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第11回 企業ブログの運営と書き方、気をつけるべきポイント(1) - WEBライティングと文章編集の実践テクニック

2024.4.20 SAT

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WEBライティングと文章編集の実践テクニック


文=益子貴寛 (株)サイバーガーデン 代表取締役
Webプロデューサー/コンサルタント。(社)日本能率連盟登録資格「Web検定」プロジェクトメンバー。Webデザインに関する記事執筆、講義など多 数。『月刊web creators』(MdN)、ITpro(日経BP社)、Web担当者Forum(インプレスR&D)に連載をもつ。著書に『Web標準の教科 書 ─XHTMLとCSSでつくる“正しい”Webサイト』『伝わるWeb文章デザイン100の鉄則』(ともに秀和システム)。共著に『スタイルシート・デザ イン』(MdN)、『変革期のウェブ』(マイコミ新書)など。
url. www.cybergarden.net/


第11回
企業ブログの運営と書き方、気をつけるべきポイント(1)


個人だけでなく、企業にとっても当たり前になってきたブログ。企業ブログをどのように運用していくとよいか、どのようにユーザーに配慮してコピーや文章を書くとよいかを、今回と次回の2回にわたって解説しよう。


ターゲットユーザーはだれか?

企業サイトでのブログの活用事例が目立っている。たとえば、日産ティーダの公式ブログ「TIIDA BLOG」【1】やガチャピンのブログ「ガチャピン日記」【2】など、ユーザーからたくさんの支持を集めるブログもあれば、取り組みが評価されなかったり、いわゆる「祭り」や「炎上」のため閉鎖に追い込まれてしまったブログもある。

【1】TIIDA BLOG(blog.nissan.co.jp/TIIDA/)
【1】TIIDA BLOG(blog.nissan.co.jp/TIIDA/)

【2】ガチャピン日記(gachapin.fujitvkidsclub.jp/)
【2】ガチャピン日記(gachapin.fujitvkidsclub.jp/)


企業ブログ(より広い範囲を示す言葉である「ビジネスブログ」)の成否のカギはどこにあるのだろうか。それは、開設後の日々のオペレーションではなく「企画段階」にあると考えられる。ブログを設置することで「その企業がどのような効果を得たいのか」、さらに「ユーザーにどのような価値を提供できるのか」をきちんと考え、方向づけすることが大切だ。

では、企業にとってのブログ効果とはどのようなものだろうか。すぐに思いつくのは「広報」や「集客」、「成果獲得」といった測定可能な効果だ。また、それと同じぐらい重要視したいのは、「固定ユーザー(ファン)の獲得」「クチコミの発生」「信頼感・親近感の獲得」といった、ブランディング(ブランド価値の向上)につながる効果だ【3】。このような効果を生み出すには、企業がブログを通してユーザーにどのような価値を提供できたかが大きくかかわる。

【3】企業側のブログの目的
【3】企業側のブログの目的


では、ユーザーは企業ブログにどのようなことを期待しているのだろうか。「タイムリーな情報収集」「より詳しい情報の収集」「本音やシークレットトーク」「企業の実像を知りたい」といったことがまず挙げられる。これらはブランディングにも直結するブログの大きなメリットである。ただ、忘れてはならないのが、ひと昔前とは異なり、現在のユーザーは情報の受け手であると同時に送り手であるという点だ。

情報収集し、商品や製品を購入し、使って終わり、ではない。使った感想をブログに書き、他のユーザーとコメントやトラックバックを通じてダイナミックにつながり、潜在顧客に大きな影響を与える。消費者の購買行動が「AIDMA」(注意、関心、欲求、記憶、購入)から「AISAS」(注意、関心、検索、購入、情報共有)へ、さらに「AISEAS」(AISASに「比較検討」を意味する「Examination」が加わったもの)へと変わってきているのは、ブログを含めたCGM(消費者生成メディア)の発展、検索システムや
Webサービスの高度化が理由であることは、広く知られているところだ。

したがって、ユーザーの「表現欲を満たしたい」というニーズに対応する方法も考えたうえでブログを開設しなければ、思うような成果を上げることはできない【4】。これは、企業側にとっては「クチコミの発生」という目的に置き換えられる。しかも、このような欲求や目的を満たせたか(満たせているか)どうかは、ブログに直接寄せられたコメント数やトラック数だけでなく、検索結果数やソーシャルブックマーク数などでも測ることができる。

【4】ユーザー側のブログへの期待
【4】ユーザー側のブログへの期待


企画段階では、企業側のブログの目的とユーザー側の期待を「車の両輪」と考え、それぞれを測るための指標をきちんと定めること、さらに達成度を測るためにこれらの指標の目標値を決めるという方針決定が極めて重要だ(達成度の指標については、次回で詳しく説明する)。


