今回は映画『フェアウェル』のポスターの使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
明朝体風の文字を加工して端正で優しい雰囲気に
世界各国に散らばっていた親戚一同が、余命いくばくもない祖母に会うために偽りの口実を設けて帰郷し、病状を知らされていない祖母に真実を告げるかどうかでぶつかり合うハートウォーミングな映画『フェアウェル』(近日公開 *4月3日現在)。ルル・ワン監督の実体験をもとに制作され、主演のオークワフィナがアジア人女性初、第77回ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞するなど高い評価を得た。
日本版ポスターは、本国版の品のある雰囲気を大切にしたデザインを踏襲。そのうえで、余白を意識してタイトルなどの文字要素がすっきりと引き立つように仕上げられている。
Font.01「フォーク M」
明朝系書体をベースに欧文書体の佇まいをプラス
メインタイトルの文字は、細い横画と太い縦画で構成された明朝体風の「フォーク M」(モリサワ)がベースに。本国版ポスターのタイトルロゴに使用されているローマン体を意識して線を部分的に細めたり、セリフをあしらったりして、端正で優しい雰囲気に仕上げられている。
Font.02「筑紫Aオールド明朝 E」
タイトルロゴに合った品のあるフォルムの書体に
受賞歴やタイトル下のスタッフ・キャストクレジットは、伸びやかで美しいハネやハライが印象的なオールドスタイルの明朝体「筑紫Aオールド明朝 E」(フォントワークス)。その端正なデザインや品のある筆致が、タイトルロゴの印象に合っていたため選択された。
Font.03「光朝」
力強さと繊細さを兼ね備えた書体に
キャッチコピー部分の文字は、細い横画と太くて力強い縦画で構成された明朝体「光朝」(モリサワ)。タイトルロゴや他の文字要素との相性やバランスを意識し、品格があり繊細な雰囲気をあわせ持つ書体が選択された。
2020.04.03 Fri2021.09.03 Fri