今回は書籍『あなたの右手は蜂蜜の香り/片岡翔』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
凛とした佇まいの書体で主人公の想いを表現
人里に迷い込み、とある出来事がきっかけで動物園に保護されることになった子グマと、自責の念からそのクマを救い出そうとする少女・雨子を描いた小説の表紙のカバー。人の言葉を理解するクマの人間っぽさやその運命が切なく温かみのある鉛筆画イラストで暗示され、少女のクマに対するまっすぐな想いがタイトル文字などで表現されている。
Font.01「TBエコー R」
主人公の少女の言葉を凛々しく柔らかな印象で
メインタイトルの文字は、重心が高めで直線的なフォルムが印象的な「TBエコー R」(モリサワ)がベース。主人公の少女・雨子の言葉でもあるため、そのまっすぐな想いや女性らしさを表現する凛々しく柔らかな印象の書体が選択された。若干細らせた上で長体をかけ、字間を広めにとって円弧状に配置するなどして、タイトル部分に表情をつける工夫がされている。
Font.02「Old Man Eloquent Regular」
優美な手書き風書体で温かみのある雰囲気に
タイトルの日本語と対をなすように配置された英文は、優美な筆致が印象的な手書き風書体「Old Man Eloquent Regular」(Three Islands Press)。温かみがあり、流れるようなストロークが作品の世界観や表紙のイメージに合っていたため選択された。
2019.07.25 Thu2021.09.04 Sat