デザイナーの有馬トモユキさんに聞いた
新しいイラストシーンを作ったイラストレーターたち
●解説:有馬トモユキ
[ありま・ともゆき]デザイナー。広告制作プロダクションに所属する傍ら、TATSDESIGN名義でグラフィックデザインを中心に多数のデザインを展開。クリエイティブグループGEOGRAPHICディレクター/朗文堂・新宿私塾講師。 url.www.tatsdesign.com/ |
大槍葦人氏のブログサイト 「少女騎士団と大槍葦人のブログ。」 |
いまの新たなイラストレーションのシーンを語るうえで、パイオニアといえる革新性を持ったイラストレーターたちがいる。多くのフォロワーを生み出し、そして今も最先端でい続ける。ここでは自分が考えるパイオニアたちを紹介し、その魅力について考えてみたい。まず最初に挙げたいのは大槍葦人氏だ。スレンダーで、胴長で、胸が小さい女の子を描いた。それは「ロリスレンダー」とも形容できる新しいスタイル |
だった。ファッションやその周辺のディテールの細かさも含めて、クリエイティブの水準を一気に押し上げた人だと思う。
また、そのキャリアの初期に「豪血寺一族」(1993年)というゲームのキャラクターイラストを担当した 村田蓮爾氏も「女の子の描き方」を変えた。顔はデフォルメされているのだが、ほかは肉感的でリアル、という女の子。現実にいても不思議でないリアリティがあり、しかも新しい提案に満ちている。 |
村田蓮爾氏の公式サイト「-PSEWEB-」 |
深崎暮人氏の公式サイト「Cradle」 |
次に、深崎暮人氏も挙げておきたい。時代が求めるものに対して忠実であり、それをきちんと咀嚼して形にする。エロ絵のポージング、リアリティのある服装もそう。それらは絵以外のエンターテイ ンメントを研究してのこと。結果、誰が見てもこういったイラスト表現として普遍的に「かわいい」といえるものになっている。そういった意味においてミニマリスト的な存在と言えよう。 |
KEI氏は、あの「初音ミク」のキャラクターをデザインした。初音ミクは実に「再現性」の高いキャラクターだ。ツインテールの色が特徴的で、面積も大きいため、たとえ背景を描かなくても絵として成立する。また、このツインテールを描けば、何を着ていても、画力に関わらずともミクに見える。この非常にボーカロイド的なキャラクターをデザインした彼は、まさに時代の申し子と言えるだろう。 |
KEI氏のサイト「KEI画廊」 |
redjuice氏のWebサイト「redjuicegraphics」 |
redjuice氏は、時に詳細な世界観設定まで考えて絵を描くという点で、まるでシド・ミードのようだ。ヒロインのフィギュア製作では、彼自身の3Dデータが生かされていることもある。このようにキャラだけでなくそこに横たわる背景や世界観までトータルでデザインできる彼は次世代型のイラストレーターといえる。こういったイラストレーション・シーンの源流に、マンガ『攻殻機動 |
隊』の士郎正宗氏、『電影少女』の 桂正和氏、『エヴァンゲリオン』のキャラクターデザインを行った貞本義行氏たちを見ることもできるのではないか。新たな視点から現在のイラストの動向を観察すると、またいろいろなものが見えてくるはずだ。(談)
本記事は『MdN』2013年11月号(vol.235)からの転載です。
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