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今年度は、絵や文字を大胆に構成した シンプルでユーモラスな広告作品が多数受賞!

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「Metro Ad Creative Award 2019」ギャラリートレインをレポート!
今年度は、絵や文字を大胆に構成したシンプルでユーモラスな広告作品が多数受賞!

株式会社メトロアドエージェンシーによる公募型広告賞「Metro Ad Creative Award 2019」。2020年6月16日(火)から銀座線1編成を使って各受賞作を展示するギャラリートレインのお披露目の様子を編集部がリポート。ここでは協賛企業から与えられた課題に挑戦したユーモラスな作品を紹介します。

2020年6月23日
取材撮影:編集部 文:阿部愛美
3年目を迎えた広告賞「Metro Ad Creative Award 2019」
東京メトロの交通メデイアを用いて、これからの交通広告やOOH(屋外広告)の新しい価値を生み出すアイディアを広く募集する公募型広告賞「Metro Ad Creative Award 2019」。「学生のみなさんや若いデザイナーの方々からの応募が多いところが本アワードの特徴です」と話すのは、主催であるメトロ アド エージェンシーの富田瑛子さんだ。

賞は「デザイン部門」と「プランニング部門」に分かれており、中吊り広告やMCV(駅サイネージ)、新宿駅の巨大広告スペースでの活用を想定。それぞれ協賛スポンサー(本年は各4社の計8社)より出題された課題に対してアイディアを募るものとなっている。

編集部が取材したお披露目は、16日(火)から運行する銀座線のギャラリートレインで行われ、「デザイン部門」の受賞作品が中吊り広告として車内を彩っていた。
グランプリ受賞は、ちょっと“おかし”なポスター風
グランプリを受賞したのは、まるで小学生の標語コンクールを想わせる大胆不敵な本作。乗客は「一体、何の広告だろう?」と目を奪われ、思わず考えこむだろう。これは、協賛企業の一つであるカルビーから与えられた「20〜30代男女に『堅あげポテト』の価値を伝える」という課題に応えた『この食感を味わえないなんて辛すぎる。』。商品が持つ硬い食感の魅力を、逆転の発想でアイディアに落とし込んだものだ。
「デザイン部門」グランプリ作品『この食感を味わえないなんて辛すぎる。』

「デザイン部門」グランプリ作品『この食感を味わえないなんて辛すぎる。』

グランプリを受賞した安田さん(左)と大友さん(右)

グランプリを受賞した安田さん(左)と大友さん(右)

受賞したのは、共に同じ会社に勤めるデザイナーの安田広美さん(35才)と、プランナーの大友景祐さん(31才)。安田さんが本作のディレクションを担当し、共同制作者として大友さんに声をかけた。

「広告媒体ですから、まず乗客に“見てもらえること”を意識しました。一度練り上げたアイディアを捨てて一から考え直したりしながら、試行錯誤してたどり着いたのがこの最終案です。小学校に貼ってある『歯を大切に』のポスターからイメージしました。顔の絵は、当時7才の長女と5才の長男にそれぞれ描いてもらったもの。『顔は笑っていて、歯がしっかり見えている』ということだけお願いして、一緒に楽しみながら描いていきました」(安田)

「安田の子どもたちの絵を見た時に『これはいける!』と感じました。ディレクション次第で子どもの絵が広告になる。そこが、広告という媒体の自由さであり大きな魅力だと感じています。とはいえ、受賞の連絡をもらった時は安田も私も信じられなくて……(笑)。とても驚いたことを思い出します」(大友)

電車広告の価値を模索した受賞作品とデザイナーたちの想い
身近な商品で認知度が高い『堅あげポテト』(カルビー)への応募が非常に多かった中、「徳島県」の課題に挑戦した作品の多さとアイディアの面白さが審査員を賑わせていたという。

『検索せずにいられない広告』では、潔く文字だけで勝負。「髭作り」という不思議な言葉などで徳島県をアピールした本作は、準グランプリを受賞。広告制作会社でADを務める松沢洋祐さん(32才)の作品だ。

