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インドを代表するデザインオフィスに訊く(1)~イームズとル・コルビュジエによるインドデザインの夜明け~エレファントデザイン編

2020.4.3 FRI

インドを代表するデザインオフィスに訊く(1)
~イームズとル・コルビュジエによるインドデザインの夜明け~
「エレファントデザイン」編
2020年1月8日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)


グーグル、マイクロソフト、アドビのCEOの例を挙げるまでもなく、世界のITがインド人抜きには語れないようになった今、同国はデザインの領域でも頭角を現し始めてきた。たとえば、イタリアの老舗カロッツェリアであるピニンファリーナは、現在、インド第2の自動車メーカーであるマヒンドラ&マヒンドラの傘下にあり、スポーツカーや乗用車以外にも鉄道車両やヨットなどのデザインを手掛けている。

また、インドは中国と並び、欧米で供給過多ぎみとなった若手デザイナーの雇用の受け皿にもなり、テクノロジーに続いてデザインを社会改革の原動力の1つに据えようとする動きも見られる。

本記事では、数々の受賞歴を誇るインドのトップクラスのデザインオフィスの創業者のインタビューを6回に分けてお届けする。製品や空間デザインのみならず、UX設計や企業のデザイン&ブランド戦略の策定まで広く手掛ける「エレファントデザイン」(同名の日本企業とは無関係)の共同設立者で、同社のディレクターを務めるアシシュ・デシュパンデ氏である。

なお、インタビューのアレンジメントは、日印の架け橋として日本企業向けの視察・リサーチ業務、スタートアップとのマッチング、インド関連イベントのプロデュースなどを行っている「ムーンリンク株式会社」にしていただいた。

イームズとル・コルビュジエによるインドデザインの夜明け

インドの近代的なデザイン教育は、約60年前の国立デザイン大学(NID)の設立から始まりました。それに先立って、どのようなカリキュラムを組むべきかのアドバイスを受けるためにチャールズ・イームズ夫妻をインドに招聘し、彼らは3ヶ月間の滞在中に各地を視察して「ザ・インディア・リポート」にまとめたのです。これを基にNIDが作られ、その卒業生たちが各地にデザインスクールを開校していきました。そのときから、インドのデザイン教育は社会問題の解決にフォーカスするという大きなテーマがあり、その点において一貫しています。
たとえば、ロタはご存知ですか? ロタは、水差しや植物の保存、液体の計量など色々な用途に使えるインドの伝統的な容器です。日本にも、そのような昔から伝わる日用品があると思います。

イームズは、ロタを見て「これは誰のデザインでしょうか?」と問いました。もちろん、特定のデザイナーなしに、歴史の中で洗練されてきた製品だと知ってのことで、いわゆるアノニマスデザインに注目したわけです。


彼が言わんとしたのは、外に目を向けるのではなく、インドの中にある優れたデザインに着目し、それと同じように問題解決を行なっていくことの大切さでした。そして、このことが、インドのデザイン教育のベースとなったのです。

インドでは、軍隊式の画一的で上意下達の教育が一般的でした。そこでは、物事の本質を知るよりも、良い点数を取ることが重視されます。私自身も、そのような環境の中で育ってきたので、NIDでの学びは驚きに満ちていました。

NIDでは試験というものがなく、学生たちが自ら課題を見つけて解決に当たることが奨励されています。教授たちはやり方や方向性は示すだけで、何かを強制することはありません。このラジカルな教育のあり方の違いに出会ったことで、私の人生は変わったのです。

イームズと同じように、インド政府はル・コルビュジエを招き、インドで最初の近代的な都市計画の策定を依頼しました。コルビュジエは1950年代後半から60年代前半にかけて20数回もインドを訪れ、その結果できあがった街が、チャンディガールです。

このような施策が行われた背景には、1947年にインドがイギリスから独立してしばらく続いた暗黒時代がありました。そこから脱するために、政府はイームズやコルビュジエの力を借りて近代化を進めたのです。と同時に、自らの歴史や伝統に目を向けることの重要性にも気づかされたことになります。

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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