今回はコミックス『神様のウロコ 1/日ノ原巡』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
程よい軽さのある文字でクスッと笑える印象に
新作の執筆に行き詰まって田舎に帰った小説家の智治と、彼が故郷で出会った美形の龍神の恋愛模様を描いたBLコミックス『神様のウロコ 1/日ノ原巡』の表紙カバー。現代の世の中に和服姿の龍神が登場するという作品の神秘的な世界観が、端麗なメインイラストや抽象的な雲の意匠、龍の爪をイメージしたパターン、レトロ感を強調したタイトル文字などで印象的に表現されている。
Font.01「ライラ DB」
篆書体風の文字を加工してレトロ感を強調
メインタイトルの文字は、竪琴を連想させる優しく不思議な雰囲気の書体「ライラ DB」(フォントワークス)がベースに。その重心が高く縦に長い篆書体風のデザインが、龍神と人の恋愛を描いた作品の神秘的でレトロな雰囲気に適しているため選択された。
レトロ感をより強めるため、ステンシル風の加工やエッジのラウンド加工、墨だまりのようなにじんだ感じの加工が施されている。また、長体をかけた文字と平体をかけた文字を混在させることで、水面に映った文字の揺らめきをイメージさせるという技ありの工夫も。
Font.02「ライラ DB」
タイトルロゴに合わせたデザイン書体で統一感を
作者名「日ノ原巡」部分の文字は、作品の世界観を意識してタイトルロゴと同じ「ライラ DB」(フォントワークス)が選択された。全体のバランスを考慮して、文字を細めたり、ステンシル風に加工するなどして使用されている。
Font.03「Fur Light」
全体の雰囲気を考慮してにじんだ風合いの文字に
タイトルの欧文表記「KAMISAMA NO UROKO」の文字は、ペンで手書きしたような遊びのある風合いが特徴的な書体「Fur Light」(T-26)をチョイス。インクがにじんだような文字が、作品の世界観やタイトルロゴの方向性と相性がよいため選択された。
2019.12.26 Thu2021.09.03 Fri