今回は書籍『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい/鈴木純』の使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
切れ目やうねりのある文字で生物のような雰囲気に
植物観察家の鈴木純が、街中で見つけた植物にずんずん近づいて、その個性的な見た目や生き方、謎を楽しむというコンセプトの“植物観察本”『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい/鈴木純』。漫画のようなコマ割りで500点近い写真がレイアウトされており、読み進めながら著者と一緒に植物を観察しているような感覚を味わうことができる。
表紙カバーでは、同書の「身近な植物がこんなにも不思議で面白くてたくましい」というメッセージが、植物を際立たせたメインビジュアルや生物を思わせる有機的なタイトル文字などで表現されている。
Font.01「オリジナル」
途切れ途切れの文字で生物を想起させる
タイトルや著者名の文字は、書籍のコンセプトに合わせて作り起こされたオリジナルのもの。デザインの初期段階に「どんな雰囲気の文字が合うか」を意識しながら仮の文字列でアイデア出しが行われ、その中のひとつをベースに考案された。
下図はその元になった案。手書きした途切れ途切れの文字からアイデアを広げ、線のうねりや規則性をプラスしながら仕上げられた。なお、タイトルや著者名はすべて銀の箔押しにすることで、控えめながらも目にとまりやすくする工夫がされている。
Font.02「游ゴシック体 B」
柔らかいフォルムと安定感のある書体に
帯のキャッチコピーの文字は、柔らかいフォルムと安定感を併せ持ったゴシック体「游ゴシック体 B」(字游工房)に。全体の雰囲気を壊すことなく、しっかりと目立たせるため、線に抑揚がありあたたかで有機的な雰囲気のゴシック体がチョイスされている。
2020.10.15 Thu2021.09.03 Fri