デバイスと共にユーザーも進化する。次世代に通用するスマホゲームの作り方とは | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

デバイスと共にユーザーも進化する。次世代に通用するスマホゲームの作り方とは

2019.12.8 SUN

【UIUX Labに学ぶゲーム設計術】
デバイスと共にユーザーも進化する
次世代に向けたスマホゲームの考え方とは


皆様こんにちは。UIUX Lab代表の鷲山です。ゲームUI/UXの魅力をお伝えする連載第五回(最終回)は「これからのスマホゲーム」について考えてみたいと思います。日本にiPhone3Gが上陸した2008年から10年余りが経ち、スマホゲームの傾向も大きく変わってきました。これまでのスマホゲームのUIUX傾向の変化を振り返りつつ、これからのスマホゲームの在り方について考えてみたいと思います。

2019年11月21日
解説:UIUX Lab代表 鷲山優作 TEXT:編集部

ユーザーと共に進化した、スマートフォンゲームの10年


スマホゲームのUIUXの歴史は、スマホユーザーが操作に馴染んでいく過程で変化してきたデバイスとユーザーの歴史でもあります。手にするデバイスが、フィーチャーフォンからスマートフォンに変わった時、まず初めにプレイヤーにも開発者にも大きなインパクトを与えたのは画面の美しさ、大きさでした。

スマホゲームの最初の時代を作ったのは、高解像度の美しいイラストと鮮やかなエフェクトを見せることでリッチなユーザー体験を提供したカードゲーム群です。フィーチャーフォンの時代にソーシャルゲームとして流行していた人気ゲームがスマホに移植された作品も多く、UIという観点から言えば、決してスマホでなければ実現できないゲーム群ではありませんでした。

しかし、「美麗」という単語が一般化したことからも解るように、美しいグラフィックが多くのユーザーを魅了し一大ブームを築きました。私たちゲーム関係者も美しく魅力的なイラストをゲームに盛り込もうと、クリエイター探しに奔走していたのを覚えています。
多くのユーザーを魅了した「ドリランド」の美しいビジュアル ※参考画像は2019年11月現在のものです

多くのユーザーを魅了した「ドリランド」の美しいビジュアル
※参考画像は2019年11月現在のものです

その後に、スマートフォンならではのUIを生かしたゲームが登場してきます。ジャイロ機能を使ってハイスピードで駆け抜ける「Temple Run(2011年)」、世界的にヒットしたパズルゲーム「Candy Crush(2012年)」、時代は少し遡りますが赤い鳥を飛ばして遊ぶ「アングリーバード(2009年)」などもスマホだからこそできたUIの一つ。スマホの操作性をそのままゲームに落とし込んだような、新感覚ゲームが世界中で流行し始めます。

日本でも大ヒットした「パズル&ドラゴンズ(2012年)」は、ゲームの進行自体は初期のスマホゲームとさほど変わりませんでしたが、集めたカードでデッキを組み、そのカードたちを上手に使って爽快なアクションパズルを楽しむというゲーム性が、当時としては斬新でした。この辺りから、日本でもスマートフォンの操作そのものが楽しめるゲームがヒットし始めています。
アクションパズルを取り入れた「パズル&ドラゴンズ」 ※参考画像は2019年11月現在のものです

アクションパズルを取り入れた「パズル&ドラゴンズ」
※参考画像は2019年11月現在のものです

そしてデバイスの進化と通信環境の向上を背景に、新しいゲーム性を持った作品が登場してきます。「モンスターストライク(2013年)」はそのUIもさることながら“協力プレイ”という遊び方が支持されて大人気となりました。「白猫プロジェクト(2014年)」のようなクオリティーの高い3Dアクションゲームも続々登場してきます。世界中を巻き込むヒットとなった位置情報ゲーム「Pokémon GO(2016年)」も間違いなく新しい体験を提供したゲームと言えるでしょう。

UIの傾向としては、“簡単操作で爽快アクション”といったキャッチに代表されるような、操作性はシンプルながらも巧みな演出で高い満足感が得られるものが多く開発されました。

さらに最近になると、FPSやMMORPGと言われる多人数で同時参加できる大規模なゲームが増加し始めます。「フォートナイト(2018年)」や「黒い砂漠モバイル(2019年)」など、PCゲームの人気タイトルがスマートフォン上でも楽しめるようになったものが中心で、RPGの世界観や戦闘などのイベントをユーザーが自由なプレイスタイルで楽しめるのが特徴です。

モンストが流行らせた“協力プレイ”と同じように、スマホゲームの新しい遊び方の一つとして認知されてきています。

ユーザーはどんなゲームを求めているのか?


サイバーエージェントグループでも、RPGやカードバトルゲーム、パズルゲームなどグループ全体で50タイトル程のスマホゲームを運営しており、新しいゲームの開発も進んでいます。いま、私が取締役CCOを務める株式会社グレンジで準備を進めているのは、360度自由に動き回って空中対戦が楽しめる「Kick-Flight(キックフライト)」というアクションゲームです。

これが「次世代のゲーム」の答えだというつもりはありませんし、私たち自身リリースしてみないことには受け入れられるかどうかさえ分かりません。それでもこれまでのゲームでは体験できなかった楽しみ方を少しでもユーザーの皆様に届けることができればいい、そんな思いで作っているゲームです。
「Kick-Flight(キックフライト)」

「Kick-Flight(キックフライト)」

キックフライトの開発は「空を自由に飛びたい」「360度どこにでも移動できるゲームを作りたい」というところから始まっています。ゲームの型については、横移動するシューティングゲームから、協力プレイで共通の敵を倒すゲームまで様々な案が出ました。

現在の「対戦アクション」という形を選択したのは、開発チーム内で“アクション操作の習熟度に重点を置いた、やり込み要素の高いゲームが面白い”と熱量が高くなり、このゲームで市場に新しい波を起こしてみたいと思ったからでした。

360度自由に飛びまわれるキャラクターを操作しながら敵と戦うゲームなので、決して簡単なゲームではありません。むしろ「操作が難しい」ゲームと言えます。スマホゲームのUIは先ほども述べたように、シンプルな操作で爽快なアクションを体験できるタイプが主流ですので、いままでの簡単アクションに慣れてきている方の中にはびっくりされる方もいるかもしれません。

対戦アクションゲーム「キックフライト」の難しさはどこにある?


