2018年09月25日
TEXT:山口真弘(ITライター)
「誰でも簡単に、美しい中綴じ製本ができる」として、今年に入ってからSNSなどで話題になっているのが、ダイソーこと大創産業が販売する「どこからでもとめられるホッチキス」です。印刷物のイメージを確認するためのサンプル冊子から、コピー本の作成に至るまで、幅広く対応できる一品です。実際に試してみました。
ダイソーで購入できます。「200円ホッチキス 」というのが正しい製品名のようです
製品本体。一般的なホッチキスの下に土台がついたかのような形状が特徴的です
そもそも、一般的なホッチキスでなぜ中綴じ製本が行えないかというと、留めたい位置まで針が届かないからです。もし、ホッチキス本体の上下を分離させられれば、留めたい位置まで届かせるのは難しくはありません。
これを可能にしたのが「200円ホッチキス」です。本製品は、ホッチキスの上下に相当するパーツが、マグネットで分離・吸着できるようになっています。これにより、用紙の中央付近などでも、自由に針を留めることができます。今回はA4用紙を二つ折りにしたサンプルで試していますが、B4やA3の二つ折りももちろん対応可能です。
ただし、単に上下のパーツを分離させて紙を挟むだけでは、位置合わせの基準がまったくないため、正確な位置合わせができず、またできたとしても綴じるために力を加えた際にズレてしまいかねません。そこで本製品は、土台にあたるパーツの上にもう一層、透明なプレートを重ねる構造を採用しています。中綴じしたい紙を、この土台と透明プレートの間に挟んで固定することで、上からホッチキスの針を差すために力を加えても、ズレにくいよう工夫されています。
この土台と透明プレートは、マグネットで吸着する構造になっています。透明プレートには位置合わせのための目印がついているので、紙を山折りにした時にできる頂点をそこに合わせれば、位置がずれることもなく、美しい中綴じが行えるというわけです。
このマグネットはかなり強力で、挟んだ紙を引っ張っても土台と透明プレートが分離せず、紙だけを引き抜けてしまうほどです。もし簡単に分離してしまうようであれば、それは挟んだ紙の枚数が多すぎる可能性があるので、針が通らず失敗するのを防ぐためにも、枚数を減らさなくてはいけないことが分かるというわけです。なかなか気の効いた設計です。
①ホッチキス本体と土台、透明プレートの3つに分離します
②まずは用紙を二つ折りして綴じる位置を決めます
③土台の針を受ける部分が綴じる位置に来るようセットします
④透明プレートを上から置き、マグネットで土台に吸着させます
⑤位置合わせが終わったらホッチキス本体をはめ込みます
⑥そのまま押し下げます。ゆっくり力を加えるのがコツ
⑦綴じ終わったら持ち上げ、透明プレートも外します
⑧綴じた状態。問題なければ引き続き反対側も綴じます
⑨裏から見た状態。針先がきちんと内側に曲げられています
本製品の規定枚数は「8枚」とされています。つまり8枚を裏表で、かつ2つ折りにするので、最大32ページまでの中綴じの小冊子を作れる計算になります。ただこれは若干余裕を見た数字のようで、実際に試したところ、コピー用紙で12枚程度までは対応できました。これならば、最大48ページという大ボリュームの中綴じ小冊子を作ることも不可能ではありません。
とはいえ、枚数が増えると針がうまく通らずに折れる確率も上がり、そのぶん慎重に作業をしなくてはいけませんし、またそれだけのページ数ともなると、冊子の内側と外側のページで断面がずれるという別の問題が出てくるため、あまりおすすめはできません。表紙に厚みのある紙を使うことを考慮しても、やはり規定枚数は守ったほうがよさそうです。
なお本製品で気をつけたいのは、ホッチキスの針が3号針という、家庭やオフィスで一般的に用いられている10号針よりも大きいタイプであることです。これによって、分厚い枚数でも針が折れることなく貫通できるわけですが、身近にある10号針を流用することはできません。ダイソーでも取り扱いがあるようなので、本製品の購入時に、合わせて買い求めるとよいでしょう。
左:8枚綴じ、右:12枚綴じ。右はやや厚みに無理があります
本製品で使われる3号針(左)と一般的な10号針(右)
構造上あまり多くの針を本体にストックできません
最後に、これから購入する方のために、実際に使ってみた上でのTipsをいくつかメモしておきます。まず、透明プレートに紙を挟んで位置を合わせる際、目印となる▲印よりも先頭方向に1mm程度ずらしたほうが、良好な結果が得られやすいようです。
これは製品の精度が低いわけではなく、針を留めるための力を加えると、紙が押されてわずかに手前方向にずれるため、その対策として、あらかじめ1mmほど先頭方向にずらしておくわけです。おそらく紙質や枚数によっても変わるはずですが、正確に合わせているのに綴じ位置がズレる場合は、ここで調整するのがもっとも簡単なようです。
また、本製品は、紙の端から何cmの位置で綴じるかを測る機能はありません。定規を別途用意し、端から何cmの位置で綴じるのかを測った上で、毎回バランスを合わせたほうがよいでしょう。
目印となる▲印よりもわずかに左に折り目が来るのがベター
紙の端からの距離を揃えると美しく仕上がります
A4二ツ折だけでなく幅広い用紙サイズに対応します
以上のように、機能性にすぐれた本製品ですが、やはり最大の特徴は、これがわずか200円という、破格の価格で購入できることでしょう。最近ではこうした中綴じ用途のホッチキスはいくつかありますが、本製品は安価なことに加えてかさばらず、未使用時にも片付けやすいのが利点です。印刷用のちょっとした見本誌の作成から、コピー本の作成に至るまで、幅広く活用できることでしょう。
製品名:どこからでもとめられるホッチキス
実売価格:216円
発売元:大創産業
[筆者プロフィール]
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2018.09.25 Tue