話題の液晶ペンタブレット「Artist 22R Pro」はプロの制作現場で通用するのか?【XP-Pen「Artist 22R Pro」× CGクリエイター 朝倉涼】 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

話題の液晶ペンタブレット「Artist 22R Pro」はプロの制作現場で通用するのか?【XP-Pen「Artist 22R Pro」× CGクリエイター 朝倉涼】

2020.8.15 SAT

話題の液晶ペンタブレット「Artist 22R Pro」はプロの制作現場で通用するのか?【XP-Pen「Artist 22R Pro」× CGクリエイター 朝倉涼】
低価格でありながらコストパフォーマンスが良いと今話題のメーカーXP-Pen社から、ハイエンドモデルの21.5インチ液晶ペンタブレット「Artist 22R Pro」が登場。プロのクリエイターからアマチュア層まで購入を検討している方も多いはず。 そこで今回、「Artist 22R Pro」のリアルな実力を知るべく、第一線で活躍するプロのクリエイターが同機を試用。

製品を試すのは、フォトリアルなCGをベースにハイクオリティな作品を手掛けるCGクリエイター・朝倉涼[Seventhgraphics]さん。高性能なマシンスペックが必要なCG制作の現場で、果たしてXP-Pen「Artist 22R Pro」は通用するのか?気になる使用感を伺いました。
●取材:編集部、山口優 ●文:山口優 ●写真:谷本夏[studio track72]

レタッチなどの作業効率が倍近くアップ
──まずはXP-Pen社の液晶タブレット製品について、どのような印象をお持ちでしたか?
実はすごく気になっていました。最近フォトレタッチやテクスチャを細かく描きこむ仕事が増え、板タブやマウスでの作業に限界を感じ始めていたので。ただ、イラストレーターさんほどガッツリ使うわけではないので導入コストは抑えたい……。そこで、液タブを使用している知人に聞いたり、SNSやニュースサイトで情報を集めたりしていたところだったんです。XP-Pen社の製品はサイズのバリエーションが豊富で、高性能な割りに手頃な値段ということもあって最有力候補でした。
──実際に試してみていかがでしたか?
とにかく作業が楽ですよね。直接画面上に描きこんで行けるので。僕の場合は3DCGソフトでモデリングしたモチーフに傷や汚れなどのディテールを描き加えていく作業で使うことが多いのですが、従来より倍近くスピードアップしているのではないかと思います。僕が手掛けているCG制作の仕事には何の問題もない性能で、「これだけ使えるなら十数万円くらいでもほしい!」と思って価格を見たら7万9800円。つい二度見してしまいました(笑)。
<span style="color:gray; font-size:10pt">モデリングしたギターのボディに傷や塗装剥がれなどのディテールを「Artist 22R Pro」で描き込んでいく朝倉さん</span>

モデリングしたギターのボディに傷や塗装剥がれなどのディテールを「Artist 22R Pro」で描き込んでいく朝倉さん

CG制作は高いハードウェア性能が必須
──朝倉さんはCG制作をメインとされていますが、マシン環境等を教えてください。
CGはCGでも、おもに映像をメインでやっていて、今や映像クリエイターという感じです。プロダクト系のプロモーション映像やミュージックビデオなどを手掛けることが多いです。フォトリアリスティックな表現が中心ですが、なかには2Dチックなものや、VTuber映像やボーカロイドMVのように2Dと3Dを組み合わせたものも。

最近はVOCALOID動画やソーシャルゲーム、スマホゲームなどに携わることも増えてきました。もともと趣味でやっていた撮影の依頼を受けることもよくあるので、その流れでレタッチをやったりすることも結構ありますね。
──かなり高いハードウェア性能が必要になりそうですね。
市販パソコンでは必要な性能を得るのが難しいので、メインは自作に近いWindowsパソコンです。現在は、CPUにAMD Ryzen 7 2700X、グラフィックボードにNVIDIA GeForce GTX 1080を2枚、システム用のストレージとして1TBのSSD、データ保存用として2TBのHDDを2基という構成。現状32GBだけなので、最近はちょっとしんどいですね。今春に新しいマシンを導入しようと考えているところです。
──周辺機器もたくさんあって、要塞のようなオフィスです。
ディスプレイが2台、NASも十数TBの容量のものが2台あります。ソフトが求めるハードウェア要件が高く、プロジェクトによっては1TBを超えるデータを扱うこともあるので、CG・映像系のクリエイターは、皆さんこんな感じに要塞化していると思いますよ。
<span style="color:gray; font-size:10pt">朝倉さんの仕事場。ソフトのハードウェア要件が高く、必要に応じてデバイスを買い足したり買い替えたりしているとのこと</span>

