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気になるフォント、 知りたいフォント。

2020.11.12 Thu2021.09.03 Fri

コミックス『君に紡ぐ傍白 1/矢坂しゅう』

取材・文:山口 優

『君に紡ぐ傍白 1/矢坂しゅう』コミックス/2020/竹書房
●Designer:内古閑智之[CHProduction]

今回はコミックス『君に紡ぐ傍白 1/矢坂しゅう』のフォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。

現代的な書体を加工し情緒的な雰囲気を同居させる

夢を諦め新たな生活を送る大学二年生の遥香と、役者になる夢を追い続ける一年生の菜央。「舞台」に対して真逆の想いを持つふたりが出会い、惹かれあっていく様子を描いたガール・ミーツ・ガール作品『君に紡ぐ傍白 1/矢坂しゅう』の表紙カバー。

主人公たちの「出会い」や「舞台」に関する想いの違いが、ふたりの女性の交差するシーンを二分割して上下に配置したイラストや、「古風だけれど現代的、「ウェットだけれどドライ」などの相反する要素が同居したタイトルロゴで表現されている。

Font.01「TP明朝 ハイコントラスト EL」 
ドライな書体を加工して独特の湿度をプラス

「作品タイトル」部分(左)、制作過程(右)ベースのフォントは「TP明朝」

メインタイトルの文字は、デジタルデバイスでの読みやすさを考慮してデザインされた現代的な明朝体「TP明朝」(タイププロジェクト)がベースに。同書体は横画の太さの違いにより「ハイコントラスト」「ミドルコントラスト」「ローコントラスト」の3タイプが用意されているが、ここではもっとも横画の細い「ハイコントラスト」がチョイスされ、ウェイトも極細の「EL」が選択されている。

右図はタイトルロゴの制作過程。洗練されたドライな書体に、墨だまりや細い糸のような情緒的なモチーフを加えることで、「百合×演劇」が題材の作品に漂う独特の湿度や繊細さ、主人公ふたりの舞台への対照的な想いなどが表現されている。

Font.02「Caslon #540 Roman」
繊細なローマン体で品よくさり気なく

「欧文」部分
Caslon #540 Roman
Caslon #540 Roman

欧文部分は、明朝体をベースにしたタイトルロゴの雰囲気に合わせて繊細な印象のローマン体「Caslon #540 Roman」(Linotype)に。全体のバランスを考慮し、目立ちすぎないよう品よくさり気なくレイアウトされている。

Font.03「游明朝体 M」
クラシカルな書体に長体をかけて現代的に

「著者名」部分
游明朝体 M

著者名部分は、「時代小説が組めるような明朝体」をコンセプトに開発された「游明朝体 M」(字游工房)。現代的な書体に古典的な装いを持たせたメインタイトルとは逆に、クラシカルな文字に長体をかけて現代的な佇まいにすることで、印象深くする工夫がされている。

Font.04「TP明朝 ハイコントラスト R」
メインタイトルに合わせ洗練された書体に

「巻数」部分
TP明朝 ハイコントラスト

巻数の「1」もタイトルロゴのベース書体と同じ「TP明朝 ハイコントラスト」(タイププロジェクト)に。視認性や全体のバランスを考慮して、ウェイトは「R」が選択されている。

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