サカナクション ビジュアル・アーカイヴス 2008-2014 |
■作品に深みを持たせる時代設定 ―― その派手な衣装とメイクに負けず劣らず、富士山のインパクトも絶大でした。 | |
ロケ地は、いろいろと検討しました。京浜工業地帯みたいな工場バックもギャップが合って面白いと思ったのですが、やはり富士山の方がパワフルなので。ただ、季節的に霧がかかりやすい時期だったので、富士山が出るか、出ないか、当日になってみなければ分からないリスクもあって。 | |
―― 富士山以前に、雨が降ったら、楽器もカメラも照明機材も置けないから、撮影自体できなくなりますよね。みなさんご多忙なので撮影予備日も取れない。 そうなんです。でも、どうしても、晴れて富士山がくっきり現れたときの破壊力を撮りたかったので敢行しました。当日はしっかりと晴れて本当に良かったです。 ―― その画に対して固定撮影で引きのカットから、カメラ本体を徐々に近づけていき寄りのカットまでを撮るという。一枚絵のかなり潔いカメラワークですね。 潔く、どーんと勝負(笑)。打ち合わせの際に、「サカナクションというバンドは、引きと寄りのカットがあって、アングルが変わる、ありきたりの演奏撮影では絶対にダメです」と言ったんです。ライブ映像ではなく、MVなので、インパクトも狙い、真っ正面から固定画面でどんどん寄っていく、思い切ったカメラワークにしています。 ―― 踊り子の登場も画の世界観に不思議な魅力を与えています。 実際の踊り子さんに来ていただきました。振り付けも、老舗の日本舞踊の先生が考えてくれたのですが、ちゃんと曲調や歌詞に同調しているんですよね。あの踊りが、僕も一郎君も含めてみんな好きで。コンテンポラリーダンスに精通している振り付け師に頼むことも考えたのですが、今回は衣装もメイクも“本物”を意識する流れが全体の中であったので、日本舞踊も本物の先生にお願いしたんです。一郎君は現場で「普通のダンスのリズムの取り方ではない。変わっている」と言っていて、そのズレもまた良くて。 ―― どこか非現実的で、でも現実とののりしろも保っている、絶妙な空気感については? これは結果論なんですが、富士山と和装でごりごりに“和” にしたのに、草刈さんはシンセベースを弾いていたり、一郎君のマイクも現代的なアイテムだったりと、楽器たちが現実的な存在感を際立たせるのに一役買っています。マイクや楽器やアンプは、MVの場合、実際に音を出す必要がないので、画作りのための飾りの要素として置くか置かないかの判断が常々あるのですが、今回は置いて良かったですね。そこが「和」過ぎないバランスを取れた最大のポイントでした。 ―― 女子高生が双眼鏡を持って演奏を覗いている描写については? 後半になるにつれて、カメラワークを少しずらしていこうかなと考えていたのですが、だんだん寄っていく目線を第三者のものにするのはどうだろうと。演奏を双眼鏡越しに誰かが傍観している体にすれば、だんだん寄っていく意味付けにもなりますよね。そこで歌詞にある“女学生”という言葉をヒントに、女子高生に目撃させることにしたんです。いわゆるおさげの“女学生” にしなかったは、現代劇にすると決めていたから。和の世界観なんだけれども、和過ぎず、古過ぎず、昭和にもなり過ぎない演出に貢献しているのが、楽器や女子高生、それに双眼鏡といったアイテムなんです。 |
本記事は『MdN』2014年9月号(vol.245)の特集「サカナクション ビジュアル・アーカイヴス 2008-2014」からの転載です。
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