このアートディレクターに聞く
資生堂の表現に、新たな風を送り込む
第37回 丸橋桂
旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと創作のスタンスに迫るコーナー。第36回目は資生堂のアートディレクター、丸橋桂 さん。第1話では、資生堂のメンズブランドとして圧倒的なシェアを誇る「UNO(ウーノ)」の新商品「FOG BAR」の交通広告にフォーカスする。
第1話 UNO「FOG BAR」
メジャーブランドだからこそ成り立つ表現
商品の特徴「FOG=霧」から発想して「シュッ」という吹き出しを設けたポスター(左)。「UNO=整髪剤」という確立されたブランドだからこそ成り立つ表現。また、連貼りが前提となっているため、すべてを目にすると訴求内容が淀みなく伝わる。右は新たな整髪料のムーブメントを生み出すべく「さよならWAX」というコピーを添えたポスター
ナチュラルなヘアスタイルで登場するタレント。商品だけではなく次なるヘアスタイルの提案の意味も込められたポスターだ
4人がロンドンの名所へ訪れたり、タクシーに乗ったり、テニスをしたりしながら「シュッ」としかセリフを発しないコマーシャルになっています。ヘアも商品の特性を反映してナチュラルなスタイリング
セリフは「シュッ」だけ
UNOのアートディレクションには4年前から携わっているのですが、現在売り出し中の商品が「FOG BAR」です。これは、ヘアワックスを主軸としてきたUNOが、新たに提案する霧状の整髪剤でベタつかず「固めず、まとまる」ことが特徴の商品です。そこには、「ネジネジ、キメキメ」を得意なスタイルとするワックスでは実現しにくい、ナチュラルなヘアスタイルを次の流行として提案していく意味も込められています。
今回の場合、資生堂宣伝部のスタッフの他にも、シンガタのクリエイティブディレクター佐々木宏さんや、コピーライターの谷山雅計さん、電通のプランナーの澤本嘉光さんをはじめとする実力派揃いのチームで制作に臨んだのですが、商品名にもある「FOG」(霧)からアイデアが広がっていき、CMでは妻夫木聡、小栗旬、瑛太、三浦春馬の4人は「シュッ!」しか言葉を発しません。同じく霧から発想して舞台は霧の街ロンドン。4人がロンドンの名所へ訪れたり、タクシーに乗ったり、テニスをしたりと複数のコマーシャルになっています。彼らのヘアも商品に込められた考えを反映してナチュラルなスタイリングとなっています。
僕が担当するグラフィック広告でも、これら設定にしたがい、商品が「シュッ、シュッ!」と言葉を発するような吹き出しを設けたり、「さよならWAX」というコピーを添えることで、商品の特徴を訴求しています。単体では何のことかわからない「シュッ」で成立させられるのは、UNOという広く認知されたブランドならではでしょう。また、商品自体にも新規性があるので、商品をタレント以上に大きく扱った広告も制作しました。これらはポスター単発ではなく、複数点を連貼りして訴求することを前提としています。そのほうが、見る側も楽しいですしね。UNOの場合は、くどくど説明するのではなく、端的にわかりやすく伝えることが僕の役回りでした。
今回の場合、資生堂宣伝部のスタッフの他にも、シンガタのクリエイティブディレクター佐々木宏さんや、コピーライターの谷山雅計さん、電通のプランナーの澤本嘉光さんをはじめとする実力派揃いのチームで制作に臨んだのですが、商品名にもある「FOG」(霧)からアイデアが広がっていき、CMでは妻夫木聡、小栗旬、瑛太、三浦春馬の4人は「シュッ!」しか言葉を発しません。同じく霧から発想して舞台は霧の街ロンドン。4人がロンドンの名所へ訪れたり、タクシーに乗ったり、テニスをしたりと複数のコマーシャルになっています。彼らのヘアも商品に込められた考えを反映してナチュラルなスタイリングとなっています。
僕が担当するグラフィック広告でも、これら設定にしたがい、商品が「シュッ、シュッ!」と言葉を発するような吹き出しを設けたり、「さよならWAX」というコピーを添えることで、商品の特徴を訴求しています。単体では何のことかわからない「シュッ」で成立させられるのは、UNOという広く認知されたブランドならではでしょう。また、商品自体にも新規性があるので、商品をタレント以上に大きく扱った広告も制作しました。これらはポスター単発ではなく、複数点を連貼りして訴求することを前提としています。そのほうが、見る側も楽しいですしね。UNOの場合は、くどくど説明するのではなく、端的にわかりやすく伝えることが僕の役回りでした。
こうした大規模なキャンペーンに携われるのは、メーカーの宣伝部に在籍しているからこそだと思っています。当然やりがいもあるのですが緊張感もあります。いくら格好いい広告ビジュアルを作ったとしても、商品が売れないことには次にはつながりませんし、売れないからといってコロコロと世界感が変化するようではブランドは育ちません。当然のことですが、広告は機能することが大前提。商品が売れることは大事なことなのです。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)
次週、第2話は「ザ・ギンザ・ディスプレイ」についてお送りします。こうご期待。
●丸橋桂(まるばしかつら) |