朝倉さんの仕事場。ソフトのハードウェア要件が高く、必要に応じてデバイスを買い足したり買い替えたりしているとのこと

──iMacとMacBook Proもありますが、どのような用途に使用されているのでしょうか。
インターネットやSNSなどの日常的な用途です。CG系のソフトはMac用もあるのですが、レンダリングなどの処理にNVIDIAのグラフィックカードが求められたり、プラグインがWindows用しかなかったりするのでサブ機として使い、仕事ではWindowsをメインで使用しています。
──ペンタブレット(板タブ)もお持ちですね。
ええ。でも、パソコンの画面を見ながら手元を見ずにペンを動かすというのに慣れなくて、実はあまり使い込んでいません。慣れる前にiPad ProとApple Pencilが発売されて購入したので、むしろそっちを使うことが多いです。ただiPad ProだとWindowsと連携しづらくてデータの受け渡しなどに手間がかかってしまう。また画面サイズもふだん27インチの液晶ディスプレイを使っている身からすると少し小さい。そこで、直接Windowsマシンで利用できる液タブを検討しました。
仕事場に最適なサイズ感
──今回試して頂いた「Artist 22R Pro」は画面サイズが22インチですが、サイズ感はいかがでしたか。
家電量販店の店頭で見たときは正直「でかい!」と思いました。それで当初は15〜16インチくらいのサイズの液タブを検討していて。でも、実際に「Artist 22R Pro」を机に置くと思ったほど場所を取らなかったです。むしろちょうど良いなと。

メインで使っている27インチの液晶ディスプレイと比べて、画面に表示しているモチーフのスケール感があまり変わらないのも良かったです。そのギャップが大きいとテクスチャなどを描きこんでいても「あれ、スケール感ミスったかな?」と不安になる場合があるので。
<span style="color:gray; font-size:10pt">「Artist 22R Pro」を使用しているところ。隣のディスプレイは27インチ。画面のサイズ感が近いため作業しやすいとのこと</span>

「Artist 22R Pro」を使用しているところ。隣のディスプレイは27インチ。画面のサイズ感が近いため作業しやすいとのこと

──確かに、画面サイズの差が大きいと作業をしていても感覚が狂いそうですね。
今回は、CGソフトでモデリングしたギターのボディに傷や塗装の割れなどのテクスチャを描きこんでいく作業や、アーティストの写真のレタッチ、アバター作成ツール「VRoid Studio」の3Dモデルに貼り込むテクスチャを描くのにも使用してみましたが、すごく直感的でストレスなく進めることができました。

液タブによっては細かい作業をする際にペン先と画面との視差が気になることもあるのですが、「Artist 22R Pro」はまったく問題なかったですね。細かいストロークを描くときなどに、ほんの少しだけペン先への追従が遅れるような気がすることもたまにあったのですが、それはかなりシビアな目で見た場合。実用上は全然問題ありませんでした。
<span style="color:gray; font-size:10pt">アーティストの写真をレタッチしているところ。肌のキメを整えるような場合も画面にペンでダイレクトに描き込めるため作業が楽だという</span>

アーティストの写真をレタッチしているところ。肌のキメを整えるような場合も画面にペンでダイレクトに描き込めるため作業が楽だという

<span style="color:gray; font-size:10pt">pixivのアバター作成ツール「VRoid Studio」の3Dモデルに貼り込むテクスチャも「Artist 22R Pro」だと効率よく制作できたそうだ</span>

pixivのアバター作成ツール「VRoid Studio」の3Dモデルに貼り込むテクスチャも「Artist 22R Pro」だと効率よく制作できたそうだ

「Artist 22R Pro」が表現の幅を広げる
──「Artist 22R Pro」だからこそ、できた表現はありますか?
デジタルハリウッドさんが先ほどの「VRoid Studio」のオンライン講座を開設するということで告知用素材の制作を依頼いただいたのですが、その制作に「Artist 22R Pro」を使用しました。僕が撮影した渋谷の写真と、同じ構図で作ったCGの街並み、「VRoid Studio」で作成したバーチャルなキャラクターを合成しています。現実の建物のところどころにCGで作った建物が見え隠れしているのですが、これは「Artist 22R Pro」がなかったら「やってみよう!」とは思わなかった表現ですね。
<span style="color:gray; font-size:10pt">デジタルハリウッドの「VRoid Studio講座」のメインビジュアルを制作しているところ</span>

デジタルハリウッドの「VRoid Studio講座」のメインビジュアルを制作しているところ

──マウスや板タブでは難しい作業ということでしょうか。
出来ないわけではないですが、とんでもなく面倒ですし時間も掛かります。今回の場合、建物の小さな窓ひとつひとつにマスクを作成して切り抜いたりもしていますから……。作る前に心が折れそうになります(笑)。「Artist 22R Pro」だと細かい部分までペンでダイレクトに描けるのですごく楽ですし、トライ&エラーもやりやすかったですね。そういう意味でも、表現の幅を広げてくれるツールだと思います。
<span style="color:gray; font-size:10pt">「Artist 22R Pro」だと、建物の窓ひとつひとつにマスクを作成して切り抜くような作業も効率よく行える</span>

