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大谷和利のテクノロジーコラム

2019.11.25 Mon

16インチMacBook Proはこんな機種。マジックキーボード、音響システム、内部構造まで

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

 

先日、別メディアの紙媒体で連載している過去のMacintoshを振り返るコラムで、1994年に登場したPower Macintosh 8100/80AVという機種を採り上げた際に、「本体のみで様々な処理が行えることを目指したApple色の濃い製品」と表現したのだが、今秋発表されたの最新の16インチのMacBook Proは、まさにそのApple色に染まったノートMacだと感じた。そして、性能に対して割安感を出すことで需要を喚起しようとする姿勢は、今年のApple製品に共通している要素だ。

基本構成はその名に相応しいプロ仕様

一見すると、ディスプレイベゼルをナロー化し、表示エリアをサイズアップしただけに思われて、その実、排熱処理を含め内部が完全に新設計された16インチ MacBook Pro。それは、ある意味でiPhoneにおけるiPhone Xのような、今後、何年にも渡ってMacBook Proのベースとなりうる次世代の基本デザインを完成させたモデルといえる。また、ジョナサン·アイブが去った後もしばらくは外観イメージを変えなくとも、エンジニアリングの力で製品の魅力を増幅することが可能なことを証明した実例でもある。

16インチディスプレイは、226ppiで3072☓1920ドットの解像度共々、ノートMac向けのRetinaディスプレイとして史上最高のもの。同じく、標準モデルで容量が512GBまたは1TBのSSDは、15インチモデル時代の2倍であり、BTOで選択可能な8TBという数値は、現在のノートPCにおける最大の容量にあたる。

6コアまたは8コアの第9世代Core iとDDR4-2666のメモリ(標準16GB、最大64GB)構成を軸に、Radeon Pro 5000Mという最高クラスのGPUとGDDR6仕様のグラフィックス用メモリ(標準4GB、最大8GB)を採用したことで、基本性能は標準構成でも従来比2倍を実現しており、グラフィックデザイナーはもちろん3D CGのクリエーターも、大きな恩恵を受けることができる。

揺り戻してバランスをとった細部の仕様

その一方では、細部の見直しも進められている。顕著なのは、Appleが頑なにその優位性を主張し、改良を続けてきたバタフライメカニズムのキーボードから、より一般的なシザーメカニズムへと戻したことと、これまでTouch Bar内でサポートされていたESCキーとTouch ID兼用の電源ボタンには、それぞれ独立した物理キーが与えられると共に、カーソルキーが逆T字のレイアウトとなった点だ。

Appleは時々、自らの考える理想を追求するあまり、デザインやエンジニアリングをやり過ぎる嫌いがある。それは、良くいえば、一度、振り切ることで、そのデザインやエンジニアリングの最もピュアなカタチを見せることにもなるのだが、過去にも、たとえば完全に円形の初代iMacのホッケーパック型マウスは手探りで前後がわかりにくいという欠点があった。また、初代MacBook Proの格納式I/Oポートも滑らかな外観を作り出す上で一役買っていたものの、後継モデルからはケーブルの脱着が容易な現在の露出したポートデザインに変更された。

Touch Barも、キーボードの最上段に位置することから、初期の試みとしてESCキーとTouch ID兼用の電源ボタンもそこに統合したかったという意図は理解できるが、新モデルでは、より現実的な落としどころを見つけたといえるだろう。

そして、Mac用の純正外付けキーボードと同じ"Magic Keyboard"の名が与えられた新内蔵キーボードも、単にシザーメカニズムに戻すだけでなく、キーストロークに関して従来比0.45ミリ増しの1ミリが実現された。実際には、このキーストロークは外付けのMagic Keyboardと同じであり、Apple自身も、その技術の応用であることを認めている。

さらに、本体サイズがわずかに大型化(奥行、幅、厚みが、それぞれ5.2ミリ、8.6ミリ、0.7ミリずつ増加し、重量も170グラム増)したことから、その分がキーボードのメカニズムや高性能を支える排熱機構や大容量バッテリー(従来比16Whプラスで、航空機内に持ち込める最大容量の100Wh)を収めるために使われたことも想像に難くないが、ディスプレイを閉じた状態では直接並べて見ない限り、その差に気づくことは難しい。

内蔵オーディオを含めた本気度

目に見えない部分での最大のサプライズは、その音響システムだろう。一時期、WindowsのノートPCを含めてサウンド機能に力を入れた機種は存在したが、初代iPad Proあたりからオーディオ性能向上に力を入れてきたAppleにとって、16インチMacBook Proの音響システムは、その集大成ともいえるものとなっている。

特に、据え置き型のサブウーファーなどで使われている2基のウーファーを上下に組み合わせて振動を打ち消す形式の2ウェイ3ドライバスピーカーを2対組み込んでステレオ化した設計や、外付けコンデンサーマイクに匹敵する内蔵マイクの性能はユニークで、音楽制作はもちろん、Apple TV+などの動画配信サービスも意識して、本格的なAV機能を実現しようとしたAppleの本気度がうかがえる。

欲をいえば、今回はWi-Fi 6やFace IDが見送られたが、次のマイナーチェンジ以降に対応が進むと考えられるので、それらの点を重視するなら、様子見するのも1つの選択肢ではある。

以上のような成り立ちを持つ16インチMacBook Proは、もちろんプロであれば自信を持って「買い」といえる製品であり、6コアのIntel Core i7モデル(2.6GHz、メモリ16GB、512GBSSDで税抜24万8800円)、8コアの同Core i9モデル(2.3GHz、メモリ16GB、1TBSSDで同28万8800円)共に、標準構成で前身の15インチモデルと同一価格(=実質値下げ、かつ日本では為替レートの関係でさらに安価)設定にするなど、買い得感もある。だが、当然ながらBTOオプションを追加していけば最大651,800円にもなり、ニーズを見極めた上で仕様を決めることが重要といえる。

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