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今年のiPhoneは何が売り? カメラ機能と“価格”で5G普及前の難しい時期を乗り切るか

2019.9.19 THU

今年のiPhoneは何が売り? カメラ機能と“価格”で5G普及前の難しい時期を乗り切るか

2019年9月5日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)
間近に迫った2019年秋のAppleスペシャルイベント。すでに様々なリーク情報が出回っているが、今回は、Appleにとって、特に新型iPhoneの仕様を決める上で、5G普及前の色々と難しいタイミングだといえる。全体に性能の底上げを図りつつ、カメラ機能の強化とネーミング、そして価格設定によって、手堅く需要を喚起する戦略が採られそうだ。
▷ 2019年、Apple新製品の主役はやはり新型iPhone
今回、発表予定の製品は、秋の恒例となった新型のiPhoneに加えて、タブレット市場で一人勝ち状態のiPadシリーズのリニューアルサイクルに基づくiPad Pro、スマートウォッチの代名詞となったApple Watch、そして、16インチスクリーンを搭載したMacBook Proの4製品といわれている。

iPad Proは、前回に大きな形状変更を受けたこともあり、今回は性能面でのブラッシュアップとiPadOSのリリース版の紹介がメインとなりそうだ。また、Apple Watchも現行の4のときに大きく改良されたので、やはり性能アップとWatchOS 6との相性の良さなどが発表の中心となろう。

さらに、今回デビューするMacBook Proは、16インチながらナローベゼル化で15インチとほぼ同じサイズ感を実現するとされ、同シリーズとしては久々のビッグチェンジだが、市場へのインパクトの点で、やはり主役は新型iPhoneといえる。
▷ 5G移行前のいま、最大の敵は買い控え

今、通信業界は、次世代通信規格である5Gの話題で持ちきりだ。ライバルに先んじたい一部のキャリアは、エリアが限定的であろうが、通信速度が期待通りでなかろうが、サービス開始1番乗り争いを繰り広げ、スマートフォンメーカーの中にも5G対応の新製品を早くもラインアップしたところがある。しかし、そうしたメーカーも、同じシリーズ内に5G対応ではないレギュラーモデルも用意せざるをえないところが、通信インフラの現状を踏まえたジレンマだ。

もちろんAppleは、そうした目先の1番乗りには興味を示さず、一時話題となったフォーダブルタイプの端末も眼中にないわけだが、5G対応キャリアとエリアが拡大する来年以降のモデルで5G対応を果たしていくことは間違いない。ただし、それが2020年に起こるか、その先になるかは、今後の実際の5Gの普及状況に左右されるだろう。

いずれにしても、端末価格が上昇気味の昨今、消費者にとって購入や買い替えをするなら最新規格をサポートして長く使えるものにしたいと考えるのは自然な判断である。そして、新型だからと飛びつくよりは、5G対応のiPhoneの登場まで多少我慢しても待つと判断する人も、それなりの数に上ると思われる。性能や機能面で成熟しているiPhoneだけに、現実にそれで困るというユーザーは、ほとんどいないはずだ。

もちろん、ティム・クックとしても、5G移行の前に消費者の購買・買い替え意欲が薄れるであろうことは、以前から製品計画に織り込み済みに違いなく、それが今回発表予定の製品のあり方を決定づけるように思う。毎回行われている自製のAチップのアップグレード(今回はA12 Bionic→A13 Bionic)は当然として、買い控えを防ぐ具体的な方策は、カメラ機能の強化とネーミング変更、そして、まだ明らかではないものの、より買いやすい価格の設定という3つの要素に集約されるのではないかと予想する。

スペシャルイベントの招待状の5色の半透明のAppleロゴは、新型iPhoneに加わるカラーバリエーションと考えられ、背面のガラスパネルが従来の艶ありから透明感のあるマットな質感になることを示唆しているようだ。

▷ あえてここで行うカメラのアップデート
Androidスマートフォンではすでに4レンズ構成の製品も登場しているものの、Appleはこの先のモデルチェンジのアピールポイントも考慮しつつ、漸進的に仕様を向上させる傾向にある。iPhone XSでも、カメラ自体のレンズ構成やハードウェアはiPhone Xの仕様を継承しつつ、画像処理プロセッサとニューラルエンジンによって画質や機能の向上を図っていた。

さすがに、これ以上先送りしては話題性が薄れそうなこともあり、今回はハードウェアにも手を加えて上位モデルで3レンズ構成を採り入れるものの、これを超える多眼化は、来年以降に取っておく計画と思われる。

ただし、1つ気になるのは、2レンズまたは3レンズにも関わらず、レンズ周囲の突起が、あたかも4レンズを意識したかのような正方形になりそうなことだ。たとえば、来年も5G化が見送られた場合、さらに買い控えを防ぐために、基本デザインはそのままに4レンズ化するようなこともありうるのかもしれない。
▷ ネーミング変更でXR後継機の標準モデル化
新型iPhoneの基本名称は、iPhone 11で落ち着きそうだが、OLEDスクリーン採用の上位機種をiPhone 11 Pro/11 Pro Maxとする一方で、エントリーモデルをシンプルなiPhone 11と呼ぶ模様だ。

もしそうなら、これは消費者心理的な部分が大きいともいえるが、iPhone XRやかつてのiPhone SEとは違って、エントリーモデルに廉価版というイメージを与えないためのネーミング戦略と考えられるだろう。

iPhone XSでは、ネーミングルール上の標準モデルがOLEDと2レンズカメラを採用していた。そのため、LCDとシングルレンズ採用のiPhone XRは、非主流の廉価版として受け取られてしまう。

しかし、今回、LCDと2レンズ構成のモデルをiPhone 11とし、OLEDモデルを特別感のあるProモデルと位置付けることで、どれを選んでも心理的な満足感が得られるように考慮したのではないかということだ。これは、一見すると些細なことのようだが、市場や人によっては重要な違いとして受け取られる部分といえる。
▷ 経済の先行き不透明な中で大切な買いやすさ
最後の価格について、本当のところは実際に蓋を開けてみないとわからないが、Proモデルに関してはiPhone XS/XS Maxよりもカメラ機能などが大幅に向上したにも関わらず据え置きの方向性、iPhone 11についてはiPhone XRよりも安価というような打ち出し方をする可能性はあるように思う。

OLEDの供給元として、Samsungに加えてLG Displayとも契約を結んだことで、確実にコストが下がるため、Proモデルも価格を抑える余地はあるものの、Appleとしては米中貿易摩擦などで経済の先行きが不透明なだけに、利益を優先するほうが理にかなっている。一方でベーシックなiPhone 11は、買い得感を前面に押し出すことで、販売数を確保する意向ではないだろうか。

いずれにしても米国時間で9月10日のスペシャルイベントは目前。買う人も買わない人も、Appleの次の一手には注目だ。
[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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