今回は書籍「韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション12『うさぎと潜水艦/朴範信(著)、齋藤日奈(訳)』」のフォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
特徴的な形の書体を使ってニュアンスを出す
翻訳家・きむふながお勧めする韓国文学の短編小説を、日本語と韓国語の2言語で紹介するシリーズの最新刊「韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション12『うさぎと潜水艦/朴範信(著)、齋藤日奈(訳)』」。軍事政権下のソウルを舞台に、軽犯罪者たちを乗せた護送バスの中で起こるできごとが風刺的に描かれている。
表紙はシリーズすべて共通で、B6よりもコンパクトな判型にカバーをつけず、韓国の小説に気軽に触れられるデザインに。また、ロゴを箔押しして書籍としての存在感を出したり、形に特徴のある書体をタイトルやコピーに使用して文字を印象的に見せる工夫もされている。
Font.01「SimSun(宋体)」「ZENオールド明朝N R」
特徴のある明朝系書体でニュアンスをつける
メインタイトルおよび著者名、コピー部分の文字はすべて、かなが「SimSun(宋体)」(ZHONGYI Electronic)、漢字がオールドスタイルの明朝体「ZENオールド明朝N R」(エイワン)に。文学シリーズということもあり、上品で繊細な明朝系書体が採用されている。
表紙にコピーを入れて文字をビジュアル的に印象深く見せるというコンセプトのため、かなには正統派の明朝体ではなく字形などに歪さのある「SimSun」が選択された(OSなどの環境の違いによって「宋体」と表示されることもある)。
なお、「SimSun」はWindowsやMicrosoft Officeなどに標準搭載されている簡体字フォントだが、新しいバージョンでは書体デザインが整えられている。そのため本作ではあえて味のある古いバージョンが使用された。
Font.02「游ゴシック体 B」
伝統的な角ゴシック体を箔押しして存在感を
ロゴ部分の文字は、伝統的なスタイルと読みやすさを併せ持つ角ゴシック体「游ゴシック体 B」(字游工房)に。選び抜かれた一篇の小説を丁寧に読むような、本としての存在感をきちんと出すため、オーソドックスな書体で作成されたロゴが箔押しされている。
2020.11.05 Thu2021.09.03 Fri