印刷の豆知識
~意外と知らない規格や業界用語を解説~
【2】用紙の種類について
印刷するときの用紙の選択は印刷物の仕上がりに非常に影響を与える項目です。用紙が違えばインクの乗りや反射率が変わってきますので、それぞれの紙の性質や特長を押さえておきましょう。ここでは代表的な用紙を説明します。
■印刷用紙の分類
まずは印刷用紙の分類です。商業印刷でよく使用されている紙を表面加工の有無で分類すると、塗工紙と非塗工紙の2種類に分けることができます。塗工紙は紙の表面に塗料を塗布して平滑度や白色度、光沢などを高めた紙で、カタログやポスターなどによく使われています。一方、非塗工紙は表面加工をしていない紙で、新聞や書籍の本文ページなどによく使われています。
また、塗工紙は塗料の塗布量と、ベースになる紙の種類によって分類されます。塗布されている塗料の量によってアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙があり、さらに表面の光沢が強いグロス系と光沢を抑えたマット系(ダル系)といわれる種類があります。光沢を出した紙(グロス系)は白紙光沢、印刷光沢とも高く、写真中心とした印刷に適しています。光沢を抑えた紙(ダル・マット系)は文字中心の印刷に適しています。ダル系の紙は白紙光沢のみを抑え、マット系の紙は白紙、印刷の両光沢を抑えたしっとりとした風合いになります。
続いて、一般的な用紙の種類について紹介したいと思います。※各用紙の特徴は後日追記します
❚オフセット・オンデマンド印刷用・印刷用紙
紙種 | 詳細 | 紙の色 |
コート紙 | チラシ・フライヤーに一般的に使用される、微光沢のある紙 | 白 |
マットコート紙 | コート紙よりも光沢を抑えた紙 | 白 |
アート紙 | コート紙をより厚くした紙で、なめらかな光沢があり上質 | 白 |
アートポスト紙 | 両面に顔料を塗布した厚手の紙で、なめらかな光沢がある | 白 |
再生コートR100 | 古紙を100%使用した紙 | 白 |
再生マットコート紙 | 原料に古紙を配合して製造されたマットコート紙 | 白 |
ポリプロピレン製シート | クリアファイルに使用するフィルム | 透明 |
上質紙 | コピー紙に近い紙。コーティングされておらずザラザラしている | 白 |
色上質紙 | 色のついた上質紙。色や厚さの種類が多い | 多数 |
ケント紙 | コピー紙を厚くしたような艶のない紙 | 白 |
キャストコート紙 | 非常に強い光沢がある紙 | 白 |
ミラーケント紙 | 表面は超光沢で裏面はケント紙 | 白 |
ヴァンヌーボFナチュラル | 表面にざらつきがあり、高級感のある紙 | 淡いCream |
ヴァンヌーボVGナチュラル | 表面にざらつきがあり、高級感のある紙 | 白 |
アラベール | 表面にざらつきがあり、高級感のある紙 | 薄いCream |
Mr.B(ミスタービー) | 表面にざらつきがあり、高級感のある紙 | 白 |
マシュマロCoC | 家庭用プリンターで印字可能な紙 | 白 |
両ザラクラフト | 包装紙や紙袋に使われる木目調の紙 | 濃茶 |
オリンパスクラフト | 両ザラクラフトよりも薄い色の木目調の紙 | 薄茶 |
FGSニューユポ | 水や油に強い敗れにくい合成紙 | 白 |
レザック | 表面に革のような凹凸模様のある紙 | 多数 |
❚大判インクジェット対応・印刷用紙
紙種 | 詳細 | 紙の色 |
光沢紙 | 高精細な印字再現性の艶のある紙 | 白 |
厚手マット紙 | 高精細な印字再現性のコート紙の艶を抑えた紙 | 白 |
ユポ(合成)紙 | 水や油に強く、敗れにくい紙 | 白 |
厚手和紙 | 両面印刷可能なインクジェット用超厚口和紙 | 薄いCream |
コート紙は、上質紙や中性紙の表面にコート材を塗布して滑らかにした用紙。インクの乗りはよく、パンフレットやカタログ、ポスター、書籍、雑誌のカラーページなどに使用される。アート紙に比べると品質は落ちるものの、安価で画像の仕上りはきれい。インクジェットプリンタで写真印刷するのにも適している。また、光沢を抑えたマットコート紙というのもある。簡単に言えば、折込チラシなどのカラー印刷によく使用されている白くツルツルした光沢のある紙である。
・紙の色・・・白
・表面にコート剤を塗布し、滑らかにしたツヤのある紙
・両面に微光沢があり、写真などが綺麗に表現される
【筆記性】
鉛筆 ・・・書けない
ボールペン・・・書きにくい
サインペン・・・書きやすい
マットコート紙は、コート紙と比べて光の反射を抑えるようにコーティングされた用紙のこと。コート紙で印刷したものと並べると色がくすんで見えるが、落ち着いた雰囲気を演出したい場合に最適。光の反射による紙面のちらつきが少ないため、パンフレットや会社案内、冊子など文字の多い紙面デザインによく使用される。色味が全体的に少し沈んだように仕上がる性質があるので、しっとりしたイメージを再現したい場合に向いている。
・紙の色・・・白
・コート紙に比べ、光沢が抑えられ若干黄色味がかる
・手触りはサラサラ
【筆記性】
鉛筆 ・・・書きにくい
ボールペン・・・比較的書きやすい
サインペン・・・書きやすい
アート紙は、美術誌や写真集やカタログなど写真の質が重要な印刷物などによく使われる用紙。白く滑らかで強い光沢がある紙で、印刷用としては最高級のもの。写真や色の仕上がりを重視した印刷物に使われる。一般的には「アート紙」と言った場合にはグロス系の「グロスアート」を指す。 また、アート紙よりさらに光沢・平滑度・白色度などを向上させたスーパーアート紙というものもある。
・紙の色・・・白
・上質紙をベースにグロス系の塗料を塗布した用紙
・平滑度が高く、印刷の彩度が高く印刷される
【筆記性】
鉛筆 ・・・書きにくい
ボールペン・・・やや書きにくい
サインペン・・・書きやすい
【印刷の豆知識】★おまけ★
Q.紙が水に弱いのはなぜでしょう?
A.繊維をつないでいる水素結合が弱くなるからです
答えは繊維の結合方法にあります。もともと紙は、短い繊維同士が絡み合ってできています。この絡み合っている状態は、繊維と繊維が水素結合という力でお互いに引っ張り合っている状況になります。ただ、この水素結合というのは非常に弱いので、紙を手で引きさいてみると簡単に破れます。これは絡み合った繊維がずれたり、解けたりして破れるのですが、引きさいた断面を見ると繊維は毛羽立っているだけで、繊維そのものが切れているわけではありません。また紙は水に濡らすと、繊維同士の水素結合の間に水が入り、水素結合は消してしまいます。すると繊維と水が水素結合してしまい、繊維どうしの水素結合が壊れ、紙はいっそう弱くなるというわけです。