プロのフォント使いを実例から解く
気になるフォント、
知りたいフォント。
デザインの構成において、最も重要な要素の一つ「フォント」。本コーナーでは、無数の選択肢から導き出されるプロのフォント使いを、素敵な実例ベースで紹介していきます。(記事一覧はこちら)今回取り上げるのは、書籍『うそつき光秀/赤堀さとる』です。 2019年11月28日 取材・文 山口 優
『うそつき光秀/赤堀さとる』書籍/2019/講談社(URL)
●Designer:坂野公一[welle design](URL)
●Illustrator:三浦建太郎
癖の強い清朝体で武将の人生をドラマチックに
「この世から上下を無くす」という大志を抱いた天涯孤独の青年・十兵衛が、出自を偽り「明智光秀」という武士として生きていく様を描いた歴史小説。装画は『ベルセルク』などで知られるマンガ家の三浦建太郎が描き下ろしている。表紙カバーでは、光秀の人生の縮図のような装画の威力を最大限に生かしつつ、癖の強いタイトル文字や大胆なレイアウトなどで、時代映画のオープニングタイトルのようなレトロさやインパクトを演出する工夫がされている。
使用フォント1(メインタイトル)
「弘道軒清朝体 現代版」
躍動感のある毛筆系書体で
武将の人生を印象的に
メインタイトルの文字は、明治初期に使用されていた活字をデジタルフォント化した毛筆系書体「弘道軒清朝体」のうち、JIS字形準拠の「現代版」(イワタ)がベースに。古風かつ躍動感あふれる筆致が時代小説と相性が良く、「うそつき光秀」というタイトルの語感ともマッチしていたため選択された。よりドラマチックな印象になるよう、文字のラウンドを丸めて時代がかったレトロさを強調する工夫も施されている。
使用フォント2(著者名)
「秀英初号明朝 撰」
タイトルに合わせて
古風なイメージの明朝体に
著者名の文字は、力強い骨格や勢いのあるハライなどが印象的な明朝体「秀英初号明朝 撰」(モリサワ)。装画やメインタイトルとの相性を考慮し、活字時代の重厚なデザインを受け継いだ書体が選択された。
使用フォント3(タイトルの欧文)
「Trajan Regular」
美しい曲線を持つ
歴史的なセリフ体を選択
タイトルの欧文表記は、ローマ皇帝トラヤヌスに由来を持つ古典的なイメージのセリフ体「Trajan Regular」(アドビ)に。曲線やハライの美しさがメインタイトルや著者名に使用した書体に通じ、装画の荘厳さを引き立たせるため選択された。
気になるフォント、 知りたいフォント。
BACK NUMBER