書籍『台風家族/市井点線』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
文字に斜体をかけて強く吹く風を感じさせる
強盗事件を起こした父が母とともに失踪して10年が経った真夏のある日、実家に集まった鈴木家に起こる大騒動をユーモラスかつ感動的に描いた作品。草彅剛主演で今夏に公開予定だった同名映画(諸事情で公開延期中)をベースに、監督の市井昌秀とその妻で女優の市井早苗が共同で小説化した。表紙カバーでは、作品のモチーフのひとつである「台風」や、キャラクターが立った登場人物、メインテーマである「家族のつながり」が、イラストやタイトル文字でコミカルかつ印象的に表現されている。
Font.01「A1ゴシック R」
温かみのあるゴシック体に斜体をかけて風を表現
メインタイトルの文字は、丸みを帯びた角や線画の交差部分の墨だまりが温かな印象を与えるゴシック体「A1ゴシック R」(モリサワ)がベース。家族をモチーフにした作品内容にマッチしているため選択された。ビュービュー吹き荒れる暴風をイメージし、風の向きに合わせて文字に斜体がかけられている。
Font.02「A1ゴシック R」
タイトルと同じ書体で表紙全体に統一感を出す
著者名である市井点線(市井昌秀と市井早苗のユニット名)部分の文字は「A1ゴシック R」(モリサワ)を無加工で使用。メインタイトルと同じ温かみのあるオールドスタイルのゴシック体を使うことで、表紙カバー全体に統一感を出す工夫がされている。
Font.03「Brandon Printed One」
アナログ的な温もりのあるサンセリフ書体で印象的に
作品タイトルや著者名の欧文表記部分の文字は、人気書体「Brandon Grotesque」をベースに印刷風のかすれなどのアクセントを加えた書体「Brandon Printed One」(ともにHVD Fonts)。アナログ的な温かみを持ち、メインタイトルの書体と相性がよいため選択されている。
2019.07.11 Thu2021.09.04 Sat