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左利き用品から考える、誰にでも使いやすい道具とは……? 番外編 菊屋 〜左利き用品編〜(後編)

2019.6.26 WED

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あべちゃんのサブカル画材屋 紀行


左利き用品から考える、誰にでも使いやすい道具とは……?
番外編/菊屋 〜左利き用品編〜(後編)

左利きはもちろん、右利きにも使いやすい道具をご紹介

「左利き用グッズコーナー」では、はさみや鉛筆削りのように左利き専用の商品が販売されている。その一方で、トランプのように「右利き・左利きどちらでも使いやすい」商品も多数揃えているところが興味深い。その一例を少しご紹介しよう。


A. ゼブラ/ボールペン「サラサドライ」
ゼブラ/ボールペン「サラサドライ」

ゼブラ/ボールペン「サラサドライ」

左利きの人にとって、ボールペンや万年筆、筆ペンなどの書きものは、使いにくい文具のひとつだ。左から右に“押し書き”することになるため、紙の繊維が引っかかって書きにくいだけでなく、ペン先にインクが詰まり、インクが出なくなるなどのデメリットもある。

こちらは、紙に浸透しやすい新成分「超速乾DRY JELL」をインクに配合したことで、乾燥時間を大幅に短縮させた商品。書いたそばからインクを擦ってしまう左利きにとって、乾燥が早いという特徴は使いやすさに直結するのだ。

B. 三菱鉛筆/蛍光ペン「プロパス ウインドウ クイックドライ」

三菱鉛筆/蛍光ペン「プロパス ウインドウ クイックドライ」

三菱鉛筆/蛍光ペン「プロパス ウインドウ クイックドライ」

こちらは、ペン先に窓がついている蛍光ペン。左手で蛍光ペンを使うと、ペン先で隠れてしまうことでマーキングした線が見えない。そのため、線がガタガタししまうことも多いとか。窓がついていると安定して線が引けるとあって、左利きに人気の消費のひとつ。


C. ツバメノート/斜めに書く人のための【まっすぐノート】

罫線が斜めに入っている、ツバメノート/斜めに書く人のための【まっすぐノート】

罫線が斜めに入っている、ツバメノート/斜めに書く人のための【まっすぐノート】

さて、ノートをご紹介しよう。こちらは、罫線が斜めに引かれた不思議なノート。 ノートに字を書くと斜めになってしまう左利きの人にも使いやすい新発想の商品。


D. コクヨ/ソフトリングノート

コクヨ/ソフトリングノート

コクヨ/ソフトリングノート

巷では“左利きの敵”と評されてしまうことも多いリングノート。リングの凹凸を避けるばかりに、右ページの隙間が広くなってしまうそうだ。こちらは、リングを柔らかい素材にしているため、そのデメリットを解決している。


E.カシオ/カシオ ユニバーサル電卓

計算機は元々、右にペンを持ち、左手で打ちやすいように作られている

計算機は元々、右にペンを持ち、左手で打ちやすいように作られている

計算機は元々、右にペンを持ち左手で打ちやすいように作られているという計算機。つまり、計算機はもともと左利き用品ともいえる。こちらは、「全ての人に使い易い」を目標に開発が行なわれた電子式卓上計算機シリーズ。「=」ボタンが大きく、打ち間違いを防ぐ事ができる。

 

左利きの人口は日本で約1割ほど。血液型でいえばAB型と同じくらいの割合だ。そのため、左利き専用の商品が開発・販売されても、消費者が少なく、生産が打ち切られてしまうことが往々にしてあるようだ。そんななか、利き手に関係なく、また、年齢や身体のハンディキャップに関わらず、誰にでも使いやすい商品が、少しずつ増えてきているという。

「Apple Watchが交通系ICカードとして対応するようになってから、左利きの人々は自動改札機を通過するのが楽になったという話を聞いたことがあります。左利きは右手に時計をするから、右側にある改札に自然にタッチできて便利だということですね。マウスやペンタブなどのデジタル機器も、左利きに使いやすいようにセッティングできるものが増えてきました」

右・左利き用と2種類作るのではなく、ソフト面の設定変更だけで左利きにも使いやすい仕様にカスタマイズできる。デジタル時代の恩恵を受けて、そうした商品が増えてきているのだ。

多様性を受け入れて、継続できるものづくりを考えよう
一人でも多くの左利きが過ごしやすい生活を送ることができるように、企業と連携をしてさまざまな活動を行なっている浦上さん。左利き用の商品開発を手がけたり、学校で講演などを行なってきた。一方で、もっとも大切なのは「左利きの不自由を、周りの右利きの人たちが理解すること」と話す。

「以前、小学校に左利き用のレードルを寄付しました。左利きの子どもが使うだけではなく、右利きの子どもたちに使ってもらうことで、その不便さを体験してもらう試みです。多数派・右利きの人にとって、少数派・左利きの苦悩は体感しないと理解しにくいものですから」と、浦上さん。

また、左利きの人々に対しては「左利き用品を使うことで、道具本来の使いやすさを実感して欲しい」と話す。

「左利き特有の不自由はたくさんあります。けれど、小さい時から当たり前に右利き用の道具を使わされていた左利きの大人たちの中には、“こんなものか”と思い込んでいる人たちがたくさんいる。私自身、このお店を始める前は右利き用の道具ばかりを使っていました。ですから、自分の手に適した“当たり前に使いやすい”道具に、ぜひ出会って欲しいですね」

2020年を間近に迎えた今、性別や年齢、身体のハンディキャップなどの壁を超えて、多様性の受容が重要視されている。少数派のことも考えられた、それでいて多くの人々にとっても使いやすい道具がますます必要とされてくるだろう。そして、それはもしかすると、デジタル時代の恩恵によって、これまでにない新しい形で実現するかもしれない。
芸術家・岡本太郎による、手をモチーフにした「呼ぶ青い手」。左利きを豊富に揃える菊屋を象徴するかのよう

芸術家・岡本太郎による、手をモチーフにした「呼ぶ青い手」。左利きを豊富に揃える菊屋を象徴するかのよう


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●菊屋神奈川店(正式には、菊屋浦上商事株式会社)
1973年に文具・事務用品の店「菊屋」としてオープン。46年の歴史を持つ文房具店として営業を続けている。店内には常時約100種の左利き用品を展示販売。遠方や海外からもお客さんが訪れる左利きの駆け込み寺となっている。
住所/神奈川県相模原市中央区相模原6-26-7
アクセス/JR横浜線「相模原」徒歩10分
営業時間/9:30~18:00
休業日/土曜日(不定休)、日曜日、祝・祭日
TEL/042-754-9211
   ※土曜日来店の場合は、電話にて確認を。
URL:http://www.kikuya-net.co.jp/
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