プロが重視するスマホゲームのKPIとは? 売れ続けるゲームにするための運用と改修 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

プロが重視するスマホゲームのKPIとは? 売れ続けるゲームにするための運用と改修

2019.10.20 SUN

【UIUX Labに学ぶゲーム設計術】
プロが重視するスマホゲームのKPIとは? 売れ続けるゲームにするための運用と改修

皆様こんにちは。UIUX Lab代表の鷲山です。ゲームUI/UXの魅力をお伝えする連載第二回目は、長期戦になることが多いスマホゲームの「運用」についてお話ししようと思います。最近はスマホゲームも従来のコンシューマーゲーム同様に開発期間が長くなる傾向がありますが、散々試行錯誤してα版、β版とユーザーテストも繰り返し、自信を持って世に出しても、ユーザーとの微妙なずれは大小さまざまなところで発生します。

そんな中で、状況をどのように評価し改善していくのかを、いくつかの実例とともに紹介していきます。

2019年5月13日
TEXT:UIUX Lab代表 鷲山優作

ゲームは世の中に出してからが本当の勝負


ゲームの場合は、ユーザーが楽しい、面白い、わかりづらい、操作しづらいなどを直感的に体験して声を上げてくれることもありますが、客観的に評価するためには、やはり、いくつかのKPIを設定して、やるやらないの判断、優先度や対応策に対する判断基準にしていくことが多いです。DAU(1日あたりのユーザー数)や継続率、離脱率といった基本的なKPIをモニターしているのはもちろんですが、これ以外にも、ゲームを“どのように”遊んでくれているのかというのを重要なKPIとして見ています。

例えば、ユーザーの「レベル帯別の周回数」、「クエスト別の平均挑戦回数」、「装備の生成率や進化率」といった具合に、ゲームの機能ごと、またプレイヤーのレベルごとにポイントを設けてモニターして、プレイヤーの遊び方を分析していきます。しかし、一つの数字を見て短絡的にそこを改善しようとしても良い結果が出ないのが難しいところ。ゲーム体験というのは、様々な要素が入り組んで形成されているので、検証する上でもいろんな角度から見て施策を考えていく必要があるのです。

それではさっそく、具体的にどのような検証、そして改善をしているのかを弊社で運用しているスマホゲーム「ポコロンダンジョンズ(以下、ポコダン)」を例にお話ししていきましょう。

施策1:ユーザーのモチベーションを上げるUIとは


まず、リリース直後の「ポコダン」では、ゲームの面白さの中核である「通常クエスト」をなかなか遊んでもらえないという課題がありました。クエストのやり方を解りやすくしたり、クエストにたどり着くまでのUIを改善していくという考え方もありますが、ゲームUIで考えなければならないのは、「わかりやすく」「使いやすく」という要素だけではありません。

我々運用チームが考えたのは、ユーザーのクエストに対するモチベーションのことでした。ユーザーがどんどんクエストにチャレンジしてくれないのは、「クエスト」をクリアしたらどんなメリットがあるのか分からないからではないか。もらえるアイテムがUI上で明確ではないからなのではないか――という仮説を立てて対策を考えていきました。

それまでクエスト一覧画面では、クエスト内の情報だけを表示していたのですが、クリアごとにどんなアイテムがもらえるのかを、ひとつひとつ明確に示すようにした結果、つまづいていたユーザーもクエストをプレイしてくれるようになり、クエスト参加率を約1.5倍まで向上させることができました。
▲左:改善前(クリア報酬の表示なし) 右:改善後(クリア報酬を明示) 各クエストにクリア報酬を明示することでプレイするモチベーションの1つとして参加を促した。

▲左:改善前(クリア報酬の表示なし) 右:改善後(クリア報酬を明示)
各クエストにクリア報酬を明示することでプレイするモチベーションの1つとして参加を促した。

施策2:伝えたい情報は、ユーザーが見る場所に見るタイミングで


ポコダンでは、月ごとや季節ごとなどにさまざまなゲーム内イベントを実施しています。しかし、なかなかイベントの「参加率」が上がらないという悩みがありました。キャンペーン中ということは、ゲーム内のお知らせ画面で告知していますし、起動時のダイアログでも大きく表示されています。

しかし、このUIでは、具体的な内容まで見てもらえていないと思われたので、ポコダンのホーム画面である「村画面」にナビゲーションキャラクターを置いて、告知をしてもらうようにしました。村画面での告知は既存の告知場所よりもずっと小さく、詳細情報もありません。しかし、定期的にユーザーが戻ってくるホーム画面で告知を行うことで、ユーザーが見るべきタイミングで情報を伝えることができるようになりました。タップすると直接キャンペーン画面に遷移できる経路を作ったのも効果的でした。

このナビゲーションキャラクターを配置してからは、イベント実施時にそれまでより多くのユーザーを誘導することができるようになりました。
▲左:改善前 右:改善後 ホーム画面において各種イベントやゲーム攻略上重要な要素を目立つように配置した。

▲左:改善前 右:改善後
ホーム画面において各種イベントやゲーム攻略上重要な要素を目立つように配置した。

このほかにも、リリースから時間が経つとゲームの進み具合にも差が出てきます。プレイヤーのレベルによってイベント参加率や離脱ポイントも異なってくるので、ユーザーごとに画面の出し分けを行うなど、リリース直後よりも様々なユーザーを視野に入れた施策が必要になってきます。