「Artist 22R Pro」だと、建物の窓ひとつひとつにマスクを作成して切り抜くような作業も効率よく行える

描き味や画質もプロ機材に相応しい
──描き味はいかがでしたか?
人によっては紙のような描き心地にこだわってペーパーライクフィルムなどを液タブに貼る方もいると聞きますが、「Artist 22R Pro」に関しては特に気になりませんでした。表面がサラサラとしていて、ペンでガラスをカチカチ叩いているような感じがないので、描いていても違和感はなかったです。
──解像度や色の再現性など、画質面の感想もお聞かせください。

「Artist 22R Pro」はフルHDですが、プロが使うCG系のソフトってパネルやボタンの類がすごく多いので、解像度はWQHD(2560x1440ピクセル)くらいあれば作業エリアが増えてより使いやすくなるのかなとは思います。といっても、あくまで「あったらいいな」程度。このフルHD解像度でも作業自体は全然問題ありませんでした。

色再現性も使っていて気になったことはないですね。先ほどの「VRoid Studio講座」の告知用素材についていえば、ディスプレイによってはキャラクターの紫色の部分の階調が飛んでしまうことがあるのですが、「Artist 22R Pro」はきちんと再現されていました。この価格でこれだけ高い品位の液晶を搭載した液タブが購入できるなんて、本当にいい時代になったなと思います。

<span style="color:gray; font-size:10pt">「VRoid Studio講座」の告知用素材の編集画面。ディスプレイによっては階調が飛んでしまうような部分も、しっかりと再現されている</span>

「VRoid Studio講座」の告知用素材の編集画面。ディスプレイによっては階調が飛んでしまうような部分も、しっかりと再現されている

──ほかに印象に残ったことがあれば教えてください。
使い勝手に関してですが、本体左右に全部で2個のホイールと20個のエクスプレスキーが搭載されていて、それぞれによく使う機能を割り当てられるのは便利。とくにソフトごとに割り当てる機能が変えられるのは実用性が高いと思いますね。ドライバーの設定画面が若干分かりづらいので、そこは今後の改良に期待したいところ。

あとは、付属品が豪華なのにも驚きました。画面の角度調節ができるスタンドのほか、スタイラスペンが2本と、手袋(2本指グローブ)まで同梱されているんです。予備で持っておきたい分も含め、必要なものが全部揃う。その意味では、これから液タブを始めてみようかなと考えている人には強くお勧めできます。
<span style="color:gray; font-size:10pt">ホイールやエクスプレスキーの使い勝手がよいのもポイントとのこと</span>

ホイールやエクスプレスキーの使い勝手がよいのもポイントとのこと

液タブを検討中のすべての人にオススメ
──改めて「Artist 22R Pro」はどんな人に向いていると思いますか?
イラストレーターを目指しているような学生さんが、これから液タブを本気で使ってみようというときに買う1台としては最適ではないでしょうか。また、フィギュア制作に携わるデジタルスカルプターや原型師、モデラーの方にもお勧めできますね。

僕のようなCG・映像クリエイターやグラフィックデザイナーなども仕事で液タブが必要になることはあるので、今必要を感じなくても、その時のために買っておいて損はないですよ。日頃の作業にうまく取り入れて活用すると効率がぐんと上がりますから。
──例えば、どんな活用方法がありますか?
映像系のクリエイターだと、After EffectsやPremiere Proなどを使うときに、映像のプレビューをメインのディスプレイに表示し、タイムラインを液タブ側に置いて映像のカットの切り分けなどを手元で操作している人もいます。

そういう直感的な操作が必要なパネルなどを「Artist 22R Pro」に集約させるのもひとつの方法ですよね。僕ももう手放せない体になってしまったので、今回のレビューが終わったあとに導入して仕事に使っていくつもり。購入を検討している人には、自信を持ってお勧めします!
<span style="color:gray; font-size:10pt">今回「Artist 22R Pro」を試用したCGクリエイターの朝倉涼さん。試用期間後も「Artist 22R Pro」を実際に利用するとのこと</span>

今回「Artist 22R Pro」を試用したCGクリエイターの朝倉涼さん。試用期間後も「Artist 22R Pro」を実際に利用するとのこと


「Artist 22R Pro」
21.5インチ、フルHDディスプレイ搭載の液晶ペンタブレット。最大解像度1,920×1,080ピクセル、88%NTSC(Adobe®RGB≧90%、sRGB≧120%)の色精度、USB Type-CからUSB Type-Cへの接続サポートなど、直接描画、デザイン、3Dモデリングなど、ハイスペックな機能を備えたクリエイティブ作業向けの製品。

【発売元】XP-Pen
【製品価格】78,500円(税込)
【製品詳細】https://www.xp-pen.jp/product/542.html

朝倉涼[Seventhgraphics]
フォトリアルCGを得意とするフリーランスのCG・映像クリエイター。

【URL】https://seventhgraphics.info/projects

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