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2020.12.10 Thu2024.04.06 Sat

映画『海の底からモナムール』の使用フォントを解説

取材・文:山口 優

『海の底からモナムール』映画/2020/アルミード (C)Besoin d'Amour Film Partners
●Designer:Maho KONDO

今回は映画『海の底からモナムール』のポスタービジュアルの使用フォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。

個性的かつ気品のある文字でしっとりとした印象に

崖から飛び降りた17歳の時の姿のまま海の底を漂う女子高生と、彼女が想いを寄せる青年の関係を描いた日仏合作の純愛ホラー映画『海の底からモナムール』。フランスの名匠エリック・ロメール監督作品の音楽などでも知られるロナン・ジルがメガホンを取り、日本を舞台に、日本のキャストで撮影されました。

ポスターでは、作品の象徴的なシーンをメインビジュアルに据え、個性的かつ気品のあるタイトルロゴなどで、ホラーに寄りすぎず恋愛に寄りすぎない、“純愛ホラー”らしいミステリアスでしっとりとした印象が演出されています。

Font.01「なごみ極細ゴシック」 
品のある現代的な文字で ロマンティックな印象に

「作品タイトル」部分
なごみ極細ゴシック
制作工程。ベースとなったフォントは「なごみ極細ゴシック」

メインタイトルの文字は、オープンソースフォント「M+」の漢字にオールドスタイルのかなを加えた「なごみ極細ゴシック」(Line Font)がベースに。ホラーでありながらも純愛を描いたロマンティックな要素が含まれる日仏合作映画であることを念頭に、個性的で気品があり、現代的な印象を併せ持つ書体を使ってミステリアスでしっとりした印象になるよう仕上げられています。

下図はその制作工程。全体のバランスを整えたあと(上)、“海の底から”をビジュアル的に表現し(中)、説明的になりすぎたためシンプルに可読性をアップさせて全体のバランスが整えられました(下)。なお、さんずいの一部を雫のモチーフに置き換え、作品のキーワードとなる「海(水)」をビジュアル的に一目で感じとれるような工夫もされています。

Font.02「クレー DB」
繊細な手書き風文字で 話し言葉のような雰囲気に

「キャッチコピー」部分
クレー DB
クレー DB

キャッチコピー部分の文字は、鉛筆やペンなどで書いたような手書き風文字「クレー DB」(フォントワークス)に。主人公のひとりである幽霊の女子高生ミユキの意思を表す文言のため、硬質で端正な文字を使って、彼女の頑なながらも純粋な気持ちが繊細でありながら強い印象で話し言葉のように表現されています。

Font.03「はんなり明朝」
上品な明朝体で しっとりとした印象に

「クレジット」部分
はんなり明朝
はんなり明朝

キャスト・スタッフのクレジット部分は、築地体を参考に制作された優しい雰囲気のかなが特徴的な明朝体「はんなり明朝」(Typing Art)に。タイトルとキャッチコピーに個性的で硬質な雰囲気の書体を使用しているため、クレジットには主張しすぎず上品な書体が選択されました。純愛ホラーという作品のコンセプトに合わせ、ポップにならず、しっとりとした印象になるよう仕上げられています。

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