PCやディスプレイ、NASといった高額な機器の背面には、幅およそ数mm程度の四角い穴が開いています。これはセキュリティスロットと呼ばれ、専用のワイヤーなどを使って、デスクの脚などに固定するためのものです。
機器を盗難から守るために効果的なこのセキュリティスロット、法人ユースで使われることが多いのですが、個人が外出先でノートPCを使う場合などにも利用できますので、選び方と使い方を知っておくと役に立ちます。
今回は市販のセキュリティワイヤーについて、どのような種類があり、どのように使えばよいのか、筆者が今回購入したナカバヤシの製品を例に紹介します。
セキュリティワイヤーの使い方はどれも基本的に同じで、T字になった先端をデバイスの側面や背面にあるセキュリティスロットに挿入し、キーを回すことで、先端がセキュリティスロットの中で拡張され、抜けなくなるという仕組みです。
ワイヤーのもう一端はデスクの脚など、容易には取り外しが行えない部分に1周させるようにして固定します。ワイヤーの固定が完了すれば、そのデバイスは、ワイヤーが伸びる範囲でしか移動させられなくなります。
スロットは本体の筐体と一体化していますので、強引に抜こうとすると、デバイス自体が壊れてしまうことになります。こうしたことから、換金やデータ目当ての盗難対策としては、絶大な効果があります。
セキュリティスロットは、もともとはひとつのメーカーが提唱していたものが標準化された経緯があります。サイズが異なるのは、ノートPCの薄型化などに伴って、スリムなサイズが求められるようになったためです。
そのため、このセキュリティスロットに取り付けるワイヤーを購入するにあたっては、本体側のセキュリティスロットのサイズを確認し、それに合ったワイヤーを選択することになります。差し込めなかったり、逆に簡単に抜けては意味がないからです。
スロットには呼び名がついているので、その呼び名に適合するワイヤーを選べばよいのですが、メーカーによって使っていないこともあるので、穴のサイズで確認するのがもっとも確実です。
主なサイズは以下の通りで、今回の製品は標準的な3×7mmに該当します。「ナノ」「ノーブル」という名前は、「ナノスロット」や「ノーブルロック」といった具合に、別の名前をつなげて呼ばれることもあります。なおDELLなど海外メーカーの製品は、独自サイズの場合があるため注意が必要です。※標準(ミニセーバー) 3×7mm、ナノ 2.5×6mm、ノーブル 3.2×4.5mm
さて、セキュリティワイヤーにはどんな製品があるのでしょうか、今回紹介している製品は、伸縮自在なカール式で、かさばらないのが利点ですが、一般的には1本のワイヤーでできた製品のほうがメジャーです。
キーは、今回の製品のように物理的なキーを差し込んで使うタイプ以外に、ダイヤルキーを用いたタイプも存在します。キータイプは、キーを持ち歩かなくてはいけない反面、スロットに取り付ける金具がコンパクトで、ノートPCなど薄型のデバイスにも向いています。
ダイヤルキータイプは、キーを持ち歩く必要はありませんが、根元部分が大柄でノートPCよりも厚みがあり、取り付けると段差ができてしまうことがあります。またダイヤルはせいぜい3桁しかなく、暗証番号を知らなくとも時間をかければ外せてしまいます。目的に合わせて選ぶのが無難でしょう。
取り付け方は、デスクなどの支柱に一周させて取り付ける製品以外に、デスクの天板に吸盤で固定するタイプや、粘着シールで固定するタイプもありますが、力ずくで外せてしまうという点で信頼性に欠けます。支柱に巻くタイプが、もっともおすすめできます。
これまでセキュリティワイヤーの主な用途は、PCを展示している店頭やショウルーム、また図書館や学校など共有スペースが中心でしたが、コワーキングスペースなどで一時的に席を離れる場合や、電車内での作業中に手洗いに行きたくなった場合など、個人ユースでも重宝します。
もともと法人向けの製品ゆえ、普通に買うと数千円ほどしますが、製品によっては割引で大幅に安くなっていることもありますので、そうした製品を狙ったほうがよいでしょう。今回紹介しているカールタイプの製品は、持ち歩くにしてもかさばらないので個人がモバイルで使う場合におすすめです。
ちなみにセキュリティワイヤーは、安価な海外製品がネットで販売されている場合もありますが、いかんせんセキュリティ用品は信頼性が重要ですので、あまり手を出さないほうがよいでしょう。国内メーカーの製品であれば、不具合が出れば、一定のサポートも期待できるからです。
【鍵・金庫のスペシャリスト/防犯アドバイザー 玉置氏の監修コメント】
PCの盗難や紛失は、機器本体の被害額以外に、保存されているデータ流出という大きな被害を被る可能性があります。PC内のセキュリティロックはもちろんのこと、アナログのロックで対策することも重要となります。
物理的に持ち去ることができない対策を打つことは難しくても「容易に持ち去ることができない」「怪しまれずに持ち去ることができない」という対策は打てます。利便性と防犯性を考慮して商品や対策を選定すると良いでしょう。
- DATA
製品名:SL-058
実売価格:1,009円
発売元:ナカバヤシ
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B01N9TTUBK/
著者プロフィール/防犯グッズ監修
- 山口真弘
- ITライター
- PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など
- 玉置恭一
- 鍵・金庫のスペシャリスト/防犯アドバイザー
- 22歳から鍵職人として始動。ジャパンロックレスキューサービス株式会社 専務取締役、株式会社ミライアン 代表取締役を経て、ジャパンベストレスキューシステム株式会社入社。同社退社後、株式会社ミライアン再始動。 現在は凄腕鍵開け職人として、多数のテレビ番組にも出演中。 [所有資格等:総合防犯設備士] url:https://kinkoterasu.com/
2021.03.02 Tue2023.06.05 Mon