「アワードのオリエンテーション時に、『広告を見た人が検索したくなるような』という説明があり、そのキーワードを自分なりに捉えて作品にしました。私は最近『中吊り広告は元気がない』と感じていたこともあって、人々の衝動をていねいにデザインしてあげないと行動に結びつかないと考えてこのアイディアに落とし込みました。独特の駅名が放つ違和感が車内で引き立つようにこのうえなくシンプルに仕上げた作品です」(松沢)
徳島県の奇妙な駅名を使った『検索せずにいられない広告』

徳島県の奇妙な駅名を使った『検索せずにいられない広告』

また、日本ケンタッキー・フライド・チキンからの課題に堂々としたデザインで応えた福田菜々さん(20才)は、「学生部門賞」を受賞した。

「ケンタッキーフライドチキンは私にとって身近な存在だったので、この課題を選びました。卒業を間近に控えた就職活動中で気持ちが不安定だった時期でしたが、受賞の連絡をいただいて救われたような心持ちがしました。アイディアが煮詰まった時にはチキンを食べに行ったりして、そのうちに目指す方向性が決められたと感じています」(福田)
「ケンタッキーバーレル」とシンプルな求人コピーで構成された『ケンタッキーのような人』

「ケンタッキーバーレル」とシンプルな求人コピーで構成された『ケンタッキーのような人』

そして、日本バスケットボールの発展を目的とした企業「B.MARKETING」からの課題は、“令和時代にバスケを国民的スポーツとすること”。この難解な課題で「協賛スポンサー賞」を見事受賞したのは、ウェブサイトのデザインやコーディングの仕事に携わる栗原拓人(29才)さんだ。

「応募のきっかけは、自分の作品が中吊り広告で掲載されるかもしれないという期待感と過去の受賞作品の自由度の高さからです。私はバスケ観戦が大好きで、男子プロバスケットボール『Bリーグ』を発足時から観ていました。ですから、私が今まで応募したコンペの中でも特に時間をかけたものでしたし、愛着のある作品に仕上がりました。本作は、Youtubeと連動したアイディア(※)で、これまで私が培ってきた印刷とウェブの知見が活きたものになったと感じています」(栗原)

参考動画「Bリーグの劇的」 プレイリストはこちら
試合終了間際の緊張感を、スコアを活かしたデザインに落とし込んだ『Bリーグの劇的』

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実際にめくることができるスコアは、「キャンシージェット」というシート状の素材に印刷することで手めくり得点板のイメージに近づけたという

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協賛企業からの課題を創意工夫で応え、オリジナリティあふれるデザインを導き出した受賞者のみなさん。2017年からスタートし3回目となった本アワードをメトロ アド エージェンシーの富田さんは、本年度の受賞作品をこう評した。

「昨年までの応募作品は、中吊り広告の制限の中で工夫を凝らしたアイディアが多かったのですが、今年の『デザイン部門』では横長のレイアウトを大胆に使った作品が多く見受けられました。文字だけや絵だけで強いインパクトを与える工夫が魅力につながっていると思います」(富田)
メトロアド賞を受賞した『みんな・サンダース』

メトロアド賞を受賞した『みんな・サンダース』

電車に揺られる人々を阿波踊りと重ねた『みんな徳島に踊らされている』

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鳴門の渦潮の写真と潔いキャッチコピーが印象的な『ウズウズするぜ』

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本アワードの「プランニング部門」は窓上ポスターで紹介されている

本アワードの「プランニング部門」は窓上ポスターで紹介されている

閉ざされた空間でおのずと目に入り、通勤や通学で同じ広告を何度も目にすることから、高い販促効果を持つ電車広告。1日で約755万人の利用者がいる東京メトロともあれば、デザインする人々にとっても魅力的な媒体だ。

なお、本企画のギャラリートレインの運行は、銀座線の銀座駅〜浅草駅間を、6月16日(火)〜30日(火)まで10〜20本程度運行。もしあなたが乗り合わせたなら、ぜひデザイナーたちの想いに触れてみてほしい。
「Metro Ad Creative Award 2019」受賞結果発表はこちら
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