トンチンカンな提案を受けることになり、プロジェクトがスムーズに進まなくなるケースがある。自分たちの業務は自分たちで責任をもって遂行しなければならない、という意識をもう一度頭に入れて、業務に当たっていただきたい。


本記事は『Web STRATEGY』2006年11-12 vol.6からの転載です
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