プロのフォント使いを実例から解く
気になるフォント、
知りたいフォント。
デザインの構成において、最も重要な要素の一つ「フォント」。本コーナーでは、無数の選択肢から導き出されるプロのフォント使いを、素敵な実例ベースで紹介していきます。(記事一覧はこちら)
今回取り上げるのは、書籍『あなたの右手は蜂蜜の香り/片岡翔』です。
2019年7月25日 取材・文 山口 優
『あなたの右手は蜂蜜の香り/片岡翔』書籍/2019/新潮社(URL)
●Designer:黒田貴[新潮社装幀室]●Illustrator:秦直也(URL)
凛とした佇まいの書体で主人公の想いを表現
人里に迷い込み、とある出来事がきっかけで動物園に保護されることになった子グマと、自責の念からそのクマを救い出そうとする少女・雨子を描いた小説の表紙のカバー。人の言葉を理解するクマの人間っぽさやその運命が切なく温かみのある鉛筆画イラストで暗示され、少女のクマに対するまっすぐな想いがタイトル文字などで表現されている。
使用フォント1(メインタイトル)
「TBエコー R」
主人公の少女の言葉を
凛々しく柔らかな印象で

TBエコー R
メインタイトルの文字は、重心が高めで直線的なフォルムが印象的な「TBエコー R」(モリサワ)がベース。主人公の少女・雨子の言葉でもあるため、そのまっすぐな想いや女性らしさを表現する凛々しく柔らかな印象の書体が選択された。若干細らせた上で長体をかけ、字間を広めにとって円弧状に配置するなどして、タイトル部分に表情をつける工夫がされている。
使用フォント2(欧文)
「Old Man Eloquent Regular」
優美な手書き風書体で
温かみのある雰囲気に

Old Man Eloquent Regular
タイトルの日本語と対をなすように配置された英文は、優美な筆致が印象的な手書き風書体「Old Man Eloquent Regular」(Three Islands Press)。温かみがあり、流れるようなストロークが作品の世界観や表紙のイメージに合っていたため選択された。