アクション操作自体を楽しむゲームとはいえ、「難しい」=「操作しにくい」になってはいけませんので、UI面でも、ゲーム性の面でも、様々な工夫を盛り込んでゲームを構築しています。

まず、スマホゲームである以上「基本操作は片手で出来る」というのを、私たちがゲームを開発する上での目標としておいていました。3Dアクションゲームを作る上で、「移動」と「カメラ(視点)操作」をどう設計するかというのはいつも悩む部分です。家庭用ゲームやPCゲームの流れを踏襲して、両手を使ってキャラクタ―を動かすスマホゲームもありますが、キックフライトでは「移動 兼 カメラ操作」という統合された一つのUIに振り切っています。
そしてこの基本のUI「移動兼カメラ操作」をベースに、
・上下フリックで180度方向転換
・飛行中に横フリックでバレルロール
・下フリックでブレーキ
・障害物の手前でタップすると壁を蹴って戻ってくる
など、そのほかにもスマホの基本操作で行えるアクションをいくつか加えています。

それぞれのアクションも一つの目的に特化したものではなく、例えばバレルロールは敵の攻撃をとっさに回避する時にも使えますし、飛行しながら少し視界を切り替えたい時にも役立ちます。壁を蹴って戻ってくるアクションは、操作に慣れない初心者がひたすら壁にアタックしてしまうことを防ぐ仕掛けですが、中級~上級者になると敵から逃げるときにこの跳ね返りを上手く使って相手との距離を引き離すことも可能です。

3D空間を飛び回る基本コントロールに、これらのアクションを加えることで、初心者と熟練者の間になるべく大きな“習熟度の差”を用意し、やり込むことでどんどん上手くなって、操作自体が楽しくなっていくゲームを目指しております。ランキング上位者のプレイをリプレイでプレビューできたり、自分のプレイを振り返れたりという「上達のヒント」を得られる仕掛けも用意しています。

なぜ今、空中対戦ゲームなのか


スマホゲームの流行が移り変わる中で、なぜ今、空中対戦ゲームなのか。王道で幅広いユーザーが楽しめるRPGや、対象ユーザーが広く実績もあるパズルゲーム、音ゲー、育成ゲームといったカジュアルに楽しめるゲームのほうがよいのでは? 時流を読むのに長けた方であればそう思うかもしれません。

ゲームの表現がリッチになったり、新しいユーザー体験が生まれると、よくスマホの性能や回線速度の向上が引き合いに出されることがありますが、実はこのへんもあまり関係ありません。私たちがあえて“難しい”3Dアクションゲームに今チャレンジできる理由は(基本的には自分たちが面白いと思うものをつくるということですが)、ユーザー変化の後押しもあります。

このキックフライトは、先行テストプレイなどで「難しい!」というご意見を頂く一方で、東京ゲームショウのプレイブースでは、ゲーム好きの小学生たちが、私たちも驚くほどのスピードで操作をマスターしていく姿を目にしました。操作の難しさで放り出すことなく、次々とチャレンジしてくれる様子には大きな手ごたえを感じています。

この10年、ユーザーが様々なスマホゲームを体験し、スマホネイティブと呼ばれる世代も登場する中で、ユーザーのスマホゲームに対する適応力は明らかに進化しています。数年前にはごく一部のゲーマーにしか受け入れられなかった“操作性のハードルが高い”スマホゲームでも、多くの人が楽しんでくれる素地ができつつあるのではないかと思います。

新作ゲームを作るとき、これまでにない新しい「おもしろさ」「たのしさ」を作り出し、ユーザーの皆様のもとに届ける事。リスクもありますが、それが私たちのチームの目標であり、ゲーム開発において重要な要素の一つだと考えています。
[筆者プロフィール]
鷲山 優作(わしやま ゆうさく)
紙媒体のデザイン、webデザイナーを経て2011年にサイバーエージェント子会社の株式会社グレンジに入社。コミュニケーションアプリから始まりブラウザーゲーム、ネイティブゲームアプリなどのアプリ開発に従事。現在グレンジ取締役CCOを務めるとともに、2016年にサイバーエージェントが設立した、スマートフォン向けゲームに最適なUI/UX研究をする専門組織「UIUX Lab」の代表も務める。
『UIUX Lab』
https://creator.game.cyberagent.co.jp/uiuxlab/

サイバーエージェントのスマートフォン向けゲームに最適なUI/UXを研究をする専門組織。アドバイザーとして「ゲームニクス」提唱者のサイトウアキヒロ氏を招聘し、「スマートフォンで”夢中”を体感させるゲーム作り」をモットーに、ユーザーにとって使いやすく、楽しめるゲーム開発の強化とクリエイティブ力の向上に取り組んでいる。
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