今回は書籍 『少女マンガのブサイク女子考』のフォントをご紹介。本記事はデザイン構成において重要な「フォント」の選定プロセスや加工方法を、貴重なプロの実例から紐解いてデザイン制作に役立てる連載です。
明朝体とゴシック体を混ぜて漫画の吹き出し風に
少女漫画の「ブサイクヒロイン」にスポットを当て、漫画批評と同時に外見的な美醜で人を評価する“ルッキズム”についても独自の視点から考察したエッセイ本。萩尾望都や山岸凉子、岡崎京子、安野モヨコら伝説的作家から若手作家の作品まで、全26作品が収録されている。
表紙カバーではその異色のテーマが、80年代の少女漫画を意識したタッチのイラストやファンシーな配色、ぽっちゃりした女の子や瓶底メガネなどの正統派から外れたモチーフ、吹き出し風のタイトル文字などで表現されている。
Font.01「游ゴシック体 M」「UD明朝 L」
漫画の吹き出しを意識して2種類の書体を組み合わせる
メインタイトルの文字は、漫画の吹き出しをイメージして明朝体とゴシック体を組み合わせたものに。漢字および「マンガ」の文字はオーソドックスなゴシック体「游ゴシック体 M」(字游工房)、それ以外のカタカナとひらがなは横画と縦画の太さの差が少なく可読性に優れる明朝体「UD明朝 L」(フォントワークス)が選択されている。
Font.02「UD明朝 L」
タイトルに合わせてスタンダードな明朝体に
著者名部分の文字は、オーソドックスな「筑紫明朝」をベースに視認性を追求した「UD明朝 L」(フォントワークス)に。全体のまとまりを意識し、メインタイトルのカナに使用されているものと同じ書体が採用されている。
Font.03「見出ゴMB1」
力強いゴシック体で強く読ませる工夫を
帯のキャッチコピー部分は、太く読みやすい伝統的なゴシック体「見出ゴMB1」(モリサワ)に。読者に強く訴えかけるような効果を意識して、しっかりとした骨格を備えた力強いゴシック体がチョイスされた。
Font.04「赤のアリス」
装飾的な文字で少女漫画のイメージに
帯のコピー部分の文字は、エレメントの端にかわいらしい装飾がついたレトロモダンなデザイン書体「赤のアリス」(タイプバンク)に。書籍のテーマである少女漫画のイメージにピッタリだったため選択された。
2021.01.28 Thu2021.09.03 Fri