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大谷和利のテクノロジーコラム

2019.06.06 Thu

Macシリーズのプロ指向を強める8コア「MacBook Pro」、プロユーザーにとっての意義と真価とは

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

WWDC 2019を前に、アップルはiPod TouchとMacBook Proのアップデートを行った。どちらも、基本デザインは変えずに内部仕様を見直したもので、WWDCの目玉にはならないが、それぞれのターゲットユーザーにとっては意味のある進化を遂げている。ここでは、ついに登場したMacBook ProのCore i9 8コアモデルに注目し、プロユーザーにとっての意義を考える。

Macシリーズのプロシフトを象徴する「MacBook Pro」新モデル

最初に、新たな15インチ MacBook Proの仕様を概観しておこう。標準モデルの場合、CPUには8コアのIntel Core i9プロセッサ(2.3GHz、TurboBoost時4.8GHz)を搭載し、内蔵メモリとグラフィックスカード、ストレージが、それぞれ16GB 2,400MHz DDR4、Radeon Pro 560X(4GB GDDR5メモリ搭載)、512GB SSDという仕様で、価格は税別302,800円となっている。

また、さらに上位のi9プロセッサ(2.4GHz、TurboBoost時5.0GHz)を+22,000円で搭載可能なほか、オプションを駆使すれば、32GB 2,400MHz DDR4メモリ(+44,000円)、Radeon Pro Vega 20(4GB HBM2メモリ搭載。+38,500円)グラフィックス、4TB SSDストレージ(+308,000円)まで拡張可能だ。 

以前のこのコラムで、アップルがインテルのCPU開発の遅れによって、Macラインの製品計画を予定通りに進めることができていない点に触れた。しかし、パワーハングリーなプロフェッショナルからの要求の矢面に立たされるのは、実際にエンドユーザー向けの製品を作って届けるアップルである。

将来的に自社開発のAシリーズチップに切り替えるとしても、現時点ではインテル頼みであることは否定できない事実であり、今回の発表タイミングは、まさに必要としていた8コアのCore i9プロセッサのリリースに左右されたものだった。というのは、新型に搭載されるCore i9プロセッサは、どちらも今年の第2四半期に出荷開始されたばかりの製品だからだ。

また、原稿執筆の時点で2.3GHzモデルは中1日程度で手元に届くが、2.4GHzモデルの場合には1週間程度の納期とされている。CPUの供給量はさほど逼迫してはいないものの、即納できるほど潤沢ではない(あるいは、特に上位モデルの需要が高い)と考えられよう。

いずれにしても、8コアモデルは、Macシリーズのプロ指向を強めるアップルとしては、1日でも早くラインアップに加えたかったMacBook Proのフラッグシップに相応しく、ハイエンドユーザーも心待ちにしていた製品といえる。

マルチスレッドアプリ常用者向けの8コアモデルは、プロ中のプロのための一台

アップルは、MacBook Proの8コアモデルが、一世代前の6コアモデルとの比較で、3Dグラフィックスアプリケーションのレンダリングスピードにおいて最大40%高速化すると主張している。実際に、そこまでの性能を発揮できるアプリは限られるかもしれないが、Geekbench 4によるCPU単体のマルチスレッド処理計測でも25%以上のスピードアップが記録され、iMac Proに迫るパフォーマンスを見せている。

したがって、3D CGやビデオ編集などのメディア系アプリのヘビーユーザーにとってはもちろんだが、大規模なソースコードのコンパイルを頻繁に行うようなプログラマにとっても、その恩恵は十分にある。

さらに、先代のMacBook Proで見られた、CPUの動作周波数が(おそらく一定温度以上の発熱を防ぐために)頻繁に仕様上の数値を下回るように制御され、せっかくの性能が活かせない現象も新型では解消されており、その意味でも処理のスループットは大きく向上しているはずだ。

アップルは、MacBook Proの次世代モデルで画面サイズの拡大を計画しているとされ、そのときこそ、インテルのIce Lakeマイクロアーキテクチャを採用したCPUか、自社製Aチップを搭載してフルモデルチェンジを行うものと考えられる。しかし、そのタイミングは早くても来年の前半となり、まだ発売まで間がある。今回のフラッグシップモデルは、価格を含めて、あくまでも目の前の仕事の効率化を最優先に考え、かつ今すぐにでもそれを向上させたいと考えるプロのためのノートMacだ。

懸念事項は、さらに改良が行われたとされるバタフライ・キーボードだが、実際に内部的な接触不良などの問題点が解消されたかどうかは、現実の世界でしばらくの間使われてみないことにはわからない。また、そもそも最近のアップル製キーボードの特徴である浅いストロークが好みではないというユーザーも少なからず存在する。

しかし、そのようなユーザーはすでに気に入った外付けキーボードを利用していると考えられ、自宅やオフィス、スタジオなどでは大型ディスプレイなども含めたシステム構成で使い、モバイル状態でのみ本体内蔵のキーボードで文字入力を行うようなハイブリッド環境を構築するなら、今回のMacBook Proは、場所を問わず使えるノートMacとして最強の1台となろう。

おりしもWWDC 2019のキーノートでは、新型Mac Proが発表された。こちらについては、次回以降のコラムでより少し詳しく採り上げるが、コンパクトな現行モデルから一転して拡張性を重視し、性能も群を抜いて高い、モンスターマシンとも呼ぶべき製品に仕上げてきた。iMac Pro以降、アップルのProライン製品は、同社のプロユーザー攻略の本気度を如実に示すものといえそうだ。

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