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常に新しい領域を挑戦し続けるTakramのデザインメソッド、Takramでグラフィックデザイナーが活躍する理由

2024.4.25 THU

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常に新しい領域を挑戦し続けるTakramのデザインメソッド
Takramでグラフィックデザイナーが活躍する理由
デザイン・テクノロジー・ビジネスの3領域にまたがりながら、常に新しい領域に挑戦し続けるクリエイティブ・イノベーション・ファーム「Takram」。その実績は多岐にわたり、手掛けたプロジェクトは世界のデザインアワードを多数受賞する。実際に目にするプロダクトやWebサービスのクオリティは高く、デザイン性に優れる。これらのプロジェクトはどのようにして創られていくのか? その秘密を「Takram」で活躍するデザイナーに取材しました。

<取材・文/編集部 撮影/P-throb 取材協力/Takram>
プロジェクトのあらゆるシーンに登場するデザインという仕事
Q.早速ですが、Takramでグラフィックデザイナーのお仕事の内容を簡単に教えていただけますか
太田さん 簡単にいうとビジュアル全般において責任を持つということだと思います。ブランディング案件であればアイデンティティや世界観をつくることから始まり、納品物まで含めたビジュアル全般です。また、クライアントとのコミュニケーションをスムーズに進めるための資料なども制作します。抽象的なコンセプトや未来のシナリオを視覚化するという仕事もあります。文章だけでなく、ビジュアルがあることで齟齬なく共通理解しやすくなると考えています。
Q.グラフィックデザイナーの仕事はグラフィックワークに限らないということでしょうか?
谷口靖太郎さん

谷口靖太郎さん

谷口さん グラフィックデザイナーだとしても、一般的なグラフィックデザインだけをするのではなく、いろいろなものをデザインするというのがTakramですね。もちろん、一応肩書はあるのですが、肩書別に業務が分かれているというわけではなくて、何でもやるという感じです。デザインという切り口でいえば、プロジェクトの始まりから終わりまで、さまざまな場面でデザインが登場するわけです。そういう意味で、領域横断的に仕事をします。
神原啓介さん

神原啓介さん

神原さん そうなんですよね。Takramの仕事は多種多様で、紙媒体やWebデザインだけでなく、プロダクトデザインやアプリのUIデザイン、プロトタイピング、ブランディングなど多岐にわたります。リサーチの結果を視覚的に表現するといったこともデザインワークです。そういう意味では、グラフィックデザインという職能を超えて、幅広い仕事ができるといえます。
Q.グラフィックデザインを担当するスタッフは何名くらいいらっしゃるのでしょうか
太田真紀さん

太田真紀さん

太田さん 私と同じような立ち位置のスタッフは、現在社員としては4名、インターンを含めれば6名です。私はイラストレーションをベースとしていますが、タイポグラフィのスペシャリストだったり、3DCGや映像を得意とする人もいます。それぞれが個性を発揮しながら仕事をしています。
神原さん もちろんグラフィックデザイナーだけでなく、谷口さんや私のようなエンジニアもいます。ざっくりではありますが、1/3がデザインのバックグラウンドがあるスタッフで、1/3がソフトやハードウェアのエンジニアリングができるスタッフ、残り1/3がリサーチなどを含むビジネス系ワークをやっているという感じです。ただ、プロジェクトにおいてデザインはデザイナーに任せるというのではなく、エンジニアとしてデザインワークに関わっていきます。先ほども話にあったように、デザイナーであってもエンジニアであっても、それぞれが領域横断的に取り組んでいるのが特徴です。

太田さん エンジニアリングやビジネスだけという人はいなくて、ある意味、みんなデザイナーとして仕事をしていますね。
Q.実際のプロジェクトでは、デザイナーは具体的にどのような関わり方をするのでしょうか
谷口さん 直近の事例では「Monicia(モニシア)プロジェクト」があります。「PMS(月経前症候群)」という女性特有の悩みがあり、根本的な治療法は確立されていないけれど、何らかのサポートができるソリューションはないだろうか?というクライアントの与件がありました。まずはこのテーマ自体を理解するために、インタビューを含むリサーチから取り組みました。Takramでは、リサーチを重視していて、それをもとにクライアントと打ち合わせます。この事例でいえば、PMSの症状を完全に治療することは難しいと言われている中で、症状と付き合いながら改善していくためのサポートなら出来るのではないかという方向性で提案を開始しました。その際、ムードボードなどを作成して展開パターンを協議したりするのですが、文章だけでは説明しにくいものもあり、ビジュアルを利用したコンセプトの共有などはとても重要になってきますね。
太田さん スマホアプリをつくるとしても、いきなり画面をデザインするのではなく、そのアプリ自体がどういうものなのかをチームで考えていきます。その際、スケッチなどがあるとスタッフ間での理解も深まるし、クライアントとの打ち合わせでもそういったスケッチアイデアなどをもとに議論していくというプロセスを取ります。スケッチ自体はiPadでやることが多いですね。打ち合わせの場で描いて、それをSlack(ビジネスチャット)ですぐに共有できるとか効率的な方法をとります。デバイスやアプリのUIデザインの際もグラフィックデザインのスキルが活きる場面がたくさんあります。製品開発プロセスのすべての局面でデザインが関与しているんです。

