今回は書籍『ブルックリン・フォリーズ/ポール・オースター(著)、柴田元幸(訳)』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
装画の雰囲気に合わせて癖の強いタイトル文字に
六十歳を前に、離婚して静かに人生を振り返ろうと故郷のブルックリンに戻ってきた主人公が巻き込まれる思いがけない冒険を、ウィットに富んだ文章で描いた小説『ブルックリン・フォリーズ/ポール・オースター(著)、柴田元幸(訳)』。アメリカ文学界を代表する物語の名手、ポール・オースターの人気作の文庫化にともないデザインも刷新された。
表紙カバーでは、ニューヨーク・ブルックリンに生きる人々によって織りなされる悲喜こもごもな作品世界が、独特のタッチの装画と、その雰囲気や構図に合わせたタイトルロゴなどで表現されている。
Font.01「メガG Regular」
デフォルメの強い文字を装画になじませる
メインタイトルの文字は、大胆にデフォルメされたデザインが印象的なゴシック体「メガG Regular」(視覚デザイン研究所)がベースに。装画で描かれている、ブルックリンの街並みにある建物やレンガ、外階段などの直線的なモチーフと、柔らかさを感じさせる人物とのコントラストが、書体の特徴にマッチしていたため選択された。
Font.02「見出ゴMB31」
オーソドックスな文字でタイトルを引き立たせる
著者名の文字は、落ち着きのあるゴシック体「見出ゴMB31」(モリサワ)に。オーソドックスな書体を使用することで、癖の強いメインタイトルを引き立たせるのが狙い。
Font.03「URW Grotesk Regular」
タイトルとの相性のよいサンセリフ体に
作品名や著者名の欧文は、オーソドックスなサンセリフ体「URW Grotesk Regular」(URW Type Foundry)に。「Helvetica」のような正統派の印象と、「Futura」のような幾何学的な特徴をあわせ持つため、メインタイトルとの相性がよいと判断して選択された。
2020.06.18 Thu2021.09.03 Fri