利用者にも開発者にもオープンなモバイル環境「Android」 - WEBデザイン×ITフォーカスノート 第7回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

利用者にも開発者にもオープンなモバイル環境「Android」 - WEBデザイン×ITフォーカスノート 第7回

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WEBデザイン×ITフォーカスノート

第7回 利用者にも開発者にもオープンなモバイル環境「Android」

2008年10月にオープンソースとして公開された携帯端末専用OS「Android」。オープンソース化されて以来、Motorola社やNokia社をはじめ次々と企業がAndroid 実装機を開発すると発表している。スマートフォンだけでなく、さまざまなモバイル機器での採用されはじめているAndroidの魅力と可能性に迫る。
(文=長谷川恭久)

オープンなモバイル機器の基盤となるOS

「Android」は、2005年にGoogle社が買収した同名の企業が開発した携帯端末専用のOSだ。Linuxを基盤に開発されているAndroidは、Google社が公開しているJavaライブラリを利用することでソフトウエアの開発ができる。Androidは、バージョン1.5の時点でビデオの録画・観覧、Webサービスとの連携、Bluetooth機器との自動接続、コピー&ペーストといったスマートフォンで期待されている機能が出そろっている。2007年11月のAndroidの発表と同時に発足した「Open Handset Alliance」は、モバイル機器におけるオープンに利用できる標準技術の開発に力を入れている。現在ソフトウエア会社やモバイルキャリアをはじめ34社が参加しており、日本からもSoftBank、Sony Ericsson、東芝が名を連ねている。

iPhoneは、OSの機能を利用した開発が可能なようにSDKも公開されているものの、OSやデフォルトで実装されているソフトウエアに拡張機能を加えることはできない。それに対し、Androidは買収当初はGoogleが開発に携わったものの、現在はすべてのコードをオープンソースとして公開しており、ライセンスもApache Licenseと呼ばれるフリーソフトウエアライセンスに基づいている。つまり、公開されたコードは、Googleに著作権が帰属されるものの、機器に特化した独自機能を拡張させたカスタムAndroidの開発が許可される。

さまざまな状況に適応したモバイル向けの開発

閉鎖的なiPhoneに比べ、Androidはオープンな場で開発できるものと印象づけた出来事といえば、Flash Player 10のサポートである。Adobe systems社はAndroidをはじめ、Palm Pre、Nokia Symbian、Windows Mobileでのサポートを発表しており、2009年10月には実装されるといわれている。iPhoneは発売当初から開発者からFlash実装の声が出ていたが、Flashによりパフォーマンスが落ちる可能性があるという理由で現在も実装されていない。しかし、先日Adobe systems社が、自社の開発者向けブログでHTC HeroというAndroidスマートフォンで、Flashサイトのデモビデオを掲載した。HTC Heroのスペックは2代目のiPhone touchと同等といわれており、最近発売されたiPhone 3GSより劣るが、スムーズなアニメーションとレスポンススピードを実現している。これにより、Android利用者に向けたFlashサイトの開発だけでなく、Flashベースのソフトウエア開発の可能性も考えられる。

2009年中にAndroidを実装したスマートフォンは18以上発売される予定となっている。もともとスマートフォン向けに開発されたAndroidだが、機能と拡張性の高さからそれ以外での採用も期待されている。たとえばNokia社は2010年にはAndroidを実装したネットブックの販売を約束しており、ソニー(株)はウォークマンや簡易型カーナビゲーションシステムにAndroidの採用を発表している。

拡張性の高さはAndroidそのものだけでなく、アプリケーションにも同様のことがいえる。2008年8月に「Android Market」(www.android.com/market/)というアプリケーションストアをアメリカ、イギリスをはじめ10カ国のAndroidユーザーに向けて公開した。2009年3月現在2,300のアプリケーションがAndroid Marketを通じてダウンロードできる。電話にCaller IDを実装したり、カスタムのスクリーンロック機能といったiPhoneでは難しいOSやハードウエアとの連携を可能にしたアプリが多数出てきている。

アプリの存在が今後の成長の鍵

Androidは今後開発者をどれだけ仲間につけ、利用者がダウンロードしやすい環境を整えるかが今後のシェア増加の鍵になる。シカゴのコンサルティング会社Gravity Tankの調査によると、iPhoneとAndroidユーザーの48%は週に一度は必ずストアにアクセスし、アプリを探しているといわれる。また、49%が毎日30分以上の時間をアプリの利用に割くという。スマートフォン利用者は電話やメールといったもとからある機能を利用するだけでなく、アプリを使ってそれぞれの時間を過ごしているのだ。つまり、スマートフォンの存在は従来の携帯電話に比べ、より利用者の趣向や行動に近づけるようカスタマイズができ、その現れがストアの利用率の高さに反映しているのだ。Apple社は2009年4月にApple Storeが10億ダウンロードを達成したと発表したが、その理由としてアプリのニーズの高さだけでなく、iTunesとの連携といったシームレスな利用者体験にある。AndroidはOSそのものは洗練されはじめているものの、iTunesと同様もしくはそれ以上のPCとの連携が今後の利用のされ方に大きく左右されるだろう。

 

Webサイトの構築においてはAndroidもiPhoneと同様WebKitを基にしたブラウザを実装しているので、CSS3やHTML5といった最新のWeb技術を駆使したサイトが制作可能だ。ただし、アプリと同様、モバイルで観覧されることを意識して、利用者の趣向や行動を合わせたデザインを提供することが重要になる。


公式サイトでは日本語でも豊富な情報を入手することができる
code.google.com/intl/ja/android/


Android 向けのアプリケーションを公式サイトからダウンロード可能
www.android.com/market/


アドビの公式ブログでHTC Heroを利用したデモが紹介されている
www.adobe.com/devnet/devices/articles/htchero.html

Profile 長谷川恭久

デザインやコンサルティングを通じてWeb関連の仕事に携わる活動家。ブログやポッドキャスト、雑誌などを通じて情報配信中。
URL: www.yasuhisa.com/

本記事は『web creators』2009年9月号(vol.93)からの転載です。

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