今回は書籍『ひこばえ/重松清』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
伸びやかな文字を加工して芽吹きのイメージに
48年前に生き別れた父親の死を知らされたのを機に、その足跡を辿り直しながら自分と父親との関係に向き合おうとする主人公の姿を描いた小説『ひこばえ/重松清』の表紙カバー。
同じ駅のホームをモチーフにしながらも上下巻で異なる時代感のメインイラストや、ひこばえ(切り株から生えてくる若芽)をイメージしたタイトル文字などで、作品のテーマである「変化すること」や「繋いでいくこと」が表現されている。
Font.01「筑紫オールド明朝 R」
表情豊かな文字で伸びやかな印象に
メインタイトルの文字は、伸びやかなフォルムを持つ表情豊かなオールドスタイルの明朝体「筑紫オールド明朝 R」(フォントワークス)がベースに。ボカシやデフォルメなどを施して書体が持つ印象を強調することで、まばゆい太陽を浴びて発芽するイメージが表現されている。
Font.02「筑紫明朝 D」
タイトルに合わせた雰囲気ある書体に
著者名や巻次、出版社名などの文字は、活字のような味のある明朝体「筑紫明朝 D」(フォントワークス)。メインタイトルの雰囲気に合わせ、フトコロが狭く伸びやかなフォルムの書体が選択されている。
Font.03「Centaur MT Regular」
他の文字要素に合わせ趣のあるローマン体に
タイトルや著者名の欧文表記部分は、中世ヨーロッパの書体デザイナー、ニコラ・ジェンソンによる活字書体を復刻した「Centaur MT Regular」(Monotype)。メインタイトルや著者名などとの相性を意識し、流麗で雰囲気のある書体が選択されている。
2020.03.19 Thu2021.09.03 Fri