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インドを代表するデザインオフィスに訊く(4)~日本のデザインに学ぶこととインド向け日本製品への違和感~エレファントデザイン編

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インドを代表するデザインオフィスに訊く(4)
~日本のデザインに学ぶこととインド向け日本製品への違和感~
「エレファントデザイン」編
2020年1月14日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

日本のデザインに学ぶこととインド向け日本製品への違和感

実は、私は過去に3回、日本を訪れたことがあります。まず、2003年に名古屋で開かれた、世界グラフィックデザイン会議に参加しました。市内の様子も知りたかったので、カンファレンスセンターから街の反対側まで歩いていって、また戻ってきたことを覚えています。とても素敵な街でしたね。

2013、2014年ごろには、横浜にも行きました。AOTS((財)海外技術者研修協会)とJDP(日本デザイン振興会)が共同でインドから代表団を招き、私たちが日本のグッドデザイン賞と同様の制度を確立する手助けをしてくれたのです。8日間に及ぶセッションには、田中一光さんやGKデザインの方々をはじめ、多くのデザインの先達たちが来られて、グッドデザイン賞の成り立ちなどについて教えてくれました。

3度目は、日産自動車のプロジェクトに参加するために再び横浜を訪れたときです。その際には、同社のデザインセンターに詰めていました。

すべて仕事での訪日だったので、いわゆる観光的なことはできなかったのですが、もしまた訪れる機会があれば、都市部ではなく地方を回って、どのようなところなのかを知りたいと思います。

日本のデザインは、とても成熟していて、見倣うべきところが多いです。とはいえインドのデザインも優れていますし、学生たちの作品を見てもわかりますが、彼らは皆、身の回りの問題をデザインの力で解決しようとしています。 もちろん、インドでも日本製品を見かけます。ソニーやパナソニックなどのビッグネームです。もちろん、自動車メーカーも進出しています。

それらを見て私が思うのは、インド向けの日本製品が、どれも西洋風だということです。特に自動車にはドイツやアメリカの影響が感じられ、様々な機能を満載しています。

しかし、日本文化の本質はシンプルさを重んじることにあり、シンプルな製品やシンプルな解決法を生み出すことによって生活を謳歌してきたのではないでしょうか? 私には、インドで見かける日本製品に、そのようなシンプルさを感じることができません。

その意味で、私たちは日本の豊かな文化を象徴するデザインではなく、どこか間違った側面を見せられているように感じます。それは、両者の間にギャップがあるからです。ただ、グローバル市場を考えると、機能を満載することも致し方ないのかもしれません。いずれにしても、私たちには選択肢が限られているので、目の前の製品を購入せざるを得ないところがあります。

日本でそのようにデザインされた製品を、インドで販売することに異を唱えるつもりはありません。しかし、インド向けには、さらにリサーチが必要です。

私自身はシンプルなものが好きですから、日本本来のデザインに惹かれます。たとえば、GKデザインによる醤油瓶のデザインには、先に挙げたインドのロタと同じような魅力を感じますね。単純な形ですが、アイコニックなのでひと目でそれとわかり、透明なガラス素材は中身やその分量が見えるという意味で誠実です。もちろん、機能的にも注ぎやすく、今では世界中の醤油瓶の手本となりました。これこそ、日本のデザイン哲学を凝縮した存在です。

それから、私は弁当も日本のデザインを象徴していると思います。伝統的なものと現代的なものが混在し、美しくもある上、人々に素晴らしい体験を与えてくれます。

私は、他の分野でも、それらと同じようにデザインされた製品をインド市場に投入して欲しいと思っています。

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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