「更新頻度」を基準にテーマを選ぶ

通常のWebサイト制作でターゲットユーザーを想定するのと同様、一般的な企業ブログでもターゲットユーザーを決めなければならない。しかし、企業自体、あるいは製品やサービスの顧客層がそのままターゲットユーザーになるため、さほど腐心しなくてもよい。それよりも、企業ブログで大切なのは「テーマ」を決めることである。

テーマの決め方は、何よりも「固定ユーザー(ファン)の獲得」「信頼感・親近感の獲得」を達成することを最優先に、絞り込むとよい。なぜなら、前述の「広報」という目的では、従来のプレスリリースとどう違うのかを明確にするのが難しいこと、「集客」や「成果獲得」といった目的は、「結果的にそうなる」ということであって、その前提として固定ユーザーが増えないとよい循環が生み出せないからである。「クチコミの発生」も、固定ユーザーの増加によって支えられるといってよいだろう。

固定ユーザーを増やすには、「できるかぎり魅力的なコンテンツにする」という、ひと言でいってしまえば簡単だが実行するのが難しいお題目を達成することが王道だ。しかし、「とにかく更新頻度を上げる」という、より身近な対策もある。更新頻度はブログの活況さを映し出す鏡であり、最低でも週3~4回、つまり2日に1回は新しいエントリーをポストしたい。となると、更新頻度を維持できるテーマを選ぶというのが、もっとも基本的な戦略となる。

たとえば「○○製品の開発ブログ」を立ち上げるとする。開発スタッフが4人いれば、持ち回りで週1回ずつ書けば、更新頻度をキープできることになる。ただ、日常にそうはおもしろい話が転がっているわけではなく、初めのうちは過去の蓄積を取り崩して更新頻度を守ることができても、半年後、1年後を見据えた場合、新たな試みや企画が必要になってくる。つまり、日々の更新作業と並行して企画を温めておくこと、たとえば開発スタッフだけでなく、ほかの社員、顧客や消費者を巻き込んで展開できないか考えておき、布石を打っておくことが大切だ。時折、社長など経営陣へのインタビュー、営業担当者へのインタビュー、顧客や消費者からの意見とスタッフからの回答などを掲載することで、コンテンツとしての彩りを加えることもできる【5】。

【5】ブログの更新頻度キープするためには、新たな試みや企画が必要になる
【5】ブログの更新頻度キープするためには、新たな試みや企画が必要になる


もう一点、更新頻度のキープについて重大な懸念材料がある。企業である以上、ブログ担当者の異動や転職は避けられない点だ。特にブログの立ち上げ時から尽力したキーパーソンが異動や転職するとなれば、更新頻度はおろかブログの存続自体も危うくなる恐れがある。したがって、企業ブログを立ち上げる際は、ひとりの人間が担当することを前提に進めるのではなく、必ず複数の人間が担当者となり、リーダーとサブリーダーを決めて運営するなど、引き継ぎ問題のリスクをできるかぎり最小化しておくことをお勧めする。


「用語表記ガイドライン」と「準備ブログ」

ブログは、文章表現が洗練され、スマートであればよいというメディアではない。時にスピードや勢い、リアリティのほうが大切であり、つまりは「同時性」が尊ばれる。しかし、用語表記についてはできるかぎり統一して、文章の品質を確保したほうがよいだろう。

ブログを含めてコンテンツは「中身が大事」とはいえ、形式面にも着目するユーザーはけっして少なくない。文章の品質確保には、単に誤記や表現の不備を避けるという意味だけでなく、このようなユーザーの満足度を上げるという積極的な意味合いもあるのだ。

統一すべき用語表記としては、年月日、時間、数字や単位、フリガナ、段落の切り方といった基本ルールから、社内用語が一般に通じるかどうかの配慮、括弧や記号の使い方、漢字や送り仮名、差別用語・放送禁止用語、機種依存文字などがある。これらをひと通りルール化、「用語表記ガイドライン」としてまとめておくとよい【6】。
【6】漢字や送り仮名のルール一覧の例
【6】漢字や送り仮名のルール一覧の例


ガイドラインをまとめるには、それなりの労力が必要だ。ブログ立ち上げ時のコアメンバーだけでは力不足だとすれば、これを機に勉強し直すか、他部署の助けを得よう。すでにブログ運営の実績がある部署や広報部など、社内の文章ライティングやコピーライティングの経験を活用できれば、立ち上げなど初動段階をスムーズに進めることができる。

また、「準備ブログ」を設置し、手慣らししておくのもお勧めしたい。たとえば社内だけにオープンにし、1カ月程度更新を続けてみるとよいだろう。他部署からいろんな意見が忌憚なく寄せられたり、企画の発想が得られるという効果も期待できる。社内に対する取り組みのアピールにもつながり、いろいろと助力が得やすくなるというメリットもある。
(次回につづく)


本記事は『Web STRATEGY』2007年9-10 vol.11からの転載です
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