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大谷和利のテクノロジーコラム

2020.08.17 Mon

リモートワーク急増の絶妙なタイミングで登場した新型27インチiMac

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

この新型コロナウイルス禍の中で、Appleは2020年第三四半期(4~6月)に過去最高の収益を上げ、特にMackintoshラインは前年同月比21.63%増の70億8000万ドルを記録した。これは、iPadの同31.04%増に次ぐ伸びで、収益自体もiPadの65億8,000万ドルを上回っている。

そして、リモートワークに対する需要の高まりも大きく貢献したと思われる大躍進の最中、Appleは27インチのiMacをアップデートした。その仕様や価格設定を見ると、まさに絶妙なタイミングでのリリースとしかいいようがない。

パフォーマンス、カメラ、マイクのすべてが進化

MacラインのApple Siliconへの移行が公式にも明らかにされた今、既存のiMacシリーズは、明らかにモデル末期に差し掛かっている。しかし、だからこそ、基本的な開発費が回収済みのハードウェアプラットフォームを利用して、できることがある。それは、価格を抑えつつも内容を充実させ、コストパフォーマンスの高さをアピールすることだ。新型27インチiMacは、その点に照準を絞った製品といえる。

まず、パフォーマンスは、4月に発表されたIntelの第10世代プロセッサー、通称Comet Lakeの採用によって大幅に向上した(公式発表でCPU性能65%アップ)。標準は6/8コアだが、10コアのi9にもアップグレード可能となっている。

加えて、グラフィックス性能もGPUにAMDのRadeon Pro 5000シリーズを採用したことで最大55%高速化(オプションのRadeon Pro 5700XT[VRAM16GB]選択時)。2,666MHzのDDR4メモリは2019年モデルと同じだが、標準の8GBから最大128GBまで拡張できる。また、21.5インチモデルを含めた全モデルのストレージがSSDとなり、容量は標準で256GB、最大8TBまで増設可能だ。

SSDのフル採用に伴って、そのコントロールも担当するセキュリティチップのT2も搭載され、より強固なデータ暗号化や、盗聴を防ぐマイクのハードレベルでの自動切断なども実現している。オプションで、10GBのEthernet接続に対応した点も、目的や用途によっては嬉しいポイントといえる。

さらに、リモートミーティングに適した仕様改良としては、カメラとマイク機能の充実が挙げられる。内蔵カメラは、呼び名こそ従来と同じFaceTime HDカメラだが、解像度が720pから1080pへと向上した。画質の向上は必然的にネットワーク負荷の増大が招くものの、クリエイターにとっては、たとえば実体のあるサンプルやプロトタイプをカメラ越しに提示する際などのメリットのほうが大きいだろう。

そして、マイクはPowerBook Pro 16インチと同じビームフォーミング機能を備えた3マイクアレイを搭載し、環境ノイズを低減してスタジオレベルの音質が実現された。

このような進化を遂げながら、標準価格が19万4,800円と据え置かれたことで、新型の27インチiMacは、非常に魅力的なマシンとなっている。

クリエイターにとってiMac Proを超える存在に

ディスプレイの解像度は、5KのRetina(5120 x 2880ピクセル)のままだが、新たに環境光に応じてディスプレイの色温度を自動調整するTrue Tone仕様となった。

そして、意表を突かれたのが、業界最高のディスプレイとも評される純正の「Pro Display XDR」にも用意されている「Nano-textureガラス」のオプション設定だ。これは、艶消しのコーティングではなく、ディスプレイ表面のガラス自体にナノレベルのエッチングを施して映り込みを抑える技術であり、それなりのコストはかかる(5万円だが、「Pro Display XDR」のオプション料金より2万円安い)ものの、特に映像・グラフィックス関連のクリエイターには朗報といえるだろう。

鮮明な画質を保ちながら、反射率を最小限に抑える「Nano-textureガラス」のオプション
鮮明な画質を保ちながら、反射率を最小限に抑える「Nano-textureガラス」のオプション

これらのアップデート内容を見ても、新型27インチiMacは、明らかにクリエイティブ分野で使われることを意識しており、10コアのi9を核に仕様拡張していけば、iMac Proの下位モデルに匹敵する性能を手に入れられるところまで来た。その場合でも、新型27インチiMacベース(メモリ:32GB、GPU:Radeon Pro 5500 XT、SSD:1TB)ならば36万9,800円と、近い仕様のiMac Proよりも19万円近く安く手に入れることができる計算になるので、コストを押さえつつ仕事環境を底上げするにはうってつけのモデルとなっている。ただし、CPUとGPUの双方をアップデート可能なのは標準構成の最上位モデルのみである点には、注意が必要だ。

Intel化直前のiMac G5を思い出すアップデート

もちろん、このモデルの購入を考える人にとって気になるのは、来るべきApple SiliconベースのiMacラインとの関係だろう。個人的に思い出すのは、2005年の10月に発売された最後のPowerPC iMacだったiMac G5の最終モデルである。

それまでのiMac G5とほぼ同じ筐体に初めてiSightカメラを内蔵し、各種パフォーマンスも向上させたこのモデルは、当分、モデルチェンジしないと思われたが、翌2006年の1月にIntel Macの第一弾としてCore Duoプロセッサ内蔵モデルに置き換わり、わずか2ヶ月の短命に終わった。その上で、2005年のWWDCでの発表時には2年かけて行うとされていたMac全モデルのIntel化を、わずか6ヶ月で完了させた。この素早い移行は、買い控えを防ぐための方策だった。

MacラインのApple Silicon化も、同様に2年かけて行うと発表されているが、Apple自身、そこまで悠長に考えてはいないだろう。しかも、Aシリーズチップの性能と進化のスピードを考慮すると、当初、いわれていたエントリーモデルからの導入ではなく、中堅モデルから、あるいはエントリーモデルと中堅モデルを並行して移行させてくる可能性すらある。

その意味で、新型27インチiMacの購入タイミングはいつかと問われれば、ニーズの緊急度に応じて対応することが最善といえるだろう。つまり、リモートワーク環境の構築や改善、クリエイティブワークの負荷軽減を早急に行う必要があれば、即購入しても見合うだけのバリューは十分に持ち合わせている。また、サードパーティ製の仮想化環境を使わずにBoot CampでWindowsを利用できる点を重視するなら、その意味で貴重なモデルとして入手しておくという選択理由もある。

一方で、まだ少し現状でも間に合わせられるのであれば、秋まで待ち、Apple Silicon化の陣容を確認してからでも遅くはない。

いずれにしても、Intel MacのサポートやmacOS対応は、あと数年は継続されると思われる(Mac OS Xは、最初のIntel Macの登場から3年8ヶ月後にリリースされたSnow LeopardからPowerPC非対応となった)ので、今回の27インチiMacを購入しても、十分使い倒す時間はある。自分のニーズにマッチした判断が、最善の選択となるはずだ。

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