4年たったコンテンツでも楽しみ続けてもらうためには


運用をはじめて約4年が経った時に、ゲーム全体の「継続率」が想定よりも下がっているという事象が起こりました。様々なユーザーの継続率を分析した結果、友達や他のユーザーと一緒に戦うことで一人では倒せない敵を倒せたり、ユーザー同士の駆け引きがあったりと、より面白さを体感できる仕掛け「共闘」に参加しているユーザーと参加していないユーザーで継続率に2倍近くの差があることがわかりました。

そのため、ゲーム全体の継続率を上げるため、「共闘」参加者を増やす施策を皆で議論し行いました。もちろん、ゲームのUIだけでなくリリースタイミングではキャンペーンも同時にスタートし、注目度を上げるためのUI以外の施策も行っていますが、今回は、UI/UXのみにポイントを絞ってお話をさせていただきます。
施策3:ゲーム内フレンド「ポコ友」がカギ
「共闘」には、単独クエストにはない楽しさがありますし、メリットもあるので、一度その魅力を知ってもらえれば、多くの人が「共闘」を楽しんでくれるはずです。一方、ユーザー同士の駆け引きが発生する「共闘」は、ゲームを始めたばかりのユーザーにはハードルが高いという面があるのもまた事実です。

このときの施策では、まず、「共闘」に参加をしやすくするためにゲーム内のつながりをつくれるフレンド機能「ポコ友」を実装しました。ポコ友ができると、「共闘」に参加することでゲーム内アイテムを効率的に入手できるようになります。「共闘」への参加は、自分だけでなく、ポコ友相手のメリットにもなるので、遠慮しがちな初心者の方も積極的に「共闘」に参加してくれるようになりました。

実はこの「ポコ友」は、キャンペーンに連動した期間限定のフレンド機能で、キャンペーンが終了すればフレンド関係も解消され、お互いのメリットもなくなります。しかし、それまで「共闘」に参加してこなかったユーザーに、この施策を通して「共闘」の楽しさを知ってもらえれば、その後のゲーム体験は大きく変わってくるはずです。実際に、この施策は共闘参加率を上昇させる効果がありました。
●UI改善でさらなる効果を

共闘参加率を上げる効果があることがわかったので、この後、「ポコ友」施策に参加するユーザーをさらに増やすためのUI改善を中心としたアップデートも実施しています。

ゲーム内のソーシャル要素がはいる画面において「ポコ友」という新要素が入ったことを明確に提示するとともに、バナーエリアも設置し「ポコ友」はお得なことがたくさんあると訴求をできるようにレイアウトの改修を行いました。

▲左:改善前 右:改善後

▲左:改善前 右:改善後

そしてキャンペーン告知の時と同様、ユーザーが注目してくれるホーム画面にバルーンを設置して、確実に誘導できるようにしています。
ポコ友への画面遷移を変更

ポコ友への画面遷移を変更

見ていただければわかると思いますが、このUIの中に「共闘」は一切出てきません。ガチャやフレンド、お得なアイテムが当たるといった訴求から、自然に共闘に参加できるゲーム体験を作り上げ、共闘参加率を、ひいては継続率の向上を図ったケースです。この改善をおこなった結果、共闘参加率が最大4倍近くになり、継続率も平均5%ほど向上させることができました。
ゲーム運用にデザイナーとして携わるメリットとは?
このように、スマホゲームに携わるデザイナーには、ビジュアルを作り上げるだけでなく、数字から導き出された課題に向き合い、問題を分析し、改善を繰り返していく能力が要求されます。

いかに腹落ちさせてデザインをつくるかも重要です。チームで課題に向き合い、自分なりに考察をし、メンバーと意見をすり合わせる。皆が納得感をもって改善をする。改善後は、その結果がどうだったかをさらに分析し、また改善を繰り返す。

運用中のゲーム開発の現場では様々な課題が日々起こりますが、常にこのPDCAを繰り返し、データと向き合いながら解決するための手段をロジカルに検証・設計していくこと。これができれば、チームリソースの1人から、プロジェクトにとって必要不可欠な存在になることができると思います。そしてその経験は、後のデザイナーキャリアにおいても間違いなく役に立つものになるはずです。
[筆者プロフィール]
鷲山 優作(わしやま ゆうさく)
紙媒体のデザイン、webデザイナーを経て2011年にサイバーエージェント子会社の株式会社グレンジに入社。コミュニケーションアプリから始まりブラウザーゲーム、ネイティブゲームアプリなどのアプリ開発に従事。現在グレンジ取締役CCOを務めるとともに、2016年にサイバーエージェントが設立した、スマートフォン向けゲームに最適なUI/UX研究をする専門組織「UIUX Lab」の代表も務める。
『UIUX Lab』
https://creator.game.cyberagent.co.jp/uiuxlab/

サイバーエージェントのスマートフォン向けゲームに最適なUI/UXを研究をする専門組織。アドバイザーとして「ゲームニクス」提唱者のサイトウアキヒロ氏を招聘し、「スマートフォンで”夢中”を体感させるゲーム作り」をモットーに、ユーザーにとって使いやすく、楽しめるゲーム開発の強化とクリエイティブ力の向上に取り組んでいる。
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