神原さん このプロジェクトは約3年間かかっていますが、トータルでは10名くらいのスタッフが関わっています。リサーチを経てコンセプトづくりから初期提案、具体的なプロダクトデザイン、実制作などのフェーズごとにチームスタッフがアサインされました。

太田さん デバイスとアプリという二つのモノを取り扱うにあたって世界観は統一する必要があります。つまりブランディングが必要、というフェーズになって私はチームに参加しました。具体的には、このプロジェクトの基本的なコンセプトを示すステートメントをつくり、さらに世界観の視覚化するためのデザインガイドラインなどを制作し、その後に具体的なUIデザインなどを行っていきました。
Moniciaのブランドガイドライン

Moniciaのブランドガイドライン

コミュニケーションのために、デザイン以外の領域にも関心を持つことが大切 
Q.例えば、今Takramが求めているデザイナーとはどんな人材でしょうか?
谷口さん Takramが大事にしている考え方として「デザイン」と「テクノロジー」、「ビジネス」という3つの領域があります。仕事というのは、具体的なプロダクトありきで始まるのではなく、ビジネス的なアイデアを起点として始めることも多いんです。ビジネス的な要件を理解したうえで、デザインやテクノロジー、そしてビジネス的な解決策を提案していくものだと。その意味では、デザインという領域だけでなく、他の領域にも関心を持つことが大切です。全部というのは大変なので、少なくともデザイナーというスペシャリストとしての領域と、もうひとつ領域を持てるといいよね、という話をよくします。

神原さん クライアントとの打ち合わせも、経営層や決裁権を持った方と話すことも多いので、ビジネスという視点で話ができることは大切です。もちろん、デザイナーにすべて任せるというわけではありません。ビジネスを得意とするスタッフもおり、もちろんデザイナーも必要です。3つの領域を理解したうえで、チームとして機能することが大切だと考えています。

太田さん もちろん、ビジネス的な観点だけを重視する訳ではありません。プロジェクトごとに何が成功なのかを、クライアントとも議論していくことが大切なんです。もちろん、そこにアイデアを具体化したデザインがあることで議論を深めることもできます。デザイナーとしてデザインするだけでなく、チームでも対クライアントでもコミュニケーションを取れることが重要だと思います。その意味では、デザイン以外の「テクノロジー」や「ビジネス」といった領域にも興味があって、積極的に関わっていこうとする人と一緒に仕事がしたいですね。
Takramのグラフィックデザイン用の作業スペース。色温度が管理された環境光下で適正なデザイン作業を行える

Takramのグラフィックデザイン用の作業スペース。色温度が管理された環境光下で適正なデザイン作業を行える

Takramでは、さまざまなオリジナルノベルティを制作。デザインはもちろんTakramのデザイナーが担当する

Takramでは、さまざまなオリジナルノベルティを制作。デザインはもちろんTakramのデザイナーが担当する

Takramでは、プロジェクトのスタートからエンドまで、すべてのフェーズでグラフィックデザインのスキルと経験を活かすことができる。また、エンジニアリングやビジネスのスペシャリストなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーと学び合い、コラボレーションできるのみならず、グラフィックデザイナー自身も、グラフィックデザインの枠を超えて、新しい領域にチャレンジできる。さらにオフィスデザインや社内施設など、グラフィックデザイナーを積極的に支援する機能が充実している。エンジニアやビジネススタッフもデザインに対する意識が高いことから、スタッフ間で専門知識を含めた情報交換も盛んに行われる社風を持っているのも特長だ。

これはスキルアップを目指すグラフィックデザイナーにとって最適な職場環境と言えるだろう。こうした環境やビジョンが、Takramでグラフィックデザイナーが活躍する理由と言えそうだ。


<今回、取材に協力してくれたお三方>
Lead Design Engineer 神原啓介さん UIデザインやソフトウェアエンジニアリング関連分野を中心に様々なプロジェクトを手掛けるデザインエンジニア。数々の研究開発にも携わる。

Lead Design Engineer
神原啓介さん
UIデザインやソフトウェアエンジニアリング関連分野を中心に様々なプロジェクトを手掛けるデザインエンジニア。数々の研究開発にも携わる。

Visual Designer 太田真紀さん グラフィックデザイナー・イラストレーター。プロジェクトのコンセプト作りから具現化のプロセスまで、ビジュアル全般に幅広く携わる。

Visual Designer
太田真紀さん
グラフィックデザイナー・イラストレーター。プロジェクトのコンセプト作りから具現化のプロセスまで、ビジュアル全般に幅広く携わる。

Lead Design Engineer 谷口 靖太郎さん 領域横断的な知識や技能による問題発見と、イノベイティブなソリューションをデザインする価値を探求するデザイナー兼エンジニア。

Lead Design Engineer
谷口 靖太郎さん
領域横断的な知識や技能による問題発見と、イノベイティブなソリューションをデザインする価値を探求するデザイナー兼エンジニア。

         
Takram
常に新しい領域に挑戦し続けるデザイン・イノベーション・ファーム。東京・ロンドン・ニューヨークをベースに、50名ほどのメンバーがさまざまなプロジェクトに取り組む。手探りの中からでも新しい価値を具現化することへの情熱を持っている。
url. https://ja.takram.com/
         
【information】
Takramでは、現在グラフィックデザイナーを募集しています。常に新しい領域に越境し、それによって成長し続けていたい。社会にインパクトを与える仕事がしたい。Takramは、そんな価値観を共有できる仲間を探しています。

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